MISSION 3 : 傭兵の友達は味方じゃ無い
───思えば、私こと大鳥ホノカちゃんの美少女傭兵センスが、結構早めに警告を発してたんだよ。
<キリィ>
『……順調じゃのぉ〜、抵抗が薄いと言うか』
キリィちゃんがわざわざそんな事を言ったのも、残り距離3kmもない場所だった。
目と鼻の先だよもう。
<ミコト>
『良いことじゃないの!?
集まる前に来れたってことじゃんか!』
<オルトリンデ>
『…………だったら、どんなにええこっちゃって思うねんな。
……あーあ、おもろないわ』
「最悪だね。
リンちゃんが「おもろない」言うなんて」
嫌な予感は当たるもんだね、が感想だよこんなん!
<フミカ>
『戦えないのが、そんなに不満なんですか?』
<オルトリンデ>
『今雑魚ども蹴散らせば済むんならそれでええやろ。
考えてもみぃ?今周りをこうピタァ〜っと囲んで見てる雑魚メカの皆さんが、なんでだぁ〜れも手出ししてこうへんのやろなって。
んなもん理由は一つや一つ!!
────向こうの出口におっそろしい守護神がスタンバッってんねん。
全員空振り三振にするぐらい、えらい守りのやつが!』
ようやく、新人ちゃん二人はその考えに行き着く。
普通は無理だね。人の悪意とガメツさを知らないと。
<カモメ>
『その予想は当たりです。
目標地点手前、ランカーeX-Wを3機、その他2機のeX-Wを確認しました』
「見えた。
…………だろうね、っていう相手だ」
我が愛機、アルゲンタヴィスのカメラ性能を恨むよ。
なんせ相手は、顔見知り。
<ありす>
『やっほー⭐︎
今回は敵同士だねぇ、ホノカちゃん?』
名指しで呼ぶのは、私の親友。
ガチタン系アイドル、アリスちゃん。
<エーネ>
『みんなも久しぶりだね。
生きてて良かった、っていうのも変だね。
コレから殺すかもしれないのに』
同じく、リンちゃんキリィちゃんとも大分仲良くさせてもらってる戦友のエーネちゃんに、
<ルキ>
『ごめんね、お姉ちゃん達。
思ったより早くこうなったわね』
我が妹。血は繋がらなくとも、私の顔の知らないまま死んだ母が繋いだ縁の、ルキちゃん……
あと、ミコトちゃんたちの新人傭兵4人組の片割れの、ノドカちゃんさんにギャルのハルナちゃんまでいる。
<カモメ>
『ランカーeX-W、ハピ⭐︎タン及びキュアフル・ウィッシュ、バード・オブ・プレイ、その他2機の計5機を確認』
<キリィ>
『偉くなったのぉ、エーネ!!
殺される覚悟があるようで良し!!!ぶっ殺したらぁッ!!!!』
<エーネ>
『元気で嬉しいよキリィちゃん。
生きて帰ってきたのに、本当残念……!』
キィィッ、ボッ!!!
キリィちゃんの軽量機『ブラック・インパルス』がストライクブーストを起動。
容赦なく置きハイレーザーをするエーネちゃんの攻撃を避けて、いつものバズーカを反撃で撃ち込んででる。
「ごめんリンちゃん、妹任せた」
<オルトリンデ>
『なんや、やっぱ妹ちゃん殺しとうないか?』
「ついでに言えば、ありすちゃんが先に指名しててさ!!」
早速我が妹ながら、鍛えた通りのコア直撃の狙撃がやってくるんだよコレが!!
あいにく、ルキちゃんに構ってたら、もっとおっかないグレネードが飛んでくる!!
ガチタン相手に足を止めたら、死ぬんだよね!!!
