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MERCENARY GIRLs/EXCEED-WARRIOR  作者: 来賀 玲
Chapter 7

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MISSION 8 : 反乱軍掃討という名のオモチャの試遊







 ────火星統一政府の存在するヘラス内海の洋上メガフロート都市でのクーデターが勃発した。



 だが、継戦を望む派閥が予想外の小さい規模だった為、都市内部の正規軍相手に奮闘虚しく逃走。


 ただし、その分離した継戦派統一政府軍の規模だけですら、本体の火星統一政府軍にとっては打撃的だった。



 そして継戦派は小規模ながらも幾つかの拠点を確保し、再びハンナヴァルト領への侵攻を開始していた。







 ゴゥンゴゥンゴゥン……!



 唸る巨体は黒い影。

 50年前から空の主力たる巨大兵器『ブラッククラウド』達が、総勢約20機近く。

 悠々とその空を進んでいた。



<火星統一政府軍継戦派:小隊長>

『まもなく、ホーネットの射程圏内です。

 彼らは、『本国』の意向通りの行動をするでしょうか?』


<火星統一政府継戦派:戦闘司令官>

『『反乱軍』、だ』


<火星統一政府軍継戦派:小隊長>

『……え?』


<火星統一政府継戦派:戦闘司令官>

『火星統一政府は二つ存在してはならない。


 まして、敵に和平を持ちかけるような者達を反乱軍と呼ばずなんと呼ぶのか……!』


<火星統一政府軍継戦派:小隊長>

『なるほど……気をつけます』


<火星統一政府継戦派:戦闘司令官>

『気を引き締めろ。

 それとすでにホーネットの返答は返ってきている。


 ヤツらは『反乱軍』だ。


 最悪あの要塞を完全に破壊し、』





 ズガァンッッ!!!




 瞬間、4機ほどが一変に光に貫かれた。



<火星統一政府継戦派:戦闘司令官>

『攻撃か!?!

 今のはなんだ!?!』








           ***




<シルヴィア>

『やぁ、大鳥ホノカ。ボク達エクレール・メカニクスの依頼を受けてくれてまずはありがとう。


 今回は、火星統一政府の依頼のついでに、

 ちょっと新兵器の実験をしたいんだ』





 はいはい、依頼とあらば即値段見て判断!

 傭兵系美少女大鳥ホノカちゃん、銀髪チビちゃんの天才っ子高額の依頼にホイホイ釣られました。





「で、コレがその新兵器?

 わざわざアルゲンタヴィスに背負わせてる奴が?」




 私の中量二脚機体アルゲンタヴィスは、今なんかすっごいでっかいもの背負ってました。


 柱だよ、ほとんど。


 なんか上下に割れそうな柱と、とにかくなんかごちゃごちゃした機械みたいなの。


 なんか、すごい兵器って事だけは分かる。私賢い!




<シルヴィア>

『ふふ、コレがボク達エクレール・メカニクスが、この1週間アレやこれやと作った楽しいオモチャ!


 UFOキャノン・ライトスケール


 新たなNGウェポンだ!!』






 ────相棒のAI達が口を揃えて曰く、


『エクレール・メカニクスは、

 破綻した脳の変態技術者集団である』



 ジェネレーター技術においては全企業の中のトップ4が一つ、

 出力が欲しければエクレールと言われるほどの良い製品。


 ジェネレーターはね?


 変態と言われる由来はこのなんかデッカいもの!

 eX-Wの規格を、性能を無視した最強兵器。


 Non-standard 規格外

 Gigantic  巨大

 Weapon  兵装


 略してNGウェポンとかいう、何考えてんのかよく分からないトンデモ兵器を作っては売っている。


 この兵器、背中の明らかに本来の兵装ハードポイントでは収まらないから専用アームで機体にかじりついてる上に、


 起動したら、兵器側が勝手にこっちの機体のコントロールを奪ってジェネレーターを強制リミッター解除させて、その莫大なエネルギーをチャージした上で要らんだろその威力なのをぶっ放す!


 その主力ジェネレーターも、とにかく出力特化でリミッター解除状態でも即チャージを可能としているけど、今は壊れないにしろリミッター解除後の出力低下が割と激しいヤツ。壊れないだけすごいけど、ここはリミッター解除前提で出力低下がそこまで酷くない代わりに次のリミッター解除までのスパンがやや長く設計されてるAI社の奴が趣味に合うなって。



 それはそれとして、今回は依頼主の意向でエクレール製ジェネレーターだけど……まって?



