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MERCENARY GIRLs/EXCEED-WARRIOR  作者: 来賀 玲
Chapter 5

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MISSION 15 :ファイアコントロールシステムを知ろう









<機体AI>

《メインシステム、戦闘モード起動します》



<ソラ>

『あいあい、ホノカちゃん聞こえるかい?

 オルニメガロニクスの調子どう?』



 というわけで、今私は、

 この前に鹵獲したあの4脚機、それをちょっと内装とかを変えた新しい機体『オルニメガロニクス』、

 肩にちょっと趣向を変えて、なんか脚とか身長が縦に長ーーーーーーーいフクロウとそれにもたれかかった長いスナイパーライフルのエンブレムを付けた新しい機体に乗ってますー。

 ちなみに、コトリちゃんも誰もウェザーリポーターは乗ってない状態だよ。



「こっちはOK。オルちゃん戦闘モード起動したよー」


<キリィ>

『同じくブラックインパルス、戦闘モード起動じゃ』


 横には、キリィちゃんのブラックインパルスがいる。


<アウローラ>

『ロイヤル7番機、戦闘モード起動』


<フィリア>

『同じく3番機、戦闘モード起動』


 その向こうに、フィリアさんの乗るレイシュトローム製のバランスのいい中量2脚で有名な『フェンリル 2A』フレームと、アウローラちゃんのいつものカチューシャ製軽2のスプートニクフレームがいる。

 赤いインペリアルの塗装かっこいいな。




<ネェロ>

『良し!こちらも端末で貴様らの視界の映像が来ている。

 では、FCS解説と、試験マニューバを開始しようぞ!

 ソラ殿と言ったか?ご教授をお願いする』


<ソラ>

『おっけー、隊長さん。

 じゃ、4機ともまずは今回君らの機体の大きな変更点と、組み込んだFCSの解説とかから。

 ちゃんと聞いてよ?パーツの知識は生死を分ける』


「その為にいつもの相方ちゃん外したんですか?

 寂しいなぁ、意外と」


<ソラ>

『ホノカちゃんさぁ、私が70年前に設計したウェザーリポーターちゃん達が有能なのをわかってくれて嬉しいけど、たまにはこの口うるさいけど面倒見のいいタイプ13抜きでやってみなよ』


<コトリ>

《そうだぞ。甘えんな》


「ほーい」


<機体AI>

《───デフォルトのAI補正では不満ですか?》


「ふぇ!?」


 まって、今喋った?



<ソラ>

『そうそう、言い忘れてたけどさ、

 FCSをとっぱらった頭部は、これまでと違ってAIレベル差はほぼ廃止されたって言ってもいいよ。

 ほぼ全頭部が、PLシステムの前身である無人機運用可能補助AI『フォーミュラ(F)ライド(R)システム』が搭載されることになったんだ。


 PLシステムと違って、元からある誰かの戦闘データを元に動かすんじゃなくて、君ら自身か私みたいな『機体構築屋(アーキテクト)』が、AIの動きの癖とか行動指針を好きに弄れる。