<オルトリンデ>
『というわけで、ルーキちゃーん♪
マジの殺す気で遊ぼうやぁッ!?』
リンちゃんのスカイヴァルキュリアの背部、自立飛行砲台、だっけか?『アタッカーサテライト』って言われてるヤツが分離して、空飛ぶレーザーライフルって感じにルキちゃんの機体バード・オブ・プレイへ襲いかかる。
<ルキ>
『ま、そう来るわよね。
ネオかシンギュラか、試験管生まれ同士で優劣決めようじゃない、リンちゃん!!』
アタッカー・サテライトの移動砲撃で包囲される前に、ウチの妹ったら分裂ミサイルで弾幕を張って防御とサテライト狩り同時にやるのでした。
上手いねぇ、流石私もシミュレーションで鍛えただけあるねぇ。
<オルトリンデ>
『オルトリンデ『先輩』やろぉぉッ!?
二歳年下の癖に生意気でぇ……!!
大変よろしいっちゅーねんなーッ!!』
<ルキ>
『なにそれ。ま、褒められたんだし鉛玉でお礼してあげないとね』
お互い、距離と高度を確保しつつ、冷静な撃ち合いを始める。
凄いね、セリフと裏腹に、頭が冷えた戦いだぁ……
<ありす>
『余所見なんてひっどーい!!』
確かに酷いね。
高速突進してくる鉄塊から目を逸らすなんて!!
「どわぁ!?!」
2段アサルトブーストで即右に距離を離して、即座に機体を左へ回転させる。
旋回性能の高さを生かさないと、ガチタン相手は死ぬんだもん!!
「撃ってこないってところは砲身冷却と弾丸生成時間!?
それともブラフかありすちゃん!?」
狙って撃って、この速度でぶん回した慣性を腕パーツと私のタイミングを計算するFCSは考慮してくれるかな!?
ほぼお祈りのレーザーライフル……外すよねぇ!?
<ありす>
『答えをブチ込んであげるッ!!』
空中超信地旋回。昔見た映画の亀の怪獣みたいなブースターを鈍重タンク脚から放ちながら回転するありすちゃんのハピ⭐︎タン。
もっとも、戦車よろしく先に上半身がぶっとくてデカい4連オートキャノン2つ持ちな両腕をこっちに向けてる!!
「勘弁ッ!!」
ズギャァァァンッ!!!
咄嗟に、Eシールド防御を捨ててでもなブラストアーマーを起動!!!
数秒間あの攻撃を避け続けなきゃいけないけど、目眩しと牽制には良し!!
当然、爆心地から後ろに飛んだ私の方向へ、オッソロしい音で砲弾が雨霰と飛んでくるわけで!!
<機体制御AI:コトリ>
《仮想装甲耐久値、70%まで減少。
やられてるよ?》
「最悪だね!!」
お互いの本気の殺し合いだ。そりゃそうなるか!!
<ハルナ>
『いやおかしいでしょ!?!
なんでさっきまで仲間だった間でこんな素早く殺し合いできんのさ!?!』
おっと、棒立ちの青い機体発見。
「傭兵同士敵対したら仕事だから、死んでねー!」
<ハルナ>
『どわぁぁぁっ!?!?』
そりゃ撃つよ、左腕のライフルの方を。
だって、棒立ちでまともなこと言い始めるなんて撃ってくださいって言ってるもんだよね?ね??
<オルトリンデ>
『お!!なんやなんや良い子が戦場におるやんけ。
良い子ちゃんはなぁ!?
射的の的やねんなぁ!!
こんなカスどもが蔓延る戦場やからなぁ!?!』
<ハルナ>
『なんで私を撃つんだよォ!?!
やめてよ!!離してる途中じゃん!?!』
リンちゃんのサテライトがハルナちゃんの乗ってる青い機体 (名前は知らない)に襲いかかってる。
なんでって言われても、そこで無防備に突っ立ってる君が悪いとしか言えないねぇ。
<ハルナ>
『あんたら頭がイカれてんだよ!!!
殺し合いしすぎて、人の心まで無くしちゃってんじゃないの!?!』
<キリィ>
『人の心?
……ククク、ハハハハハハッ!!!!
オイ、聞いたか全員!?人の心とくるかァ!?』
キリィちゃん、大爆笑。そして唐突に相手をしていたエーネちゃんの機体から自機の距離をとって反転、ハルナちゃんの機体へ一直線に加速。
<キリィ>
『いらんじゃろが、人の心なんて。
それで勝てりゃあ、喜んで捨てるけぇのぉッ!?!』
<ハルナ>
『あっぶっ!?』
ボスン!!!
