42.VSサイクロプス
●モンスター:サイクロプス Lv61 スキル:鈍痛 跳躍 墜落 麻痺眼 暴打
森に住む少数種族。縄張り意識が強く、侵入者へは特に好戦的。
一個体から卵を産める卵胎生動物だが、産卵はごくごく稀で口から行う。
モンスター化している
麻痺に完全耐性 弱点:炎、雷
(なんだ?別にこんな生態とかどうでもいいんだけど…、
いや、一瞬雌とかいるのかなぁとか考えたな、そのせいか?)
「えっと、あの巨体で、飛んだり跳ねたりするスキルがありそうです、あと麻痺眼というのがヤバそう」
「なるほど」
「レベルは61、高めですが、まぁ大丈夫かと」
「私が90いくつとかでしたっけ。一対一なら負けなそうだという事は解りますが、
実際の戦闘能力の差はイマイチ解らないですね…」
「す、すみません…」
「いえっ、すみません。そういうつもりで言ったんじゃないんです…」
「あっ、いや、ありがとうございます…」
(なんか変な感じになっちゃった。しかし、マジで見た目の圧がやばい……)
足跡から想像はしていたが、クソデカいし、毛むくじゃら、
大きく丸い一つ目と一本角に、口の外に飛び出してる牙。手にした丸太。
全部マジで怖い。
視界には2体しか映らず、もう1体がどこにいるのかが解らない。
足跡も途中で無くなっていた。跳躍のスキルとかで移動したのだろうか。
だが、むしろ3体より多くが確認できなくて良かったと見るべきか。
2体とも地面に座ってリラックスしてるように見える。
「どうしましょうか…」
「ちょっと待ってください…麻痺が効かなそうで…、一撃で2体を仕留めたいんですけど、デカいせいもあって位置関係が良くないんですよね…」
「では、初手1体仕留めて、残り1体は普通に戦いましょうか」
「確かに…むむむ…」
(3体目が気になる…、それにこいつらが、もし魔力波の感知に優れてるタイプだったらめんどい。でもまぁ、めんどいと言うだけで別に勝てそうな気はする。テフラさんもいるし)
「いや、それで行きましょう」
「了解です」
「俺が魔法唱えるのを合図に突っ込んでください、レベル60超えであれば多分即死はしないと思うので、追撃か、もしくは奥の奴の方に」
「あの巨体で暴れられても怠そうですし、目の前の奴に追撃します」
「おっけ~、それで行きましょう」
「準備します。……≪空刹≫……いつでもどうぞ」
≪空刹≫は発動後、次の踏み込み時に、狙った位置へ即座に移動できるスキルだ。
転移と違って物質を透過する事は出来ないが、単なる高速移動とは違って慣性は乗らない。
「では………。≪ファストマジック:魔法効果超高速化≫≪バニシック:燃焼≫!!」
「ウグルゥゥアァァァァア!!!!」
ママルの魔法がヒットし苦しみに藻掻いている所に、更にテフラの追撃が重なる。
「≪尖裂爪≫!!!」
テフラの爪は気力の塊によって巨大化され、サイクロプスの太い首を両断する。
だが1体目の首が飛んだその時、すでに2体目のサイクロプスはテフラの頭上にいた。
(反応も動きも早すぎるだろ!!!)
「ヅァンバッ!!≪墜落≫」
2体目のサイクロプスが、上空から丸太を振り下ろすと、
物理現象では有り得ない速度で落下し、土煙が舞う。
「テフラさっ」
ママルがテフラの元に駆け寄ろうとしたとき、3体目のサイクロプスがママル目掛けて落下して来た。
武器は所持しておらず、ママルを落下の勢いのまま右足で踏みつける。
だが、悲鳴を上げたのは3体目のサイクロプスの方だった。
「ウギィアァッ!!!」
3体目は踏みつけた足を上げると、その足裏にはママルが頭から突き刺さっている。
サイクロプスはたまらず左手でママルを掴み、引っこ抜くと、力いっぱい遠くへとぶん投げた。
(最っ悪だっ!!!!!!!!アレの足裏に顔を埋めたことは勿論だけど!!!
まずい!空中で停止なんか出来ない!離される!!!)
――
テフラのクラスは【スレイヤー】つまり退治屋だ。
その性質は物理攻撃と防御、そして高速移動に特化している近接格闘型。
サイクロプスの攻撃は≪廻穿脚≫で、振り下ろされる丸太を攻撃し破壊した事によって、大きなダメージは受けずに済んだ。
「くそっ、これ程素早く動けるとは…」
(それに3体目はどこから…隠れてたのか?
