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初恋の彩り  作者: みこえ
~出逢い~
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【彩りの春】

 今日、貴之がこの家を出る。心構えはしていたが、やはり淋しく思ってしまうのは仕方ない。短い間だったけれど、春里はこの家の一員だった。その中でも貴之とは長く一緒にいたのだ。困ったときに手を差し伸べてくれたのは貴之だった。楽しいと思わせてくれたのも貴之。悲しい時抱きしめてくれたのも、頑張らなければならない時背中を押してくれたのもそうだった。


「春里、ちょっと話があるんだ。散歩しに行かないか?」

 引越しの準備の大半はできている。残りの荷物をもって俊介の運転する車で引越し先まで行くだけになっていた。


「うん」

 もう桜が咲き、嫌でも別れを感じさせる。長い間会えないわけではない。それは分かっていても、不安だ。新しい生活をし始めれば、貴之もそちらが楽しくなり、春里の事など気にしなくなるかもしれない。そうしたら、帰ってこないかもしれない。親孝行の貴之だから、節目節目には帰ってくるとは思うけれど。でも、向こうで恋人ができたら?そんな事を考えただけで春里の胸は締め付けられる。なぜだか分からないが、貴之が近くにいない、それだけで不安で仕方なかった。


 近所をゆっくりと歩き出す。自然に貴之が手を握るから、春里も握り返した。最近は手をつなぐ事が当然になっていた。警戒していた春里の心を解いてくれたのはまさしく貴之で、そうなったら最後、こんな事さえも許してしまう。


「公園まで行こう」

 家から十分程歩くとある少し大きめの公園だ。木々に囲まれ、マラソンやウォーキングをしている人たちも多い。もちろん、遊具もあるので、まだ春休みである今日は子供たちも多いかもしれない。今日はとても穏やかな陽射しに包まれているから、散歩をしている人たちも多いかもしれない。


 公園は春里が想像していたように色々な人がそれぞれの目的でやってきていた。春里は二人を追い抜いていったランナーの後姿を見つめた。その人は春里がうらやむくらい軽快に走る。運動神経がない春里にとって、走ろうと思う事自体が羨ましい。絶対に避けたい事の一つだから。

 


 一つの東屋は誰も座っておらず、そこに二人で座る。春里は隣に座った貴之をそっと覗き見た。どこを見つめているのか分からないが、強い眼差しだった。どこか緊張しているようにも見える。貴之はつないでいた手をぎゅっと握った。


次回で出逢い編、最終回になります。今度は貴之視点。


引き続きお付き合いください。

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