と射出されたHEATパイルが、ハルナちゃん機の脇腹スレスレの空間に射出されて伸びきってる。
<キリィ>
『やるのぉ、お前!
人の心なんぞ二束三文で売ったワシから言わせりゃ、お前はマシじゃ!!イカれたワシらに楯突く選択するだけ、傭兵としてマシじゃけぇ!!』
ただし、突然反転するキリィちゃんの機体。
そっちには、中に歳上に見えない歳上新人さんことノドカちゃんのいるタンク脚型がいる。
<ノドカ>
『えっ』
<キリィ>
『え、とか言っとる暇に死ね』
タンクも沈むHEATパイルが構えられた瞬間、ハッとなったみたいにブラック・インパルスが頭を上げて回避行動。
遅れて、ノドカちゃんの目の前にハイレーザーが落ちてくる。
<キリィ>
『チッ……構ってもらえんけ、寂しかったかぁ!?エーネェ!』
<エーネ>
『謝ってくれるなら、代わりにハイレーザーに突っ込んでくれると嬉しいな』
<キリィ>
『ヘッ!!おっそろしいヤツじゃのぉ!
見たか、動いとらん新人ども!!!
突っ立てれば戦いに巻き込まれんとでも思っとるなら、今すぐドタマぶち抜いて死ね!!!』
<ハルナ>
『このッ、ノドカっちになにすんだよ!!』
ハルナちゃん機のレーザブレードがブラック・インパルスに向かって振るわれる。
<キリィ>
『そこの新人傭兵、お前は受け身の対応じゃけど、ちゃんと楯突く選択したんじゃ。
流されるまま戦場にいるヤツはただの的じゃけぇ。
的撃ちは楽じゃが面白くはないけぇのぉ!
ワシらが狂ってる思うなら、お前らがワシらを殺せ!!
それで文句は無い!!』
<ハルナ>
『やっぱ正気じゃ無いよ、アンタって!』
<エーネ>
『……いや、結構正気の判断だったかも!』
あ、やばい、エーネちゃんこっちきた!?
「ちょっとキリィちゃん!!
ちゃんと3人足止めしといてよ!?」
忘れちゃいけないけど、これは護衛任務だ。
今もまぁ急ぎつつも思ったより遅い外交使節団入りの輸送機を背に守りながら戦ってるんだ。
せっかく良い話っぽく新人ちゃんとついでに気がついたら嫌な攻撃してくるエーネちゃんの機体をキリィちゃん抑えてたのに……
やっぱエーネちゃん相手にするのが1番怖い。
<ハルナ>
『……じゃ、じゃあ、今の全部……嘘……!?』
<キリィ>
『勘違いすんな。思っとることは本当じゃけぇ。
ただの、本当のこと喋っとるからって、騙してないとは言っとらんけぇのぉ?』
<ハルナ>
『コイツ……!!』
<エーネ>
『ハルナさん、怒るのはお門違いだと思うよ?
だって、ここは戦場だもん。戦う場所。
思想とか、思いとか、そう言うのぶつける場所じゃない。
強いて言えば……私たちの仕事の場だから』
と、言いつつレーザー乱射してくるエーネちゃん。
辞めてー!こっちはレーザー耐性高いフレーム使ってないんだよー!!!
<オルトリンデ>
『オイ黒いのぉ!?エーネだけはせめて抑えろこのバァカッ!!!
あの子が1番戦って怖いんやっちゅーねん!!!』
<キリィ>
『悪うござんしたのぉ!!エセ関西様がテメェの後輩の方が性能良いからここまで苦戦してます、ってセリフを吐かせるような下手な真似して申し訳ないとは思っとるけぇクソボケェ!!』
<オルトリンデ>
『今ぶっ殺すところじゃクソカス黒いのぉ!!
