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MERCENARY GIRLs/EXCEED-WARRIOR  作者: 来賀 玲
Chapter 3

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MISSION 1 :機体アセンブルの心得







 はい、今は大分静かな航海中の、傭兵系美少女な大鳥ホノカちゃんです。

 あの戦いから、潜水輸送艦は合流した別の潜水艦輸送艦と一緒に、仲良く静かに目的地へ向かってまーす。



 そして、目の前には腕のない上半身が戦闘機に乗っかったみたいな我が愛機3機目、

 ペラゴルニス君が哀れな姿を晒しているのです。


 ……私、ぶっ壊した責任もあって、頼れる4つ腕褐色整備士系女子、ユナさんと共に、今までなんとか頑張って修理をしていましたとさ……ハァ……



「……あー、ユナさん……いつもこんな大変なことしてたんだね……強化人間(プラスアルファ)でもキツいねこれ……」


「そっすよ、ホノカちゃーん。

 まぁでも、お互い仕事なんすから、ぶっ壊す分には恨みはないっすよ。むしろ手伝ってくれてありがとうございまっす!

 そこの経理以外無能な火星人は手伝ってくれないっすから!」


「もぉ!この太陽系に5人しかいない生き物をこき使おうとしないの!

 酷い部下ですわ……まぁ、こんなカミングアウトしても対して態度が変わらないあたり当然ですけれども」


 マッコイさん、いつも通りぷんぷんしながらも書類を捌いている。やっぱ有能だね……数字だらけーで見るのもいやー。


「アンタが火星人だろうと、冥王星人だろうと異世界人だろうと、お互いビジネス!な関係なんすから踏み込むのもアレっすよ!」


「ビジネス!だなんていう様になったものね」


 まぁ究極そうだよね。

 よその星だの他の生物だのいうけど、まぁ話せれば良いしビジネス!な関係できるならそれでいいよね。


《ビジネス!か……ここら辺やっぱ大昔から変わらないか》


「おお、コトリちゃん。昔の傭兵(スワン)もそうだったの?」


《極端な話だと、「CBS」さえあれば傭兵(スワン)は変な関係とか考えないでいいし、それで納得できるってヤツ》


「しーびーえす?」


cn(カネー)、暴力、セクシーさ》


cn(カネー)、暴力、セクシーさぁ?確かに重要っすけど……!」


cn(カネー)、暴力、セクシーさ……なるほど」


 うん、cn(カネー)以外は私揃ってるね!



《そうそう、ビジネスといえばさ、結局このペラゴルニスの1001B腕は、》


「まず1001Bパーツがほぼ仕入れられないんで無いっすね。

 持ってける範囲の販売用パーツはそこのマッコイさん持ってきたとはいえ、こればかりはどうしようも!」


「逆にコアパーツの替えが簡単に手に入った辺りは、なんとも1001Bらしい話ですわね」


 マッコイさんのため息……でもそれってどゆこと?


「コトリちゃん、なんでコアパーツの替えが簡単に手に入ったのに、腕やら脚はだめなの?」


《腕と脚は人気っていうのが前提だけど……

 1001Bって不思議なフレームでさ、全体を見ると安価で普通の性能なんだけど、バラ売りにするとちょっとそれぞれのパーツの特性が大分違うんだ》


「っていうと?」


《腕は、比較的軽量ながら装甲が厚めかつ実体防御と射撃安定性の高い、主に狙撃機か中距離戦向け。

 脚は安定性の高さが売りだけど、そこそこの積載があるおかげで中量脚の中じゃ万能なのさ。

 そしてコアは、中量級の脚に乗ってると思えない重装甲を持つガチガチの重量級に分類されそうなコアだ。実際ガチタンにも使われるし。


 まるで方向性が違う。

 コレでフレーム単体のまとまりが良いのも奇跡だ。


 ただ……おかげか次に何売って機体の特性変えれば良いか分かり易いんだよ。


 特に、機動兵器の名前通り、運動性能を上げたいならコア変えればそれでそこそこ良い運動性能の機体出来上がるぐらいだし。


 アルゲンタヴィスも、ジェネレーターの次の次にはコア変えて軽くして比較的機動戦向けになってたじゃないか》


「…………でも、それが出来る、って普通気づくかな?」


《気付けるかどうかも、このフレームが初期機体に選ばれる理由だよ多分。


 ハードレインとかは、eX-Wの機動兵器としての動きを、機動兵器の戦い方を完全に理解させるためのスパルタなヤツだけど、1001Bは言ってしまえばこういう細かい事に気づかせる為の構成って感じかな。