 ま、デフォルト戦闘データが無いようなもんだし、ある意味でPLより旧型な物だけど、ある意味で乗ってても腕組んで勝手に戦ってるの中から見てるのも可能だよ』


<キリィ>

『ワシらとうとう廃業か?』


<ブラックインパルス機体AI>

《その心配は無いのです。どのみち、あなたが私達の行動パターンを構築する必要があるのです》


「そういえば、前にコトリちゃんに似たのを紹介された気がする。なんか面倒くさかったなぁ……」


<コトリ>

《どのみち私がいるから要らないでしょ。

 君にはロジックがないからロジックパターン組みは無理だよ》


「ひでぇ!」


<ネェロ>

『しかし無人機運用が全機可能、か。

 うむ、だが無人機も武器の一つではあるな』


<ソラ>

『ま、そっちはそっちで長くなるから割愛。

 FCSの方にまずは戻ろう。


 じゃ、全機視界のロックオンカーソル付近に注目!』




 難しいことは後にして、視界を見慣れた景色に戻す。


 景色の真ん中に円が一個。

 縁の色付きのゲージは、仮想装甲値、Eシールド出力、各種武装、残弾数、機体エネルギー容量ゲージ。


 このタイプは、新しい方の頭部パーツだとデフォルトの表示なんだ。


 たしか、インペリアルの人が基本乗ってるスプートニクフレームとか、そこのフィリアさんの乗るフェンリルフレーム系列は表示が違うはず……


<アウローラ>

『画面のタイプが違うわよね?』


<フィリア>

『これもFCSパーツ独立化の影響か?』


<ソラ>

『そ。旧型表記はもう無いと考えて欲しいね。

 ここは、正規軍の皆さんにはキツイかな。普通は機種転換訓練は長くやんないといけないし』


 そういうもん?

 とか言ったらまたすごい目で見られるか……色々乗れるなんて才能があるのは辛いぜ。なんて。


<ソラ>

『改めてこのタイプの表記のロックオン範囲の見方を教えておくね。


 よく中央の照準線の周りの残弾やらの円はあくまでマニュアル照準線。


 いま搭載しているFCSは、バーンズ製クイックロックタイプ『FQLM-01A』だから……残弾のゲージより外に細い円が見えない?』



 ……よーく見ると、私はわかりやすいよう緑色とオレンジで表示が出るよう設定してるから、オレンジの線がたしかに円の外に見える。


「一応みえまーす」


<ソラ>

『よし、()()()()()()()()()は見えるみたいだね』


「え!?」


 私のだけ?



<アウローラ>

『たしかに、こっちは円が見えないわね』


<フィリア>

『同じく、武装その他のゲージのある照準だけだ』


<キリィ>

『……なるほどのぉ、ワシのは照準の外まで見えとるけ。ま理由はよう分かるがの』


 どういうこと!?



<ソラ>

『さて、端末を介して4機の映像を見ている面々は知識としては知ってるだろうけど、


 今回、FCSが独立パーツとなった影響の一つが、このように頭部パーツユニットによってロックオンサイトが影響があること。


 今回選んだ4機は、オルニメガロニクスは恐らく今回ある機体の中でもトップクラスのカメラ性能を持つ頭部で、ロイヤル参加機体2機は平均より上の値かつ同性能。

 ブラックインパルスはアヤナミマテリアル製だし広いロックオンサイト補正が当然かかる。


 でもそれだけが違いでもないんだな……

 全機、ライフルを構えて。

 では、お見せしようか』



 というわけで、渡された、懐かしい傭兵なりたての頃貰ったあのライフルを、みんなで構える。


 ガシャン、ガシャン、と遠くに現れる影。


 よくある黄色い色の『安全第一』の文字が書かれた重作業型MW(マシンウォーカー)が歩いてきた。


 ピピ、とロックオンサイト内に入った瞬間、ロックオンがされる。


「おー、速いな」


<アウローラ>

『まって、もしかして大鳥ホノカの機体の方がロックオンが早い?』


<キリィ>

『ワシんとこは1次ロックまでじゃ、ロックオンマーカーのあの四角の色が白いままじゃ』


<フィリア>

『こちらは恐らく、大鳥ホノカと同タイミングだ』


「ここも違いが出るんだ……」


<ソラ>

『体感した通り、FCSは頭部パーツ、2次ロックを決める腕部パーツ、機体全体の安定性なんかによって総合的に想定ロック距離や2次ロック距離と速度が変わるんだ。

 それだけじゃない……そうだな、まずは全機ちょっと距離を離してみて』



 という訳で、ゆっくり距離を離していく。


<キリィ>

『……お、外れた』


 と、キリィちゃんが最初に足を止めた。


 やっぱりというか、もう少し離れてフィリアさん達の機体が止まって、やっぱり私はロックオンマーカーが消えるのは最後。



<ソラ>

『当然、見ての通りロック距離も頭部パーツや武装の射程センサーによって変わってくる』


「……あれ、ということは……」



 ここで、私はオルニメガロニクスの背中、腕部用火器のハンガーパーツを起動して、貰ったライフルと元々付いていた武装と交換!

