元教え子 東 紅 30
彼女の精神と俺に対する感情を信じてその方法を試す事にした。
何はともあれ、この方法にはある程度集中する必要がある。
奴の動きを少しでも止めなくてはならない。
「シュッ…!」
俺は魔力を左拳に纏い、短く息を吐きながら素早いフックを放つ。
腰も入ってない軽いそれだが、それなりの魔力量と粘性を込めたので十分に伸びた拳撃を放つことが出来た。
「Bugュuaァaauaa!!」
その一撃は巨大なモンスターの上半身を一部削り飛ばし、耳障りな悲鳴を上げさせた。
叫んだモンスターは縮こまり、飛んだ体の一部は蠢き本体に戻ろうとしている。
「予想通りで助かるよ。痛いのは初めてか?」
どうやら先程の攻撃に驚いて防御姿勢を取った様子。
よく見れば厚い魔力を全身に纏い、じっと動かず過剰と言えるほど攻撃に備えている。
「そら、もう一発だ。」
先程よりも弱めに魔力を込めて拳撃を放つ。
その攻撃は弾かれたが計算通りだ。
防御出来たのが分かったからか、モンスターの口元が弧を描く。
そんな応酬をしている間に両腕と吹き飛ばした体の一部は本体に合流し、肉を混ぜた時の様なグロテスクな音と共に接合され、こちらからの追撃が無いと分かると再度左右から触手で攻撃してきた。
攻撃してきた触手を破壊、モンスターに取り込まれていると思われる人に当たらない場所を削り飛ばす、モンスターが防御に入りわざと攻撃を弾かせる、体を再生させる。
この工程を二回繰り返し、モンスターが防御し攻撃に入るまでの時間を計る。
三回目の攻防で、触手を破壊した瞬間モンスターが反射的に防御のための魔力を張った。
「思ったより早く機会が来たな。少し肌に触れるが許してくれな。」
このモンスターが素早いモンスターでなくて良かった。
高い精神汚染能力、太く大きな触手による物量の攻撃、再生能力は脅威だ。
だがその場から動くことは無く、動きや次の行動は鈍重で遅い。
このタイミングなら時間は十分に確保出来る。
俺は抱えた紅の額に指をあて、体内で魔力を練り糸状に変換する。
その魔力を指から彼女の脳内にある魔力視野に直接接続させた。




