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MERCENARY GIRLs/EXCEED-WARRIOR  作者: 来賀 玲
Chapter 4

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MISSION 11 :ちょっと聞きたいことがある







 やっほ、傭兵系美少女こと大鳥ホノカちゃんだよー


 今、割と長引いた、クオンさんの会社ことAI社の医療部門の役員の人を粛清する任務を終わったはいいんだけど……



「これで、最後か」



 …………その役員のおじさんが生み出した、人工生命体『シンギュラ・デザインドビーイング』、


 と言っても見た目は、私と同年代の女の子達、

 だけど、実はまだみんな9歳児の彼女達に、何故か自分の血以外の抜かれたらやばい体液から作られた薬を、クオンさんはAI社製の美女ロボのソレイユモデルのナースさん達に配って、


 生き残りのみんなに打っていましたとさ。



 生き残り。


 そう、この子らは、今日が最悪命日かもしれなかったし、



「うぇぇぇ!!!

 AAちゃん、えぇえぇちゃぁぁぁぁ!!!

 うぇぇぇぇぇ!!」


 私が、殺した子もいる。

 あのないている子は生き残りか。



 ことの発端…………役員のおじさんが狙ったクオンさんは、この火星のテラフォーミングの時に、火星を地球化した方々に作られた人型のまた別の生命体、本当の意味で『火星人(マージアン)』。


 300年、20代前半ぐらいの見た目のままらしいし、実際クオンさんと同じ火星人(マージアン)のソラさんが傷ついても一瞬で傷が塞がる力がある事は見た。


 当然クオンさんもそんな身体で、クオンさんを殺そうとした役員のおじさんはクオンさんの体内の再生を司るナノマシン?を、

 無茶な作り方をしたせいで、9歳で死ぬはずだったシンギュラちゃん達を治すための薬的なのを作るために殺そうとしたらしい。


 そして、粛清を受け入れると引き換えに、

 おじさんは死んだ。私たちがそのシンギュラちゃん達と、愛機のeX-W同士で戦っている間に。





「生き残りは、9『匹』ですか?」



 と、なんとも今どき酷すぎる差別的な言い方をするのは、今回色々あって任務に同行したクオンさんの妹さんで、一応敵のはずのアークさんだった。




「……なんだよ、この不気味な感じのヤツ二人目。

 オレたちを動物扱いかよ」


 と、最後に治療薬を注射されていた、ちょっと男勝りな感じの短髪の子がアークさんを睨んで言う。


「良い気分じゃないわよねぇ、エクシィ?

 殺しておくぅ??いや、壊しておくが正しいのかしらねこの人ぉ?」


 いつのまにか、その背後に気怠げーな眠そうな目の美女までやってきて、男勝りな方の後ろから手を回して顔を寄せる。


 9歳児ってなんだっけ?まぁいいか、人じゃないはマジだし。


「エクシィ、ヴァーチェッタ、あの人に手を出すのは危険だよ。今はやめてね」


 なんていうのは、赤毛のセラちゃん。

 さっき戦った、⑨のエンブレムの赤い機体のクッソ強い子だっけか。



「…………オイオイ、良い子ちゃんのセラが、オレたちの態度が悪いとかじゃなくてマジのこっちの心配かよ……!」


「……まー、言われなくてもぉ、大人しくしてるけどぉ……アンタが私たち心配するってぇ相当よねぇぇ?」



「まぁ!

 戦力差が分かるだけの知能はありますのね、この生き物どもは」



 はい、空気悪くなりますねー!

 ……このアークさん、マジで色々とんでもない人だな。凄まじい差別主義者だ。





「───このど畜生の差別主義者、と言いたそうな顔の所だろうが、


 残念ながら、まだお前たちを『人間扱い』するわけにもいかない」




 おっと、そこでさらになかなかの問題発言と共に、私の今回の依頼主でもあるクオンさん登場である。


 途端、集まった8人と、ある理由で私の隣にいる1人のシンギュラ・デザインド達が表情を変える。


 だって、クオンさんが彼女らを作った人間を殺すように指示した元凶。


 侮蔑、警戒、恐怖……私は別にその子らと違って心は読めないけど、そのぐらいは顔見ればわかる。


 で、そんな印象最悪状態でクオンさん、

 一体何を言う気……?




「…………お前達の顔を見れば、何が言いたいかは読心レベルの生体センサーを持っているようなお前達じゃなくとも分かる。


 だからこそ、まずハッキリさせておく。


 お前達を作った、浅見クルスは2つミスをした。

 一つは、お前達の延命の為に私の身体の中のナノマシンを求めたこと、


 何よりお前達を作って実地テストを無断でしたことだ。


 何かはしているとは、正直思っていたが、


 お前達の存在が、そもそも『やりすぎ』なのだ」



 …………一番聞きたくないであろうことを……言っちゃうのか最初に……!?




