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初恋の彩り  作者: みこえ
~出逢い~
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【春里の些細な我が儘】

 春香のお骨をどこに埋葬するか、で悩んだ。本当は祖父母が住む家の近くに篠原の墓があるのだから、そこが一番だろう。祖父母も歓ぶ。それは充分分かっていた。だが、春里としてはもっと春香を近くに埋葬したかった。いつでも会いたい時に会える場所にお墓を建てたかった。春里があの家に戻るのであれば別だが、春香がいなくなった今、あの田舎に戻る気にはなれなかった。


 ただ、それだけのお金は当然ながら無かった。そこまで俊介と貴美には甘えられない。いくら家族として接してきてくれていても、そんなことまでは甘えてはならない。特に貴美には甘え過ぎていた。難しい関係である春里を何の問題もなく、笑顔であっさりと受け入れてくれた貴美。それだけで充分だった。


 もちろん仏壇があればそこで春香と話はできるだろう。もっと言えば、写真一枚だけでも構わないのだと思う。だけれどそれは気持ちの問題だ。ずっと近くで見守ってくれていると思っていながら、母のお骨が眠っているのはお墓なのだから、母がいるのはお墓なのだとも思ってしまう。我が儘なのは知っているが、いつでもお墓はきれいにしてあげたいし、気軽に訪れたい。


 それを知ってか知らずか、ずっと和室に置いてあるお骨を俊介は見つめながら春里に言った。

「納骨はいつでも構わないよ。だから焦る必要はない」

 先延ばしをしても答えが出ないような気がして、春里は俯いた。俊介の気持ちは嬉しい。何も言わなくても春里の気持ちをくんでくれる。だけど、やはりどんなに時間をかけても答えは出ない。春里がまだ高校生だから余計に。


「何を悩んでいる?言い辛い事か?」

 俊介は俯いたまま顔を上げない春里を見つめ、クスリと笑った。


「私に話しづらい事なら、貴之に言えばいい。貴之には気軽に話せるだろう?」

 俊介が遠慮がちに春里の頭に手を乗せた。その手の重みが懐かしく感じて、春里は顔を上げた。眼の前には優しい笑みを浮かべた俊介の顔があった。それは不思議なことに貴之と同じ笑みだった。血がつながっていないのに、同じように微笑む。春里はその笑みで心が落ち着いてきた。


「どうすることが母にとっていいことなのか考えることだと思うんです。でも、どうしてもわたしの我が儘な感情が前に出ます」

「我が儘とは?」

「いつでも母に会いたいという我が儘です」

 春里の言葉に俊介は考えている様子だった。春里はそれを見た後、ゆっくりと視線を春香の写真に向ける。春里を見つめる春香。この写真を見つめるだけで元気が出る。今だってこの写真に向かって話しかけている。だから、この写真があればいいのだろう。いいのだろうけれど――。もっと気持ちが落ち着いたら、この感情も少しずつ変化をするのだろうか?


「お墓の問題かな?」

 あの言葉でよく答えを導き出したと春里は感心しながら、視線を俊介に戻した。

 

 春香がよく春里を見ながら言っていた。『あなたはお父さんによく似ているわ』と。春里自信は春香に似ていると思っていた。だが、確かに似ているのかもしれない。所々のパーツが。例えば唇や目元。


「貴美にも相談してみよう。いい方法があるかもしれない。まだ、焦る必要はないよ。もう少し……春香さんにもここにいてもらおう」

 春里はじっと俊介を見つめた。感謝をしている。いつも春里のために最善な方法を考えてくれる。世話になっている春里の我が儘を聞いてくれようとする。でも、どこまで世話になっていいのだろうか?俊介の子供であることは事実ではあるが、今は甘えられる立場にはいない。俊介の家族が別にある。春里はその家族も好きだ。だからこそ余計に思う。どこまで甘えていいのだろうか?どこまで家族として接していけばいいのだろうか?


春香のお骨の問題は書いていてふと気になったことでした。後ほどまたこれについて触れることになるのですが、どうするのが一番いいのか悩みました。これを避けて書くのはちょっと難しい感じもして。


次回は2話更新。貴之の進路。そして、決意。

次回は来年更新ですね。


今年もあともう少し。忙しい方もいっぱいいるかもしれませんね。来年も懲りずにお付き合いくださいませ。いいお年を……

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