稀代の天才 黒川 百合 10
俺の右手を握る彼女の左手の薬指に例の指輪が嵌められていた。
そこに嵌まる指輪の意味を知らない程無知ではないし鈍くもない。
しかし今はその事に触れている場合では無いので、申し訳ないが話を進めさせてもらう。
「今までのやり取りでその指輪が自分で取る事が出来ない物である事は何となく分かるが、俺が取ってみてもいいか?」
「察しがいいね。まさしくその通りなのだよ。まあ、自分で取れたらこの様な状態にはなってなかっただろうがね。よろしく頼むのだよ。」
百合の許可が下りたので指輪に触れながら彼女の手を取り、指輪を外そうとした瞬間俺は悪寒を感じた。
彼女も感じたようで、顔を青褪めさせ驚いている様子だ。
「困ったな。どうやらこいつは百合が気に入ったらしい。簡単には離れてくれそうにないな。」
「何てことだ、これでは不便でしょうがないのだよ。この感じ呪いの一種だろうね。ここまで強そうなのは初めてなのだよ。」
「…そうだな。」
百合は高い好奇心が災いしてか、今まで沢山トラブルに巻き込まれている。
呪いのアイテムが取れなくなったのも一回や二回ではない。
だが今回のアイテムは今までの物とはレベルが違う様で、ここまで強くはっきりと呪いのアイテムと分かるとなると解くのに必要なものが出てくる。
このレベルだと既存の方法で解呪出来るか分からないし、今まで使っていなかった物が必要になるかもしれない。
「取り敢えず応急処置的に魔力操作で緩和出来ないか試してみようか。」
「うむ、よろしく頼むのだよ。」
百合の左手を魔力を込めた両手で包み、指輪の内から発せられる荒く黒い魔力に同調させていく。
最初は拒絶される様な感覚があったが、波長が合うにつれてその感覚は薄くなっていく。
5分程そうしていたら抵抗は殆ど無くなり、荒さも無くなってきた。
ふと彼女の方を見ると、顔を俯かせて表情は分からなかったが、耳が真っ赤になっている。
どうやら今の状況は彼女にとってかなり恥ずかしいみたいだ。
こういう時にだけ見せる珍しい姿に苦笑を漏らしながら、俺はこの作業を続けることにした。