「……何、それ……?

 聞き間違い……?まるで……アタシ達が、生まれちゃいけないみたいな言い方じゃないの……!?」


 1人、ちょっとセラって子より鮮やかな赤毛のツインテールちゃんが、すごい引き攣った表情でそうつぶやく。



「ソロネ、落ち着いて」


「落ち着いて?

 冗談やめてよセラ……落ち着けるわけがないじゃない!!!

 あの人は、先生を殺して!!

 私たちも、まるでモノみたいに見ているの!!


 もう誰も私のこと褒めてくれる人はいない……それどころか、私たちを明らかに嫌っていそうな相手が生殺与奪権を握っている!!!


 いやよ!!そんなの嫌!!

 私……私はただ先生に褒められるのが嬉しくて!!

 アンタも超えて、誰よりも一番になりたかっただけなのに!!


 もう……もうそんなこともできないのよきっと!!」


 わ、と洪水みたいに喋る、いやもはや口から勝手に出てくるみたいな感情ってやつかな。


 追い詰められる子もいるか。そりゃあね。



「落ち着いて!!

 お願いだから……!!」



「─────私だってヤツがまさかとは思った。

 理由を聞けば納得するようなものだが、それでもこういった事態になった以上、メンツや立場の都合上殺さなければならない。


 ……そして、そうまでして作り育てたお前達の存在だからこそ、一番今私とAI社を危機に晒している」



 ふー、と、クオンさんは疲れた顔で、座り込む。

 そして、何か手で指示をすると、秘書代理中の私のオペレーターさんのはずのアンドロイド、カモメちゃんが何か持ってきた。




 オイ、

 スゥパァ〜〜、ドルァァァァイなヤツじゃん

 500ml缶のでかいやつじゃん




 受け取って、プシュッと開けて、まさかの……まさか……!?


 そのまさかの通り、一気にグイッと傾けて飲み始めた。


 流石に、みんな唖然。

 後ろのあのアークさんですら、ドン引きで口元を押さえて見ている。



「…………何でお酒飲んでるんですか?」


 当然の質問を、おずおずと片手上げてセラちゃんが訪ねる。

 流石に、その心は読めても読みたくないわー。



「私が、無能だからだよ。

 こんな物もなきゃ一つの企業も動かせず、なんなら素面で一応は信じていた役員の隠し事も見抜けなかった。

 そして今は飲まなきゃやってられない」


 本当に一気に500ml飲み干して、くしゃりと缶を潰すクオンさん。


 ────その顔は赤いのに、その目は飲んでない時と変わらず鋭いままなのが逆に怖い。



「お前らには同情する。

 同情はするが、いやするからこそ何でそこまで生まれていけなかったかを説明しておこうか」


 そのままゴミ箱に缶を放り投げて、改めてその場のシンギュラ・デザインド達をみるクオンさん。


「…………まず、認めよう。お前達の力を。


 アンジェリカ、AA、プリンシパル、だったな。

 それとセラ。4人出撃して、あの面々相手に3機生き残ったか」


「でも、AAちゃんは死んだ!!

 そこの傭兵に殺されたんです!!」


「そこの大鳥ホノカは、ランクこそ9だが実際にはそれ以上の実力だ。

 まして、精神的に追い込んであまり傭兵らしくない戦いをさせただけでも、誇って良い」


「───何を誇れ、って?」


 と、あの生き残りの子……金髪のちょっと幼めに見える可愛い子が、可愛さをかき消すようなすごい目でクオンさんを見る。


「……不満か、生き残り?」


「ッ……AAちゃんは!!

 アナザー・アンジェリカで、AAって呼ばれてたあの子は!!

 …………名前を、私に譲るような良い子で……!!

 死んで良い子じゃなかったのに!!!」


「死んで良いか悪いかを決めるような戦場ではない。

 いや、そもそもお前たちは死んでもいいと言っても過言ではない」


「なんでそんな酷いことを!!!」


「言うのかって?私の思考でも読んでみろ。

 それで分かるか?複雑で読みにくいだろう。


 なら、分かりやすく、言ってやる。


 お前達は、あの大鳥ホノカ相手に生き延びた。

 仮にもハロウィンスコードロンであるジェーンのホワイトゴーストと、そこのクソ差別主義の妹相手にして、今生きている。


 素晴らしい能力だ。生きて経験を積めば、浅見クルスの目的通りの物になる。



 人工のイレギュラー。

 お前達は、良くやった。


 充分すぎるほどに」


 あの生き残りの子が立ち上がって、手短な椅子を持ち上げて暴れようとするのを、周りの子があわてて抑える。


 どこ吹く風どころか、クオンさんまさかのもう一本めを運ばせてくる。


 え、まってこの話の流れで、まだ飲むの???