「UFOキャノンって、確かあの移動要塞戦で使った奴!」



<シルヴィア>

『その通り。それをeX-Wにかろうじて積めるサイズにしたのさ。


 もちろん威力はそのままでね!!!』



<コトリ>

《あのさぁ、それ機動兵器に積む必要ある?》


「アホの私でも無いと思うけど、依頼主さんが積みたかったんだし積ませてあげようよ」



 いつも通り、ロボに一家言(いっかげん)ありまくり系の相棒AIのコトリちゃんが突っ込むのでしたー。



<シルヴィア>

『ああ、ちなみに今回の敵爆撃部隊は全部逃すと制空権取られるからってインペリアル軍と火星統一政府軍両方から言われててさ、

 破壊目標数は、24機の内9割以上を落として欲しいとのことだって。


 燃えるシチュエーションじゃないか。

 まさにこの新しいオモチャのお披露目にうってつけだ!』



「そっち先言えや」



 これ、私が暴言吐いても許されるよね???




<シルヴィア>

『いやでもさ、別に巨大兵器の一機破壊ごとに報酬4000cn(カネー)追加とか情報あったけど、別に要らな』



「そっち先行ってよね!!!

 俄然やる気出てきた!!!!!!!」



 金の話とあらばそっちが重要に決まってんでしょうが!!!!



<シルヴィア>

『まぁ、こっちとしてはデータ貰えればそれで良いよ。

 ああ、後一応火星統一政府軍の防空機動兵器部隊がいるから、最悪減らせればそれで良いっても聞いてるよ?』



「……自信ないわけ?」



<シルヴィア>

『なんだって?」



「自信があるなら、このオモチャの性能に信頼があるなら、


 全部撃ち落として、私の財布は大儲け、って言って。


 どう?」



<シルヴィア>

『───!


 ははは!!こりゃ一本取られたね!

 その通りだ……そのUFOキャノンLSは最強のおもちゃさ!


 そのフレームなら、UFO稼働時間が長く耐えられる特性のおかげで、3発は撃てるオマケ付き。


 ジェネレーターも悔しいけど頑丈なの選んでるしね……後は中量二脚の安定性で、果たして当てられるかどうか』



「お金のためなら、軽二で狙撃してあげる」




 さて、と思っていたら、上空を飛ぶ味方の飛行機雲が見える。



<火星統一政府軍特務部隊:隊長機>

『傭兵、こちらの準備はできた。

 初めてくれ』



「りょーかい!」



<コトリ>

《メインシステム、戦闘モード起動》



 戦闘モード起動かーらーのー、スイッチ……じゃなーい!



「カモメちゃーん、セヤナちゃーん!

 用意は良いかなー??」



 私のアルゲンタヴィスの頭から伸びてるケーブルの先、左隣には私の四脚ことオルニメガロニクスがいるのだ。





<カモメ>

『ええ、センサー感度良好です。

 ヘリとは勝手が違いますが』


<セヤナ>

無人僚機(PL-1)、オペレーション開始や。

 スポッターは任せとき!昔は本場地球は難波のスナイパー様の人格データや、スポッティングもプロ級の腕やで?》



<カモメ>

『この通り、優秀な火器管制AIがおりますので』



「よっし、ちゃんとデータさん送ってね〜?

 そんじゃ早速!」





 スイッチオン。


 そして鳴り響く警告音に、ヤバいアラートの数々!



<コトリ>

《NGウェポンモード起動。

 砲身展開》


 背中のなんかでっかい筒が、伸びて開いて前にやってきたから、両方のマニピュレーターで掴む!


<コトリ>

《姿勢制御アンカーを射出。機体を地面へ固定》



 その間にガスガス背中の装置備え付けのアンカーが地面に突き刺さって、ワイヤーをピンと張って固定してくれますー。


 これで爆発しても逃げらんないね。



<コトリ>

《ジェネレーターリミッター2段解除。

 機体フレーム流入エネルギーをUFO状態まで励起(れいき)する》



 キィィィィ……!!!


 何かが超高速回転する音みたいな、UFO状態特有の甲高い音と、白く光り始める機体の関節部分。

 多分ブースターからもいつものブースト炎じゃない光が漏れ始めている頃だね。


 本来は恒星間航行用の装置、関節とブースター仕込まれた名前忘れた装置の恒星間航行機能状態、


 機体を縦横無尽に高速移動させる無限飛行軌道状態(UFO)


 それを、同じ理屈の機械で作った弾丸に、ジェネレーターのリミッター二つ外したエネルギーを入れて発生させる。



「……チャージ早い!」


 目の前の円形の照準の周りに、見やすいよう配置されてるエネルギーバーが発射可能を示す位置までやってき始めてる。


 もう直ぐ撃てるじゃん!!

 良いのこれ!?



<セヤナ>

《ほぼゼロインのつもりで1発ど真ん中撃ってや!!

