56話 交渉の行く末
「ここが城の食糧庫になります」
あれ?
無事に案内されてしまった。もう三暴れくらいは覚悟してたのに。
「意外そうなお顔ですね」
「ええ、確実にタダでは済まないと思っていましたので」
「わははは。ご安心くだされ、己共の力量はわきまえております」
ん?
「意外でしたか?」
「ええ」
「今回の城攻め、かなり手加減されているでしょう?」
えーと。
「隠されなくても結構。あなたの戦い方を見て入れば一目瞭然ですから」
「一目瞭然ですか」
「あなたの攻撃には一切の殺気が感じられませんでした。その証拠に被害が出たのは防壁の一部と城のみで、街に一切の被害は出ていませんし、こちら側には死者もいない。兵士相手の時はあの不思議な弾の威力を調整していたでしょう?」
……。
「沈黙は肯定とうけとりますぞ。ですから大半の兵たちは気づいて適当にやり過ごしていましたよ。まあ、先走って海に浮いておる一部の阿呆もおりますが」
そういや騎士団も第二だけしか動いてなかったな。
「と、おしゃべりはここまでですな。どうぞこちらが食糧庫になります」
おお、結構な量が保管されてるな。
って、あれ? たしか流通経路が遮断されてて、物資が不足してるって話じゃなかったか?
「どうかされましたか?」
「いえ、物資の流通が滞っているというお話を聞いていたので」
「こちらの食糧はアッキレーオ様がお戻りになられる際に輸送してきたものです」
「ということはこの街の物資不足も解消されるということでしょうか?」
「徐々にという所でしょうか。アッキレーオ様は国をないがしろにする方ではございませんが、民に優しいという方でもございませんので」
「まずは身内と近しい者から?」
「でしょうな。外部の大きな問題がなくなりましたゆえ、これからは内部の戦いが激化していくことになりますので」
支持基盤の強化は必須ってことか。
「このようなことを言っては問題なのかもしれませんが、これからのこの国はファウスティーナ様には荷が重かったかと」
「たしかに。腹芸や足の引っ張り合い、権力闘争等にはあまり向いていないかもしれませんね」
「はい。アッキレーオ様がどこまでお考えかはわかりかねますが、結果としてファウスティーナ様を国から遠ざけたアッキレーオ様の判断は間違いではなかったかと」
まあ、この国に残れば否が応でも政治利用はされるだろうしな。
「だからといってアッキレーレオ様はじめ複数の者たちの無礼が許されるわけではございません」
ん?
「救国の英雄殿、王と民に代わってお詫びいたします。何かの足しになるとも思えませぬが、この宰相めの首にて、この一件、平にお許しいただけませんでしょうか?」
え? このごっついおっさん宰相だったのか。力量がとか殺気がとかいうし、見た目的にも武官かと。
そして、なにこの急展開。
「頭を上げてください、宰相さん」
「いえ。首をはねられるか、お許しをいただくまでは」
えーと、これどうしたらいいんだ?
とりあえず首をはねればいいのか?
いやいや。さすがにそれはない、それはないな。
って、なるほどね、そういうことか。
「宰相さん」
「はい」
「単刀直入にお伺いします。何をお望みですか?」
「この国の安全を。救国の英雄殿との同盟。もしそれがかなわぬのならば、10年、いや5年で構いません。相互不可侵のお約束をいただければ」
アッキレーオさんの足場が固まるまで、これ以上の騒ぎは避けたいってことか。
その為に首を差し出すのは安いものってか? まあ、とばされないって計算はあるんだろうけど。
「その為にも、まずはこちらの非を許していただかなくてはなりませんので」
「それがあなたの首であると?」
「はい、救国の英雄殿は領主殿でもあると。となればこれは国と国の問題。それなりの者が責任をとらねば示しがつきません」
ここで俺が首をはねれば今までの無礼は水に流せる。そうなれば俺の宣戦布告の内容もチャラ。
少なくとも表向きには、今すぐこの国とやりあう大義名分はなくなるってことか。
これ、もしかして外交イベントか? まだ狭い領地と屋敷と一桁の住人しかいないのに。
村とも呼べない開拓地の領主と、城も構えるような大国との外交イベントとか、その辺はさすがゲームって感じだな。
さて、それはそれとして、どう返したもんかね。
ゲームとはいえ、生首なんざもらってもこれっぽっちも嬉しくないし、なにも無しで許すってのもな。今後なめられ続けそうだし、今後があるのかわからんが。
…………。
「わかりました。宰相さんの首の代わりに別の物をいただけませんか?」
「私の首の代わりですか?」
「民家を建設する建材を融通してもらえませんか?」
「建材…ですか」
「ええ、水中で使える建材というものが私の領地にはありませんので」
「わかりました、ただ城の補修などでかなりの量が必要となりますので、多くをお譲りすることは難しいかもしれませんが」
うーむ、さすがに腹黒いな。さらっと値切ってきた。
「いえいえ、さしたる量ではありませんよ」
簡単には値切られてはやらないけどな。
「宰相さんの首と同価値程度の量で構いませんので」
御返しに宰相さんが提示した公式をそのまま利用してやるよ。
宰相さんの首=国の命運だ。どうする? 宰相さん。
「私にもあまり時間がありません。今すぐ答えをいただきましょうか?」
しかも即断即決迫って、こっちの判断を鈍らせようとしやがって、御返しだよ。
「それは……」
もう一押ししてみようかね。
火力おさえ目のボールを作ってぇ……地面に踏みつける!
「しょ、承知しました。直ぐに資材置場へとご案内させていただきます」
「ありがとうございます。食糧庫での作業が終わり次第おねがいします」
とりあえず、これで新しい住民の食と住はなんとかできたかな。
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