「…………我々は今、仮にもそこのアークのいるクラウド・ビーイング側と戦争中だ。


 それもただの戦争ではなく、今お互いに膠着状態かつ、停戦、休戦の協定でもするかと言う時期だ。


 その意味がわかるか?」



 脇で聞いている私も分かん…………

 どう言う意味ですかね?

 戦争中だと、休戦する時だと、なんでこの子達が死んでもいいと言うことに?



「…………言ったはずだ。お前達は、人工のイレギュラーとして充分評価に値する。


 充分すぎるほど、と。


 充分すぎる…… ()()()()んだよ、お前達は」



 ────あっ!



「それの何がいけないと言うのか!?!」


 クオンさんの言葉に、1人ちょっとだけ凛々しい顔の、美少女っていうより美人な子が叫ぶ。


「ケルビィ!?」


「強いことの何がいけないのか!?

 私たちはそのために生まれた、そのために作られた!!

 博士はただ作りたかっただけかもしれないが、私たちの存在を認めてくれていた!!


 何故、その私たちを否定するのか、

 教えてほしい!!」



 ……良いの?

 言っちゃって、いいの、それ??


 私……あんだけ普段おバカなのに、分かっちゃった……!!


 いやと言うより、私は言われたことがあった!!


 それ……言っちゃうのか、クオンさんは……!?





「…………まだ、分からないのか?」




 あ、言うんだ!?

 これ、敵に言われたセリフで、クオンさんはそれを求めていたはずなのに!!


 言う。

 アレを……あの言葉を言う……!!




過剰戦力(イレギュラー)なんだ、

 やりすぎたんだよ、お前達は!!!」



 ……い、言っちゃった……!!



「……やり、すぎた……??」




「…………完全な戦時であれば、いや戦いの中であれば、もちろん強力な兵器は必要だ。


 だが、今は交渉の時なんだ。

 力をチラつかせるような真似だけでは、停戦や休戦は結べない。


 と言うより、なんで我々が仮にも強気に相応交渉をできるか分かるか?


 今は一応優勢だからだ。

 それもこれも、地球からの救援物資であるギフト2の強引ながらも入手と、今まで集めた傭兵(スワン)の中でも重要戦力(イレギュラー)の力を見せつけることができたからだ!

 大量破壊兵器がお互い、使ったら不都合だから使えない状況下なのも幸いした。クラウド側も汚染された大地なんぞ欲しくもないし、同化した人間の身体で住みたくないだろうからな」


「情報体への転換を『同化』などと言う宇宙生物か何かの侵略方法みたいに言わないでくれますか?」


「似たようなものだろうし、そこまで言ってないと言うことは自覚ありか?


 まぁいい、今はそこの愚妹よりお前達だ。

 今そこの私と同じ人間モドキ達は苦しいところではあるが、まだここで一度体勢を立て直す余力がある。

 まぁ、そこのアークは今睨んでいる通り死んでも徹底的にこちらとやり合いたいようだがな。


 だから、お前ら、シンギュラ・デザインドなんていう『歩く核弾頭』を早々に見つけた。


 …………『少し』交渉が不利になったのは分かってくれたか?」



 凄まじいトゲトゲの『少し』だった。


 なんだったら飲み干したあの500mlのスーパーでドライなお酒の缶を潰す勢いがすごい。



「…………」



 ……そりゃ、絶句するよねみんなって感じ……

 ただひたすら怖い。


 何が怖いって、これだけ酒飲んでるくせに、やっぱり言動も視線も酔いがない。


 本当にお酒飲んでるの……飲んでてこれ……??




「…………全員に、私の身体から作られた治療薬……いや生命活動維持用のナノマシンを入れた。

 その理由も分かるか?」



 そしてふと、またシンギュラちゃん達に問いかける。


「……?」


「…………ここまで言う私が、浅見クルスの為だけにお前らの治療をすると思うか?」


 片手を掌をかざすようにシンギュラちゃん達に向けるクオンさん。


「……ウグッ!?が、あァァァァァァ……!??」


 何を……と思ったら、私の隣のルキちゃんが胸を押さえて苦しみ出す。


「ちょ、どうしたの!?」


 慌てて身体を支える。

 というか、周りのシンギュラちゃん達も、おんなじように苦しんでいる!?