 HEATライフルにすると……ロックオン出来た!


「おぉ、本当に武器によって射程が……

 アレ、でもサイト狭くない?」


 そう、このHEATライフルにしたら、ロックオンサイトの円がほぼ中央のあの装甲値とかエネルギーゲージの円の中にまで狭まっちゃった……


<ソラ>

『お、マルス133じゃん!良いHEATライフル使ってるねぇ?

 けど、ソイツこのFCSが適正じゃないから、狭くない?』


「ここまで違う物なんだなぁ……」


 もう一回切り替えると、範囲が見て分かるぐらい違う。


<ソラ>

『今ホノカちゃんがやった通り、サイトの広さは武装によってもかなり違ってくる。

 もちろんワイドアングルタイプFCSが一番広く補正入るんだけど、そのFCSと武装のセンサー、頭部の性能の相性がいいと、FCSのタイプに関わらずサイトが広くなるんだ』


<ネェロ>

『……まさかとは思うが、我がインペリアルは機体フレームこそカチューシャ製だが、武装のほとんどはバーンズアーマメンツ製だ。

 導入FCSパーツは、カチューシャ製では無い方が良いということなのか、ソラ殿?』


<ソラ>

『今回の演習後に決めるっていうのなら、次の試験を見てから決めた方がいいかも。

 全機、今度はブーストで目標に近づいてみて?』


『了解』


 みんなで一気にブースト!

 ────ってぇ!?


「嘘でしょ、結構縮むなサイト!!」


 4脚なんで意外と速い私のオルニメガロニクス、

 だけどそんな速度でロックオンサイトの広さが目に見えて縮んでいく……うわ、中央のゲージの内側まで!!


<フィリア>

『移動速度でもサイトのサイズが変わるのか!?』


<キリィ>

『逆にワシのはあんま縮んどらん!』


<ソラ>

『今まで、頭部依存FCSサイトは表示があらゆる状況での最低照準範囲しか映さなかった。

 けど、コンピュータを独立させたおかげで可変式に範囲を示せるようになった訳だ。

 そして、ここからはバーンズ社製のクイックロックタイプの弱点が分かるよ』


 ……あ!


 思い出した、バーンズ製とか、今使ってる頭のパーツのFCSの弱点!!


 思い出した瞬間、それが現れる距離にまで来てしまった。


 乗ってるユナさんが見える距離まで先に来た私のオルニメガロニクスの照準が、作業用MWから勝手に外れる。


「下回っちゃったか!」


<キリィ>

『あー、そらそうかの。

 バーンズ製じゃけぇ、至近距離は死角か』


<フィリア>

『なるほど……!』


<アウローラ>

『うわ、外れるの、ロックこの距離で!?』



 そう、バーンズ製FCSは頭部依存だった頃から、

 近距離にも死角があるんだ。


<ソラ>

『元から、バーンズ製FCSは中距離からやや遠距離までの撃ち合い主体だからねぇ。

 そこまでなら優秀だけど、近距離はライフルで撃てる距離以内はロックオンがしにくいね。


 ブレード使うってなると痛いかな。

 使えないわけでは無いけど、近接用のブレードとかは緊急武装っていう思想で出来ているから』


<ティーリエ>

『……困ったなぁ……となると、これまでのようにカチューシャ製FCSを使うというだけではいけない可能性がある。

 兵站を担う事務屋の皆が、また熱を出すということか』


<ネェロ>

『うむむ、母上……今回の演習、その後に全軍導入するFCSコンピュータの選定をするという案、あながち間違いでは無かったかもしれませぬ……』


<ソラ>

『最悪、3種導入も考えた方がいいかもですよー?

