名月
『いにしえの地に名月とともに佇つ』
中秋の名月というのは、もともと日本に旧暦が伝わるより以前からあったそうだ。まあ、そんな言葉のできる、もっと遥か昔から、月は地上を照らしていたわけで、人間の一生なんか、月と比べたら塵以下なんだろう。人間の歴史だって、もう、ちょろっとしたものに違いない。
いにしえの地。
十二単を着たお姫様が、叶わぬ恋に涙した場所かもしれないし、人々が神だとか仏様だとかに祈りを捧げた場所かもしれないし、累々と骸の転がる荒涼とした荒れ地かもしれない。
私とその歴史は、この世で重なることはないけれども、かつての人々の思いの残る場所に、昔を見たかもしれない月とともに佇むことはできる。
それすらも、一瞬で消え去る、幻のようなものなのだろうけれども、私にとっては確かな、現実なのである。
目に映らないけれども確かに存在するもの。
それを描き出したくて、私は筆を執る。
<了>
これにて私の拙い俳句エッセイもどきはお終いです。
最後までお付き合いくださった読者の皆様、ありがとうございました。
俳句、面白いですね。いつかまたチャレンジしてみたいなと思いました。