 ただ、大抵の場合コア売り飛ばすって言う一つの正解を導かせるか、逆にコア以外は……まで考えて一番は人権(ジェネレーター)義務(高出力ブースター)を手に入れられるかだね》


「なんか、はじめっから使える強い機体を貰いたいなって思うのもアレ?」






「─────そう言う場合は、我がインペリアルはカチューシャクラート製『スプートニク-88』フレームを導入しているな」




 おろ、この声は!

 と思ったら、見たことある赤い制服の、えっと……前の任務から世話になってる凛とした美人さん!



「あ!

 …………インペリアルの人!!」


「フィリア・ブロイルズだ。

 名前を覚える気はあるのか?」


《ホノカちゃんの記憶容量はフロッピーディスクだから》


「そうだよ、すごい方なんだよ!

 ……フロッピーディスクって何?」


 ひょっとして悪口かコトリちゃん?

 ……というか、そのインペリアルの人ことフィリアさんの後ろにゾロゾロ同じような制服の女の子たちがいっぱい?

 なんかこっち見てヒソヒソ話してるし……?



「しかし、興味深い話をしていたな。

 ああ、大所帯で失礼する。彼女らが、今回の作戦に参加した私の部隊の皆だ」


「あれ……見たことない顔ばかり……?」


「そこなんだがな……彼女らは、新兵だ」



 あらまー!新人のインペリアルの兵士ちゃんたち??


《……ベテランは、あなただけかいフィリアさん?》


「前の生き残りは昇進して、今は私と同じように部隊を任されているよ。

 酷な話だ……ただ生き残っただけだというのに」


《人手不足もそこまでいくか》


「いやどう言うこと?」


《戦時中に昔の軍がやった手段だよ。

 ある程度ベテランになったら、新兵部隊を訓練する為の部隊長兼教官にさせられる。

 …………オイオイ、インペリアルってそんな徴兵して良いわけ?田舎の畑耕せる?》


「耳が痛いな、」



「────おいポンコツ!機械ごときが口を慎め!!」



 と、なんだか新兵ちゃんでも気の強そうな吊り目の子が、うわぁおなんと命知らずな発言!!


《あ?》


 コトリちゃん、当たり前だがブチギレておられる……!そりゃ確かにポンコツは酷いぞ!!私もちょっとおこ!!



「隊長、コレが例の大鳥ホノカですか?

 ウェザーリポーター、無人機用のAIを持っているとは……大層な戦果の半分は、そこのポンコツの力だったんですね。呆れた……」



《あぁ!?何を言、》



「おー、正解!

 なんだ君、よく分かってんじゃーん♪」


 コトリちゃんステイステイ、何も間違ってないぞ?


「な……認めるの……??」


「だって、私なんとか生き残ってるのはラッキーとこのコトリちゃんのキツいけど的確な指示と訓練とアドバイスのおかげだし。


 こう言う仕事は、生き残って金貰えりゃ勝ちだよ勝ち!

 便利な道具は買えれば使えー!ってさ?」


 わーお、なんとも言えない表情で固まっちゃったよ女の子。


《…………フフ、それもそうか!アハハ!》


 痛い痛い、コトリちゃん叩かないでー!

 もーなんだよ急に爆笑しちゃって……



「…………コイツが、このあからさまに頭が無さそうな女が……!?」


「そうだ、アウローラ・ローレンス一曹級騎士。

 だが、あえて言っておく。

 お前がコレ呼ばわりした人間は、実戦で何度も生き残っている。

 傭兵(スワン)を匪賊などという侮りは死を招くぞ。

 訓練では優秀なお前でも、おそらくは勝てんよ」



 ちょちょ、フィリアさん煽んないでよ!

 ほーら、顔真っ赤じゃんこの目つきの悪い新兵さん!!



「…………わ、私だって!!実戦に出れば……!」


《そこまで言うのか。

 じゃあ一個だけ聞いて良い?》


 と、コトリちゃん何やらそのつぶらなお目々だけの顔に企みを浮かべておられる。

 その質問……一体何を意図するもの?