 カチューシャ製のスプートニクとレイシュトローム主力高級品のフェンリルフレームは癖がないから、逆にパイロット適正依存かも』



 なんか、聞いてるだけで割と他人事じゃない気がしてきたな。

 ある意味で、無駄遣いしない最良の資産、大体250万cn分の5機のフレーム持ってる身だしね……へへ、いくつかは内装、特にジェネレーターは高すぎるから共通にしてるけど、それでももう稼ぎたい目標金額の半額分なんだ……


 と、そんなことを思っていると、何かピピピピ鳴ってる。


 ん?敵機反応?スキャン実行推奨?


「スキャン?」


 思わず、神経接続を通してその謎の表示を起動する。



<機体AI>

《システム、スキャンモード》



 途端、私の視界に映る景色の色が全部変わって、何かCGの線があちこちの景色に張り巡らされるのであった!


 なんじゃこりゃ!?



<ソラ>

『ヴァアアアアアアアアア!?!

 ちょ、誰だよスキャンモード起動したの!?』



<オルトリンデ>

『ギャー!?!なんやこれうっさ!?!』


<ルキ>

『うみぃ!?!

 ちょ、おねーちゃん何やってんのぉ!??』



 なになに、とつい騒がしい無線の元、みんなが集まっている場所を見る。


 集まっている人の輪郭が光って見えて、同時に『SCANING』の文字。


 なんかのたうち回ってる人影に、注釈っていうのか文字で『ネオ・デザインド個体』だの『超音波帯のアクティブソナーの影響により聴覚にダメージを確認』だの『ナノマシン含有率』だの、とにかく資料がいっぱい出てる!?!


<ソラ>

『ホノカちゃん、スキャンモードやめて!!

 それすごいうっさいんだよ!!!アクティブ音響センサー全開でさ!!!!

 火星人(マージアン)とネオ・デザインドの聴覚だとマジでキツいんだって!!!』


「え、あ、ごめんなさい」



<機体AI>

『システム、戦闘モード』


 元の画面の色に戻ったら、ようやく悶絶していたソラさんとかが肩で息を切らしてようやく落ち着く。


<ネェロ>

『……音響センサーがデフォルトでついているのか?』


<ソラ>

『はぁ、はぁ……ええ、ですよー。

 この度、頭部パーツは全てレーダー搭載、赤外線カメラに暗視装置も内蔵、アクティブ・パッシブの音響センサーも生体センサーも標準搭載化……

 つっても頭部の型によっては性能もまちまち最悪無いの同然ですけど……

 何より、その使用状態である『スキャンモード』へ切り替える必要があるんですけどね……』


「へー……」


 そのために、頭からFCSが外されたんだ……


<ソラ>

『まぁ他にも特性があって、ウギャァァァァァァァ!?!??』


 って今度は私じゃないぞー!?



<キリィ>

『……これがスキャンモードけ?

 なるほど……で、』



<ソラ>

『解説する前に止めってって言ってんじゃんんんんんんんん〜ッ!?!!』


<オルトリンデ>

『おうゴラ黒いのコラァ!?!うっさいんじゃクソボケゴラァ!??

 それ面白い思ってやっとんのかボケカスコラァ!?!』


<キリィ>

『というか、お前のスーツなんのために生き恥晒してると思うとるんじゃ?

 そういう聴覚過敏な奴用にも使える便利なノイズキャンセラーついとるじゃろ。

 ワシら強化人間(プラスアルファ)はパッシブで使えるもんじゃけど』


<オルトリンデ>

『せやったわ、ナイスや黒いの!!後でお好み焼き奢ったる!!』


<ルキ>

『ねぇこれ起動どうすりゃいいんだっけー!?』


<ソラ>

『ノイキャンヘッドセットつけるまで止めてェェェェ!!』


 …………感覚が鋭いっていうのも考えものだなぁ、なんて思いながら、悶絶する3人がなんとか落ち着くのを見るだけなのであった。助けろ?どうやって??



<ソラ>

『ハァ……ハァ……まだ耳が痛い……』


<キリィ>

『全員無事か?