 最初は見せ球でええねん!!》


「オッケー!」



 じゃあ、照準の真ん中に敵の兵器たちのど真ん中合わせて……トリガー!




 一瞬、砲身から迸る光。


 ズガァァァァァァンッ!!


 この距離でも音が遅れて聞こえた。



「うぉ……!」



 ブレた!!感覚でわかる!!


 カメラがハッキリ写ったらやっぱり、真昼間でも見える雷みたいな光の筋は、照準の真ん中じゃない左側の方が消し飛んでる!!



<セヤナ>

《カモちゃん修正!》


<カモメ>

『修正データ整理してセンサーへ同期!』


<コトリ>

《チャージ速く!》


「おっけ!」



 2発目、速くチャージして、今度こそ照準ど真ん中……


 チャージ、完了!

 2発目!!





 ズガァァァァァァンッ!!!!!





 ─────ど真ん中、敵のデカブツ艦隊の半分消し飛ばした!!




<コトリ>

《ジェネレーター、リミッター解除状態限界、残り少ないよ!?》



「チャージしてます!!」



<セヤナ>

《ホノカちゃん上手いから甘えそうやけど結構ズレとるわ!!

 修正……あ、敵散開しとるやんけェ!?

 卑怯やぞ、ボケカス!!》



<カモメ>

『ホノカさん、泣いても笑っても最後です!

 どこを狙いますか!?』



「さて……」



 最後は、どこにぶっ放すかな……っと?



「……アレにするか!!」



 ズガァァァァァァンッ!!!!!




 最後の一発は、



 ─────どこでもない、あの空の向こうへ。






<火星統一政府軍特務部隊:隊長機>

『外した!?』




「外した方が、良かったかもしれない」




 キュゥゥゥゥゥ……ン……


 ジェネレーターの唸り声はおさまって、エネルギー出力がいつもより下がる。

 供給ゼロじゃないだけ、流石はコトリちゃんオススメのO.W.S.製ジェネレーターだね。重いけど。




<カモメ>

『……外れた、って言った方がいい報告かもしれませんね』




 頼れるカモメちゃんの分析がそうなら、嫌な予感的中か……



 何もない空間に、明らかにUFOキャノン直撃の後の炸裂した光が、


 それに照らされた、何か見えない巨大な輪郭が現れた。






<火星統一政府軍反乱部隊:司令官>

『─────バカな、気付いたと言うのか!?』




 輪郭だけだったものが、すぅと姿を表す。


 嫌なんだこのでっかいのは……!!




 見た目は、なんだろまるで翼を前で閉じてる天使って言っていいのか……それとも蛾?


 外套みたいな形の翼?装甲板??


 真ん中の塔みたいな構造の周りにそんなものが生えてる。


 真ん中の塔の下部分は……なんか強力そうなキャノンっぽいのいっぱいある!!




<火星統一政府軍反乱部隊:下士官>

『司令!!フォヴィドゥン・ネーム、Eシールド発生装置に異常が発生しております!!』



<火星統一政府軍反乱部隊:司令官>

『……まさか、来ただけで終わるとはな。

 やむおえん。今回は反乱軍に……


 いや、我らが敵たる傭兵の腕に軍配をあげてやろう。


 発射地点の機体のエンブレムは見れるか!?』



<火星統一政府軍反乱部隊:下士官>

『画像解析を……な!?

 灰被りの鳥(シンダーバード)……!?!』



<火星統一政府軍反乱部隊:司令官>

『……反乱軍共、いい傭兵を雇ったようだ。

 我ら同胞を殺しつくしたあの化け物に頼るか……


 反吐が出るが、撤退する理由にはなるな』





 広域無線で、そんな言葉がやってくる。

 同時に、敵の空飛ぶ要塞も、あのクソデカい何かも後退してくれた。




<火星統一政府軍特務部隊:部隊長>

『待て!!

 貴様ら、何を掘り起こした!?!』



<火星統一政府軍反乱部隊:司令官>

『いずれ、我らが火星を統一するための力だ……!』





 なんか追いかけてっているけど、まぁ逃げるなら追わない方がいいね。


 しかしなんとまぁ……なんだアレ??




「これ、依頼達成でいいよね?

 追いかけるにもまだジェネレーター本調子じゃないよ?」



<カモメ>

『……確認しておきますね。

 まぁ、次回面倒な依頼が増えるのは確実……』



 と、突然警報音がなったのだった。



<カモメ>

『ロックオン警報!?』




「マジで?」



 咄嗟に避けたら、なんかビームが足元に叩き込まれた。



 見れば、おかしいな〜……味方が見えるよ?味方の火星統一政府軍がさぁ?




「おいおいどうしたんだよ?

 まさか、『一発だけなら誤射かもしれない』って言う気?」




 さて、どうなるかな?




           ***

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