「一体何よ!?」


《それでは、第1問!》


 デデン♪


《スプートニクフレームに使われているカチューシャ製ストライクブースター『ソユーズ44』がこのフレームで叩き出せる最高速度は、一体何km/h?》


「え……?

 えっと…………確か、マッハ1.5ね!?」



 わかんない質問来た!

 コトリちゃん正解は……?



《……見事引っかかったな。

 私は、時速何km/hって言ったんだよ?》


「は!?

 それが重要!?」


「…………あ!!」


 この時、大鳥ホノカのフロッピーディスク脳に電流が走る。


「コトリちゃん、確か音速って、上空と地表スレスレじゃ速度が違うんじゃ?」


《え、ホノカちゃん覚えてたの!?》


 何だその驚き方は!?!


《君はやっぱ意外と有能だな……

 じゃあ新兵ちゃんに解説してあげるね。


 確かに、スプートニクフレームは軽量だから、便宜上マッハ1.5は間違いない。

 ただしそれは高高度での記録だ。

 時速で言えば、1837km/hまでこのフレームは加速できる》


「へー、速いな……ペラゴルニスよりはずっと下かもだけど」


「それが何だって言うのよ!」


《君ね、ストライクブーストの速度を体感で覚えてたのは偉いけど、

 じゃあ聞くけどこの速度まで一体何秒で加速できるかは知ってる?》


「え……?」


「アレ?ストライクブーストだし、大体2秒ぐらいじゃない?」


 それがどうしたんだよコトリちゃん?


「それがどうしたって言うのよ!」


《君、ストライクブースト本来の役割の緊急脱出時に何秒でそこまで加速できるか分からない機体乗るの?

 この脳みそフロッピーディスク改めてCD容量のホノカちゃんですら概算を出せるのに?》


 言われてみれば……


「……!」


「……あれ、そう考えると、ペラゴルニスって案外加速が遅くない?

 フロートなのにティタニスと加速しきるまでの秒数同じぐらいだ……」


《ペラゴルニスに使われてるストライクブースト、ブラストアーマー用のAI社製だしね。瞬間推力自体は低燃費と引き換えにやや低めなんだ。

 アレだね、ペラゴルニスはただでさえ火力が低めになっちゃうし、もしもブラストアーマー使わないならティタニスはタンク脚だしもう少し大推力にしても良いかも》


「ちょ、待ちなさい!?

 今なんて言った!?!」



 え?


「どこらへん?」


「お前……確か機体は2脚のアルゲンタヴィスでは……!?」


「あー、アルゲンタヴィス脚が手に入らなくて、今はタンク脚のティタニスと上半身再利用フロートのペラゴルニスで戦ってるよ?」


「ありえない!!

 なんでそんな特性が真逆の機体にホイホイ乗れるの!?

 機種転換は最低でも半年は訓練が必要なのに!!」


「確かにどっちも乗り方違うけど……


 ガチタンは避けないで圧倒的火力で先にぶっ殺す!

 フロートはとにかく当たらない様動き回って戦う!


 ってだけ考えて動けば操作は分かりやすいじゃん?」



 …………なんだよその化け物を見る目ぇ!?


 いや、フィリアさんもそんな目!

 後ろの他の新兵ちゃんたちヒソヒソありえないとか何とか言ってるー!?


「……コトリちゃん、eX-Wはアセン変えてなんぼって言ったじゃん。嘘だったの?」


《嘘は言ってないよ。

 普通出来るかどうかは、言ってないけど♪》


「……普通は、その、自分の適正にあった武器を揃えるのが常識……というつもりだったが……

 改めて、恐ろしいぞ大鳥ホノカ……」


「でもペラゴルニス君は難物というかさー。

 これでも持て余している方だよー?

 この前だって、なんか火力足りないというか、まぁ1対3とか4だと火力が足りなかったし……」


「は!?

 ちょっと待って、お前上位ランカーと同時出撃だったと聞いているけど!?!

 1対3って何が!?!」


「いやね、リンちゃん……オルトリンデのことなんだけど、上でランク9相手で単騎だっけコトリちゃん?」


《合ってる》


「そうそう、一番強い人押さえて貰ってたから、その間になんとか一機は倒せたけど……火力足りない感じしたよねやっぱり」


《そこだよね、ペラゴルニスの弱点》


「そこだよね!?

