東京メトロ浅草駅ダンジョン 10
もう少ししたら抱えてでも進んで出口の先を確かめよう。
『やれやれ、なんだかんだ言いながらやっぱり相棒も目の前のモノに興味津々だったのだよ。ボクをこんな風に抱えてまで先を急ぐだなんて少々余裕が無さすぎやしないかい?いやなにその興味関心に否定的な事を言いたい訳ではないのだよ。ボクは研究者で相棒は公共の身とは言え未知に挑む潜行者だ、その行動理念に興味や関心がある事はむしろ良い事なのだよ。我々の行動理念は良くも悪くも行き着く先は結局はそこだなのだよ。さあ相棒これで分かっただろう?今すぐボクを降ろして欲しいのだよ。先ほど座っていた場所を離れる瞬間に珍しそうなモノがあった気がするのだよ!後生だから!』
「脇がうるさい。」
百合に行くぞと声を掛けてみれば微動だに動かなかったので、俺は痺れを切らし周辺を片付けて彼女を脇に抱え移動を始めたのだが…。
いざ動き出したらこれである。
ジタバタしながら抵抗する様はまるで子供の様だ。
これが日本を代表するダンジョン研究者の姿か…。
元々小柄で非力なので抵抗は全く気にならないが、成人女性でこれだとかなり不安である。
対策本部の部隊からも何人か護衛を派遣するべきだろうか?
それと、傍から見たら俺が子供を誘拐している様に見えるので封鎖しておいて本当に良かったと思う。
この現場だけ見たら完全に事案案件だし、写真でも撮られてたら今まで築いてきたダンジョン対策部隊のイメージがガタ落ちするところだった。
そんな事になったらイメージ向上に日々尽力してくれている白金とその部下達である第五部隊の者達に示しが付かない。
そんな事にならなそうで本当に良かった。
「帰りにまた寄ってやるから少し我慢してくれ。ほらもう出口だぞ。」
『ブー!ブー!』
「本当にどうしたんだ?」
研究が煮詰まったり過度にストレスがたまった時など時折幼児退行する事のある百合だが、今回は特に酷い気がする。
その事に何とも言えない違和感を感じつつも洞窟の出口を出る。
そこには植物が所々に生えた岩肌に囲まれ上空から日の光が降り注ぐ神秘的場所に、透明で美しい湖が広がっていた。