 じゃ、ホノカァ、インペリアルの二人ィ、スキャンモード起動してみぃ?』


「あ、了解」


 というわけで、スキャンモード。


<キリィ>

『もう耳が聞こえとるなら聞きたいんじゃけぇの、

 ソラばあさん、このスキャンモードもしかして一切の攻撃行動出来ないんけ?』


 え?

 まさか、と思ってライフル持ってる手を動かして見たけど、本当だ!照準も出ないし、トリガーも反応しない!


<ソラ>

『それはちょっと正確じゃないな。

 ブーストチャージは叩き込める』


「けど、火器は使えない、ってことか」



<ソラ>

『これが今回一番の変更点さ。

 スキャンモードは、頭部の演算能力を移動と索敵に回すために、独立したFCSコンピュータと腕部武器用のエネルギー系統を一時停止させるんだ。


 デメリットは、この通り蹴りぐらいしか攻撃ができないこと』



<アウローラ>

『メリットは周囲の状況把握ができること?

 にしてはデメリットがデカすぎるけど』


<ソラ>

『ちなみに私が作ったAI社の主力商品のリコンちゃんと合わせると、物陰の相手も見えるしスキャンできるよ?』



 ほー、じゃあリコン発射!

 お、物陰になんかいるじゃん?

 情報によると、MW?ほんとかなー?

 なんて思いながらブーストで飛んで確かめるといた〜♪


「でも戦闘モード画面でも、リコンちゃんで分かるしなぁ。

 それにこんな情報あっても……あれ?」


 ふと、スキャンモードで画面を見ているとある違和感が…………


 あれ、今ブースト使ってるよね?

 これって……?



<ソラ>

『とりあえず、これで一応は説明終わりだね。

 FCSの特性、スキャンモード。

 これらが、一応の新しいeX-Wの変更点だ。

 一旦戻っといで?次の準備をしよう』



 ……うーん、もしかしてとは思ったけど、これは気のせいかな?


 まぁ、今はいっか……戻ろーっと。




           ***



 てなわけで、一旦機体を降りてみんなのところへ。



「しかし、これは大変なことになったかもしれぬぞ!

 むむむ……単なる後付け装備ではないとは思っていたが、生きた資料を見ただけでも相当に変更が多い。

 我がインペリアル正規軍(リッターオルデン)がいかに精鋭揃いといえど、事実上の全機種転換ではないか!」


 ネェロさんがうんうん唸りながら腕を組んで言う。

 そうだよね、私も散々言われたけど、普通の人はちょっとパーツ変わっただけでも頭がこんがらがるんだもんね。

 私は普通の人よりアホだけど、アホなりにeX-Wが上手いせいで忘れがちだけど、人は一つの戦い方しか出来ないんだ。


「となると、我らロイヤルは一刻も早く我が軍に合ったFCSを選定し、同時にそれらを使用した場合の特性と問題点を把握し、マニュアル化する必要があるわけか……

 母上、泣いていいか?」


「インペリアルの女が泣いていいのは3回だけですよ。

 eX-Wで負けて生き残った時、プロポーズされた時、子を腹から生み出す時、それだけです」


 強いなティーリエお婆さん。車椅子の上でもさすがは私のアンジェおばあちゃんの知り合いだ。


「……傭兵の意見で恐縮やけど、まぁやることは簡単なんじゃないですのん?」


 と、リンちゃんが片手をあげてそう言う。


「と言うと?」


「幸いっちゅーか、ウチらはそうするつもりなんですわ。

 今あるFCS一個一個積んで、試しに戦って、手前に合うのを見つける。

 それしかないですやん」


 おぉ、確かに。


「貴様、簡単に言ってくれるな?

 …………依頼料内ぞ、付き合ってくれるか?」


 と、まぁそうなるよねって形の答えをネェロさんは言うのだった。


「ウチはやる。

 なー、みんなはどうするん?」


「そりゃあ、初めからそうなんだし、みんなはする気でしょ?」


 うんうん、と傭兵(スワン)のみんなは全員すぐ頷く。当たり前だよ、最初からその目的だし。


「……そこの、整備士の方に質問いいかしら?」


 と、アウローラちゃんが手を挙げてそう尋ねてくる。


「何ですかね?」


「私たちロイヤルが使う分のFCSはあるかしら?」


「おぉ!

