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81.戦力

――翌日、宿屋のロビーで5人が顔を合わせ、隅の席に着いている。



ママルがユァンを睨みつけていると、ユァンが気まずそうにまた謝って来た。

「………と、とりあえず、すまんかったな、先日は…」


「二度とせぬように。何もわしに限った話ではないぞ」

「え……、あ~~………くうぅ~~…」


「ユァン。良い機会だからしっかり反省してくれ。いい加減にしないと、

人材探しの目的ですら、1人での外出を許容しがたくなる」

「わ……解った……」


「さて、では。もう聞いてるかもしれないが、私はローゼッタ、

シーグランの聖騎士だ。単刀直入に言うが、君たちをスカウトしたい」

「お主の部隊に入ったら、何をさせるつもりだ?」

「共に戦ってもらいたいのさ」

「それはそうだとして、だ。…目的はなんだ」

「……報酬だけでは、動いてはくれないと?」

「そういう訳だな。すまんが、わしらは特に金に困っているわけでもない」

「……………なるほど……、話す話さない以前に、内容次第では受け入れて貰えなそうだね。……少し待ってくれ」

「ふむ」


(こういうのは、ユリちゃんに任せといた方が良いな)



「シーグランが、グラスエスで戦をしてるのは知っているかい?」

「軽くな。グラスエスの土地を奪いたいのだろ」


「……………君たちが、この話を受ける受けないに関わらず、他言無用を約束して貰えるだろうか」

「それはよいが。単なる口約束でしかないでな。そんなにわしらを信用できる要素など無いだろ」

「……それだけ切羽詰まっていると言う事さ」

「……そうか。では約束する。聞かせてくれ」

「……グラスエスに侵攻しているのは、私達であって、私達ではないんだよ…」

「どういうことだ?」


「…………。グラスエスには、聖地と呼ばれる場所があって、神殿が建てられているんだけど」

「うむ」

「我が国はその神殿欲しさに侵攻した。その神殿があれば神聖力を高める事が出来、私のような聖騎士の力を増すことが出来るからね」


(なんかゲームっぽいな)



「だが、今シーグランは、その神殿を破壊しようとしている」

「何?」

「その破壊行動を察知したダークエルフが止めようとして、戦になっているんだ」

「ふぅむ……。お主たちは、何と戦っているのだ?」

「…………………………シーグラン。その内部だよ」


「ロゼ、それ以上はちと」

「ユァン。いや、良いんだ。……ある時を境に王室が荒れ出した。

王都自体は不気味なほど平穏なんだけどね。

それから少しして、神殿の破壊命令が出た。

国王の様子がおかしいのは勿論なんだけど…。それだけならばまだ良かった。

我々聖騎士隊がノーと言えば、そのまま国の最高戦力が動かない事になるハズだったからね」


「ハズだった?」

「最高戦力じゃなくなったのさ。今国王が操っている軍は。死体の軍勢だ」

「そういう事か………」

「……死体の軍勢などと言う話に、驚かないんだね?」

「わしらはソレについて多少知っておる」

「ほう……」

「話してくれた礼という訳では無いが、知っている事を教えるでな」

「ありがたい」


ユリはコープスについて、そしてその製造方法や、呪術師集団について話した。


「……内部に入り込んでいるのも、そいつらで間違いなさそうだね」

「そんな気がするのう」

「聖騎士隊の一部や、内政に携わっている知人に調査を依頼したが、

いずれも連絡が途絶えたんだ…。聖騎士隊まで殺される力が向こうにあるのなら。

そう思って、こうして仕事のフリして仲間を集めて回っているってワケさ」


「…………ママルよ」

「えっ、な、何?」

「何?ではない!どうするか決めるのは、お主だ」

「そ、そっか」


「君がこのパーティーのリーダーか。変わったパーティーだね」

「ま、まぁ、そうですね……えぇっと………」

「力を貸してくれないか」

「……………貸したい、とは思いますが、ちょっと今、ここから動けない事情がありまして」


ママルはメイリーの事情を、簡単にかいつまんで伝えた。


「仲間の回復を待っていると…なるほど…」


正直今は仲間って感じでもないけど、まぁそう言った方が手っ取り早い。



「……………………………では、こうしよう。私達は王都へ帰る。

闘技大会やそれ以外でも、見込みがありそうな人がいたからね、

何人か見繕って、ヴェント内で先に準備を整えておこう。

君達が王都に入ったら連絡が来るよう、門衛に話を付けておくから」

「こちらはよいが、いつになるかも解らんで」

「それでも待つだけの価値が君達にはある。そう判断した」


「えっと、ローゼッタさん」

「なんだい?」

「その、人の能力を見る魔法があるんですが、使っていいですか?」

「能力、と言うのは、スキルだとかの話かな?」

「はい。見られても良いよ、って所しか解らないので、秘密を覗くようなものではないんですけど」


「……ママルじゃったか。こちらが信頼を得たいと思っているタイミングでそれはズルいんじゃないか?」

「あ、まぁ、確かに」

(聖騎士が殺されたって言ってたから、レベル気になっただけなんだけど…)



「いや、良い、見てくれ」

「ロゼ!秘密を見れないと言う言葉も、全て信じてるんじゃなかろうな!」

「わざわざ聞いて来たんだ、私は信じるよ」

「相手の同意が必要な魔法と言う存在を聞いた事がある!」

「ユァン。それも込みでだ。彼女は今、我々を試しているのさ」


(えっ?…)


「それにね、知っていると思うが、私は人を見る目には自信がある。

そして、私はテフラ君の力しか知らないが、彼女1人だけだとしても、

見過ごせない戦力だ。もしそれを取り逃したとしたら、

ユァン。君の先日の蛮行が、少なからず影響しているとして、

私は君を恨んでしまうだろう。もし事態が悪化してしまった場合は特にね。

そんな関係はお互い望ましくないだろう」


「…わ、解った……だが俺の技は秘密にさして貰うからな…!」

「はい。それで良いです…」

(ってかジジイのはもう見てるっつの)


●人間:聖騎士:ローゼッタ=シュヴァルツァ Lv87 スキル:アタッチ 来晄 一閃 覇衝 乱花 晄輪 その他不明

シーグラン国の聖騎士

その他詳細不明



(…ちゃんと強いな…でもクァダバルで120とかだった筈だから、まぁ勝てなくても納得は出来るか)


「ありがとうございます。参考になりました。あと、お伝えしとかないといけない事が」


ママルは、モンスター化という現象についての最低限の情報と、

それを意図的に引き起こそうとしている奴らの存在を伝えた。


「……なるほど………。そういう事か…。そんな事が………。

にわかには信じられないが…いや、今の情報だけでも値千金だ」

「ロゼ、悪いが戻ったら別行動さしてくれ」

「解ってる。私が表から、ユァンが裏からだね…。

ママルさん、助かった。それでは、私たちは直ぐにでも行動に移すことにするよ」

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