ママルさんは遠投された………こいつら2体は…私が倒すっ)
「ヴアッム!!≪跳躍≫」
2体目のサイクロプスが再び飛び跳ねる。
(早い!これだ!単に上下するだけのスキルが、巨体と速度で凶悪になってるっ!でもっ)
「ズァンブァッ!!≪墜落≫」
「知ってれば、簡単に避けられるんだよっ!!」
テフラは回避に成功すると、即座にスキルを発動する。
「≪瞬爪≫!!」
サイクロプスの全身の毛を掴むことで、その巨体を高速で這う様な軌跡で移動し、
2体目のサイクロプスは全身を切り刻まれる。
その皮膚の厚さから致命には至っていないが、瀕死状態になりその場に倒れ込んだ。
「次っ!!」
テフラはそのままの勢いで2体目の肩口から3体目に飛び掛かり、
空中で≪瞬爪≫の効果が切れると、即座に次のスキルを発動する。
「≪尖裂爪≫!」
「ゲェンムァ≪硬毛≫」
サイクロプスの全身の毛が硬化し、その腕でテフラのスキルが弾かれた。
(しまった!空中に飛び出したのは失敗だった!!)
空中で一瞬無防備になったテフラに、サイクロプスはその大きな瞳を近づけた。
「ァウイダッ≪麻痺眼≫」
「ふぎっ!」
(食らった!まずい!!全身麻痺!やられる!)
「グァンズ!!!≪暴打≫」
落下するテフラに向かって、追撃のスキルが発動される。
「≪理障壁:物理結界≫!!!!」
サイクロプスが拳を振りかぶったところに障壁が展開され、
振り下ろすことは防げたものの結界は砕け散った。
「グゥオオォォオオオ!!!!」
周囲を見回したサイクロプスはユリ達を認識し、ターゲットを切り替える。
「すまないっ!!!≪獣避けの守り:獣認識阻害≫は解除された!こっちにくるでな!!!」
「くっ!皆の者!構えよ!!!!」
サイクロプスとの戦闘を遠めから眺めていた兵士達が、
バッダスの指示により即座に戦闘態勢をとる。
「やってやる!」「俺達だって!」「勝ってやるっ!」
弓兵の二人は、スキルで次々と矢を射る、
既に≪硬毛≫の効果は解除されているため、矢は突き刺さるがサイクロプスは意に介していない。
「グアッンム!!≪跳躍≫」
バリンッ!!
飛び出す瞬間、その頭上に無詠唱の理障壁を即時展開したが突破され、
サイクロプスは瞬時にユリ達の頭上へと移動してきた。
(まずい!落下が来る!!)
サイクロプスの落下に合わせてユリは≪理障壁:物理結界≫を唱える。
衝撃により結界は砕け散るが、その瞬間に無詠唱で再度展開。
結界は、2枚、3枚と砕け散り、バッダスが見上げる顔の直前、5枚目が砕け散ると同時に、勢いを失ったサイクロプスは地面に着地した。
ただ踏まれるだけでも危ないところだが、それは失速も相まって全員回避している。
「かぁかれぇ~~!!」
バッダスの号令の元、兵士全員が攻撃を開始した、
ダメージを与えているのは確実だが、サイクロプスは動きを止めない。
前衛の兵士2人へ放たれたサイクロプスの拳を理障壁で防ぎ、
続く踏みつけも理障壁で防ぐが、真下に居る兵士を守るため解除できず、次の障壁が出せない。
片足立ちになっている所に、兵士達が剣を浴びせるも、
サイクロプスの腕が救い上げる様に振り回され、兵士達は地に転がった。
そこに追撃のスキルが唱えられる。
「ガゥァ≪暴打」
ボギュッ!!!!!!!!
サイクロプスの物理攻撃スキルが発動する瞬間、
全速力で突っ込んできたママルが、体当たりでサイクロプスの心臓を貫いた。
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
「…………や……」
「「「や、やった~~~~~!!!!」」」
ユリは、はしゃぐ兵士たちを尻目にテフラの元へ駆け寄りつつ声を上げる。
「ふぅ…。焦ったわい。お主たち!怪我はないか?!お~~い!!ママル~!!どこ行った~~~?!!」
少しするとママルは小走りで駆け寄って来た。
「いや~~、当たってよかった~~」
「テフラが麻痺を食らった、解除できるかの?」
「多分ね。えっと、≪リリース:呪力反転≫≪パラライズ:金縛り≫」
(おっ、呪術の麻痺じゃないけど解けた…、外付けされた物かどうかが重要って事かな)
外付けされたバッドステータス自体に、その発生手順は関係ない。
呪術についての知見を深めることは、きっと役に立つはず。
「っ。助かりました…。不甲斐なくて申し訳ありません」
「いやいや、そんな事ないです。結局2体はテフラさんがやりましたし」
「だな」
「ありがとうございます」
その後、倒れてる2体目にとどめを刺し、
それぞれ死体をアプライで確認してみると、3体目だけ少しレベルが高く、
≪硬毛≫と≪森林迷彩≫のスキルを追加で持っていることが解った。
(全然頼りになる感じ出せなかったな…)