良いからエーネ抑えとけタァコ!!!』
<ルキ>
『ぶっ殺すぶっ殺す言ってると、殺せないけど先輩ちゃん♪』
我が家の妹の成長に泣けてくるね。
実際、リンちゃんの腕が悪いはずがない。だって傭兵ランク今13だっけ?評価高いもん。
でも、うちの妹ルキちゃんを倒しきれてない。
空中戦が得意な逆脚機体で上をとってるのに。
これが、いわゆる人工人類『ネオ・デザインド』のリンちゃんを超える、『シンギュラ・デザインド』なルキちゃんとの差……
なわけないね。正直そんなもの差にもなんない
ごめんね、リンちゃん。
私、ルキちゃんのこと可愛がりすぎたよ。
<オルトリンデ>
『ところでルキちゃんのお姉ちゃんは、コイツにどんな鍛え方しとんねん?
お前、姉より強い妹でも作る気やったん?
怒らんから、言うてみ?』
あ、ちょっと考え読まれた??
「普通に仲良く生き残ろうねって、コトリちゃん式をしただけだよ」
<オルトリンデ>
『バァーカ!!!』
<ルキ>
『お姉ちゃんがおバカなの当たり前でしょ?
おかげで強くなりました!ありがとう♪』
ありがとう代わりに、狙撃までしてくるなんて、こんなところお姉ちゃんに似ないでほしかったよー!
<ありす>
『でもふざけてる癖にきっちり護衛対象守るあたり、
本当、私より強いんじゃないホノカちゃん!!』
グレはやめてねアリスちゃん!!
いちいちその砲弾叩き落としておかないと、爆風でも輸送機がアウトなんだよ!?
「ありすちゃんのハピ⭐︎タンを抑えて、周りに気を配って、護衛対象は守る……
キッツイなーもう!!」
<ありす>
『完璧にこなしといて、よく言うよね!!』
オートキャノンは辞めて!!迎撃できないから、あーもう盾とか欲しい!!
<ありす>
『でもね……私はガチタン系アイドル傭兵だッ!!!
正面から、火力と、装甲で潰す!!!
それだけは、負けない!!』
「知ってるさ!!
……じゃあこっちも本気出すか」
操縦、切り替えだ!
ズドォォォォンッ!?
<ありす>
『横から……スナキャ!?』
「悪いね。
私は引き出しが多いのが、強みなんだ」
────完全にコトリちゃんとかの自律操縦システムだとバレるから、こうやってレーダー範囲ギリギリでいつでも支援できる頼れる四脚愛機のオルニメガロニクスの中で戦ってたんだ。
アルゲンタヴィスにいると見せかけてね。
さっきは領主さんも騙して悪いとは思ったけど、以外と有効だなぁ。
……修理費弾薬費かさむけど。
<ありす>
『やってくれるじゃんか……!!』
「ありすちゃんは強いからね。
だから絶対正面からは行かないし、こうやって全部の武器の限界射程外から!」
ズドォォォォンッ!!!
スナイパーキャノンの一撃で、ただダメージを与えるだけじゃなくてハピ⭐︎タンの脚を止める。
スナイパーキャノンの一撃は強力で、何よりタンク脚でも足が確実に止まるだけの衝撃があるからね。
<ルキ>
『アリスちゃん!?』
「援護はさせないよ。
コトリちゃん!!」
<機体制御AI:コトリ>
《了解。PL-1、オペレーションを開始する》
アルゲンタヴィスの中の頼れる相棒AIが完全に操縦を引き継いでくれた。
向こうの武器でこっちまで射程が届くのはルキちゃんの四脚機のバード・オブ・プレイだけだ。
だから、それさえ抑えてくれれば……狙撃が出来る!
はず、だったんだ。
<機体制御AI:セヤナ>
『レーダーコンタクト!!
上や!!』
「上!?」
瞬間、なんかチャージしてる光が、戦場の上に見えた。
ズガァンッッ!!
咄嗟に、外してもいいからぶっ放した直後、結構極太なレーザーが輸送機の方へぶっ放された。
<ありす>
『何!??』
<カモメ>
『上空に、敵!?
このサイズを、直前まで感知できなかった!?!』
オルニメガロニクスの結構良い性能なレーダーに映るのがなんかあやふやだもん、そりゃ分からないって!!
「でも見えた。
あれは……!!」
さっき見た、敵の新型。
が、数体!
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