封印された記憶
アントリュウスは奏に状況を説明した。
「奏!私と一緒に天界の果てに来てほしいの、イダスとアシュレイも黄金の翼の国で合流するからね」
「いきなりアントリュウスの家にお邪魔するのって堅苦しそうね!」
「大丈夫よ!気にしないで、私のお友達を紹介したいだけだから」
「わかったわ!天界には行ってみたかったから、いいきっかけね!」
「よかった!直ぐに行こ」
「でも手ぶらはまずいわよね!アントリュウスのお父さん偉い神様みたいだから、何か菓子折でも持って行ったほうがいいかな?」
「菓子折?」
「手ぶらよりはいいでしょ!セーシェル堂の銘菓ニャンコサブレだったら王族御用達だし気に入ってもらえると思うけど」
「何もいらないわよ!来てくれるだけでお父さんは喜ぶわよ」
ニンキは無言のまま一瞬、放心状態になった。
原初の神に菓子折・・・
やはりギャンブル性が高すぎる・・・
しばらくは宇宙食を食べることになりそう
それよりアントリュウスは本当にパネース様が喜ぶと思ってるの!?・・・
赤いドラゴンに乗り黄金の翼の国へ向かう準備をした。
キツネコとタヌキンナも一緒に戻る事にした。
黄金の翼の国に着いた。
奏は、あまりにも巨大な神のオーラを感じた。
天界の神のオーラに感動した。
「凄い!!これが天界のオーラ!?気持ちいい」
天界のオーラを浴び神の力が強くなり前世の記憶の封印が解けた。
奏の記憶が蘇った。
私は・・・
「奏どうしたの?」
「えっ!何でもないわ、いい所ね天界って」
奏は、みんなに神であることを言うのをためらった。
自分が幼いときのイダスと両親との事が、頭に浮かんだ。
「奏!イダスをお願いね」
母が奏の頭を撫でた。
「大丈夫よ!お母さん、イダスは私が守るから心配しないで」
「奏、頼んだぞ!」
「お父さんも心配しないで何があっても私がイダスを守るから安心して」
父が奏に抱きついた
「違うよ、頼むというのは、戦ってくれという意味じゃないんだ!戦わないでくれ、お前も何かあったらイダスを連れて逃げてくれという意味だ!死なないでくれ」
お父さん・・・
「僕が大きくなったら勇者になるんだ!お姉ちゃんは僕が守るんだ」
イダス・・・
父と母が、戦争で死んだ。
奏は、騎士になる為、毎日夜遅くまで剣術の練習をしていた。
夜遅く帰ると食卓に手の込んだ食事が用意されていた。
どれも奏の好きな食べ物だった。
食卓には、手紙が置いてあった。
お疲れ様
食べたい物があったら書いておいて
未来の勇者より
ダイニングルームには、料理の本がたくさん置いてあった。
イダスは、奏が剣術の練習で疲れて帰ってくるのを毎日見ていた。
奏に栄養がある美味しい物を食べてもらおうと思いイダスは料理を始めた。
勇気を手に入れる為に神の記憶を封印して人間になっていた事をイダスが知ったら今までどおり姉と思ってくれるだろうか?
もし、イダスの耳に入れば
今の付き合いが、変わってしまうのではないかと恐れた。
今の関係を壊したくなかった。
奏は、神の力を押さえた。
イダスとアシュレイと合流して一緒にパネース神殿に行く予定だったがまだ帰って来なかった。
アントリュウスは心配になりキュレアの所へ向った。
「キュレア!イダス達、遅いわ!何かあったのかしら?」
「あの辺りから戦闘になった気配はない闇の世界に迷わないように慎重になってるのだろう!俺が見て来る」
「キュレア、人間の勇気を持ってるの?」
「完璧な人間の勇気は、持ってないが近いものならある、ゆっくりであれば行けると思う、君は、先にパネース様の所へ行ったほうがいい、イダスとアシュレイが戻って来たら俺か連れて行くよ」
「ありがとう!お願いするわ」