 お前、お前ぇ!?普通、1対3で勝とうとするの!?

 あり得ない……」


「まぁ……確かにペラゴルニスはキツい話かな……」


 速いし、海の上でも息継ぎする様な着地が必要がないペラゴルニスくんだけど……改めてこの無惨な姿を見るけど火力足りないよね……


 ってなーにー、新兵ちゃんその理解不能なもの見る目ー!?



「…………まぁ、そのなんだ?

 このアウローラたちが失礼したな……何分、訓練では成績が優秀な者達だ。

 その……だが、結構お前凄いことを言っているぞ?」


「え、マジですか?」


 私なんか言っちゃってた??


《まぁ、フロート脚機体はまじめに組むと本当火力不足に悩まされるからね。

 積載で言えば、インペリアル正規軍騎士団(リッターオルデン)の主力の、スプートニクフレームの軽量2脚より低いし、装甲もやっぱり軽量2脚のほうが上だしね》


「うわー……軽量2脚に変えたほうがいい?」


《…………さて、じゃあそこも含めて、


 ホノカちゃんも、そしてインペリアルの新兵ちゃん達も、よく考えてほしい。


 アセンの心得、ってなんだと思う?》


 え?

 アセンの、心得?



 えーっと……やばいな、あそこの仮にも正規軍で私より頭良さそうなみんなも、目つきが鋭い子もすっげぇ考え込んでる。



「うーーーーーーーーーーん…………

 ジェネレーターとかブースターはまずそれ以前に話だしなー…………

 分かんないです!」


「お前、本当にバカなの?」


「おバカだよ!」


「自分で言うのか……」


《じゃあそう言う君は、何かしらは言えるのかい?》


 例の目つきの鋭い子、名前はアウ……なんだっけ?

 まぁその子が考え込む。


「…………強いて言うのなら……何を犠牲にするか」


《お!》


「……積載量、あるパーツは限られているわ。

 その中で、何を犠牲にして、もっもバランスの取れた機体を構成するか。

 違う?」



 おぉ!なんかいいこと言ってる!!



《…………強いて言うならば、君の答えは50点!

 正直惜しい。それでまだ半分だよ》


 半分!?


「じゃあ、もう半分って?」


《何を犠牲にするか、そこは重要だ。

 何を犠牲にしてバランスの良さを取るか……


 あるいは、

 もっと犠牲を払って、強みを伸ばした尖った機体を生み出すか》


『あ……!』


 全員、納得の声をハモって出しちゃう。



《その限られた条件の中でバランスの取れた機体を作る。それも正解。だから50点。

 もう50点は、ある種の諦めと可能性への賭けができるかどうか。


 eX-Wは、バランスに振るかそれとも特化型に尖るか、どっちも選択できるのが利点で難しい所だよ。


 そのためには何を犠牲にするか選ばないといけない》



 ……なるほど…………何を犠牲にして、何を得るか……



「……ペラゴルニス、この際何か犠牲にしてフロートのまま火力って上げられないかな?」


「軽量腕にして重い武器を持たせるしかないのではなくて?」


「いっそ、腕抜きで直接キャノンでもつけられればいいけ……ど……」


 ……あれ?自分で言っておいてなんだけど……そんな話前にしなかったっけ……??


「そんなことできるわけ……」



「…………武器腕」



 ……思い出した。コトリちゃんと出会う前、まだかもめちゃんがオペレーターtさんだった時、




「…………ヒナちゃん、武器腕ってなんだっけ?

 そんなのなかったっけ?」



 そうだよ。

 腕が武器になってる機体、足の説明のついでにサラッと説明された……!




《君、結構肝心なところで正解に近いもの掴むよね》



 え!?

 じゃこれで合ってる……ってコト!?



《マッコイ、ちょっと今この船に持ってきているパーツのカタログある?》


「ええ、ちょうど武器腕なら幾つか」


 あるの!?


 ……というか、武器腕って、そもそもなんなの!?



《ちょうどいいや、インペリアルの子も初めてだろうから。

 武器腕っていう物を歴史から教えてあげよう》



 これは……コトリちゃん先生すごい授業やっちゃう系!?



          ***

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