 そんなこともあるかと思って、ありますよぉ!!」


 と、パチンと指を鳴らした瞬間、ユナさんが台車で天高く積まれたFCS達を持ってきた。


「おぉ!使わせていただけるか!?」


「レンタルってことで、1個につき半額で」


「1割」


「4.5」


「2割」


「4割」


「2.5だ!」


「……3割でなら」


「よし、3割だな!」



 価格交渉の末、ソラさんとネェロさんが握手をする。


「では傭兵(スワン)達よ!今から、お互い自機のFCSを交換しつつ模擬戦をしようではないか」


 と、ネェロさんの言葉と共にそそくさと静かだったアンネリーゼさんとお姫様がこっち側にやってくる。

 一応傭兵(スワン)だもんね。



「……隊長、彼女らへの発言いいですか?」


「お、フィリアか。堅苦しいぞ、発言権なんぞ縛る気もない」


「では……」


 と、フィリアさんがこっちに何か話があるらしい。


「さて、傭兵(スワン)達。

 なんとなく感じているだろうが、隊長達は置いておいて、私とアウローラ以外の仲間はお前達のことを嫌っている」



 ……まぁだよね。

 視線でわかる。


「だからこそ、容赦しないで演習にしたい。

 提案なんだが、お互いの陣営で何人かのグループ、あるいは一対一で戦う形式での戦いをしよう。

 そうだな、こちらは我がインペリアルとしての誇りを賭けて勝負しよう。


 負けたら下着で『私はダチョウです、ガーガー』と言いながら、この演習場の外周三周をしよう」


 うわ、マジか!?

 ここの外周、eX-W用だからめっちゃ広いよね!?

 建物もほぼ地下だし!!障害物抜いても確か数キロは……!


 しかも、相手はダチョウが相当嫌なのか、ピリピリした空気を出し始めたぞ……!


「え、じゃ、じゃあこっちが負けたら同じく……?」


「……それじゃあつまらないんじゃあないかしらぁ?」


 と、一応こちら側になったアンネリーゼさん、すっごいイタズラっ子みたいな顔でなんか言う。


「なんじゃお嬢様、そのやべー笑みは?」


「ねぇ、知ってる?

 ダチョウってね、インペリアルのeX-W部隊の酷ぉ〜い蔑称なのよ♪

 傭兵(スワン)に襲撃でよく負けるだの、依頼した方が安い金食いダチョウだのって言われてたりするの。

 酷い話よねぇ〜?」


 マジで、ってフィリアさんとアウローラちゃんに聞いたら、うんうんって頷いてきた。



「若くて新人の騎士だと、それも自称しちゃったりするんだけども、

 まぁ、実力に自負があるなら面白くはないわよね?


 じゃあ、そんな相手を負けさせた上でダチョウと自称させるなら、こちらも同じぐらい痛い目に遭わないと♪」


「い、痛い目……?」


「安心しなさい。私もエカテリーナ殿下も当然こちら側だから当然痛い目に遭いますもの。


 だから、負けたら報酬から1000cn(カネー)減算にしましょう?


 その方が楽しいでしょ?」




 !?!?!





『っしゃー!!やるぞ!!

 傭兵(スワン)、ファイッ!!』


「白鳥に必要なものは!!」


『金!暴力!セクシーさ!!』


 傭兵一同、肩を組み合って円陣になってお互い鼓舞していた。




「……色々ありがたいな」


「まったく、あの姉の血筋だねアンネリーゼ」



 依頼人が安く済ませたいのはどこも同じさ!

 余計な事を言った本人にちょっとムカつ気はあるけど、要は勝てば良いんだ!!


 合うFCSを探して、一個無料でもらう!

 そして勝って減算なし!!



 簡単な依頼だこのヤロー!!!!




          ***

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