「良いか?私は、触れなくても機械が操れる。大昔にこの火星をテラフォーミングした異常な変化と進化をするナノマシンを抑えるための能力だ。


 何より、その生命を支えるナノマシンは元は私の一部だ。


 機能停止程度は簡単に命令できる」



 そう言って、手を下げるクオンさん。


 パッとその顔から苦しそうな表情が消えて、荒い息を整えるみんな。



「良いか?

 お前達の価値は認めてやる。浅見クルスはやりやがった。

 だが生かしてやるには、後二つの質問に答えてもらう。

 嘘は付くなよ?お前達の体内のナノマシンには体調や心拍数などを知らせる機能をお前達の生みの親が付けたらしい。

 読心はできないが、嘘発見器にはなる」


「ふた……つ……?」



「一つ。

 数週間前、クラウド・ビーイングの火星の拠点の一つ、そのサーバーが破壊された。

 犯人は、ネオ・デザインドの特徴があったらしい。

 だがそれはあり得ない。

 まさか、お前らシンギュラ・デザインドがやったのか?」



 瞬間、シンギュラちゃん達は驚いた顔で、お互いの顔を見回す。



 …………答えを知らないみたいに。




「…………冗談だろう、嘘だと言ってくれ。

 お前らじゃないのか、本当に!?」


「し、知りません!!

 私達、確かに色んな傭兵(スワン)さん達の仕事をしましたけど……!」


「…………ネオ・デザインドは、全ての個体が追跡用の端末が生まれた時から埋め込まれている上に、その全ての行動は管理されている。

 人間以上の能力がある上に、大凡無いとは思うが婚前交渉でもして繁殖でもしてしまうかもしれないからな。まぁ、染色体の都合上あり得ないが。

 ついでに言えば、間違っても見えない所で大怪我でもされたら血も足りない。人間とは血液型の名前自体が違う。


 だから、管理対象外のネオの存在はあってはならない。


 …………だから、その管理対象外のネオと言っても過言ではないお前達シンギュラ・デザインドを疑っている。


 だが…………本当に、関係がないと言うのか?」



 クオンさんの視線の先、大半のシンギュラちゃん達は、不安そうな顔はするけど、何も知らないってよくわかる顔だった。

 読心なんて要らないね…………



 顔に出るぐらい……素直な子達だよ。



 顔に出るぐらいに、ね。




「…………良いだろう。今は、その顔見れば答えは十分だ。


 では、最後にこれだけ尋ねる。


 お前達、傭兵(スワン)になる気はあるか?」



 そして、次の質問はちょっとびっくり。



「……え?」


傭兵(スワン)にならないなら、お前達はただの『実験動物』として、各企業を皆バラバラになってたらい回しにすることになる」


「えっ!?!」


「そんな……!?」


「良いか、お前達を仮にも私の企業であるAI社や、同盟企業に囲うことはもはや出来ない。

 お前達は、我が社の……私の失態で生まれた。


 私には立場がある。立場とは、私の都合だけで作れるような物ではない。

 私自身、いつ社長を降りようと、トラストから弾かれよと構わないが、あいにくこの酒にだらしない300年ものの老人がいないとまだいけないらしいからな。


 …………お前達を、我が社で引き取ることも、我が社の所有物にすることももはや出来ない。


 やりすぎたお前達の存在を保有する事が、危険を招くこともある。


 だが、お前達を作ったのは、我がオートマティック(A)インダストリアル(I)社にいた優秀な人間である事実は消せない。


 だから…………お前達には、もはや世界一残酷で過酷な権利を与える以外にない。


 我々トラストの中、報酬と自由と引き換えに傭兵(スワン)として生きる。


 その地獄の自由の権利を、お前達に与えようと思う」



 …………皆、その場にいるシンギュラちゃん達が押しだまる。



 クオンさんは……少しだけ、雰囲気から剣呑な感じが消えた。




「これは脅迫だが、同時に唯一のお前達の可能性だ。


 私とAI社は、お前達全員を人らしく扱うのはもう難しく、他のトラストを構成する企業全てに生のデータとしてお前達を引き裂いて送りつけるしかない。


 それを良しとしないのであれば、少なくとも死に場所を選べる傭兵(スワン)となって生きる方がマシな未来もある。


 お前達は、eX-Wを動かす最高のパイロットして生み出された存在でもあるからな」




「……ただし、そんな戦場で戦っていれば、いくら我々でも死ぬ事もある。


 まして、ただのどこにも所属していないに等しい傭兵(スワン)なら、

 すべての企業がいくらでも確保できるような手段が取れる。


 …………危険なサメの群れのいる海に飛び込めと仰るか?」



「ケルビィ、だったか。

 お前の言う通りだ。

 そのサメの群れの中にしか、お前達の生きるための餌場も寝床もない。


 どうする?」



 クオンさんが。そう全員に問う。


 ……どう、答える?





          ***

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