八十七話 どっちをとる
三度の飯より、スカイとレメのエロス話(彼女の勘違い)が好きなレンゲは、久々にご馳走を頂くためにスカイを探していた。
昨今はスカイがすっかりと人気者になってしまったため、仲の良かったレンゲもなかなか話しかけるチャンスがなくなっていた。
今日は休みだからスカイも暇しているだろうと思って探していると、思わぬところでスカイを見かける。
ソフィア・ナッシャー、王女様にしてクラスメイトでもある彼女。その彼女の部屋の前でスカイを見かけ、そして一緒に中へと入っていった。
「レメさんという人がありながら!?」
ショックで一日自室に閉じこもるレンゲだった。
この情報を墓場まで持っていくか、それともレメに真実を打ち明けるか。
悩みに悩んで、レンゲはレメに真実を打ち明けることにした。
レメの部屋へとやってきて、沈痛な表情で述べ始める。
「あなたに真実を話さなくてはなりません。ついて来てください」
何のことかさっぱりだったレメだが、強引にレンゲに連れていかれた。
その頃、スカイとソフィアは王城から戻って、ソフィアの部屋で一緒に料理を食べていた。
「うめえ!うんめえ!ちょー、美味しいな、これ!」
ソフィアの料理をどんどんと食べ進めるスカイ。
ここまで喜んで貰えるならソフィアも悪い気はしない。
次々と食べ進めるスカイにおかわりを差し出すのだった。
食べ終わった頃、ソフィアの部屋の扉がノックされた。
ちょうど生徒会長のもとに行こうとしていたので、スカイはそれに合わせて出て行こうと扉へと向かった。
開けると、なんとそこには怒った顔のレンゲと、戸惑った様子のレメがいた。
「ん?どうした?」
ソフィアも何か、と続いて出てくる。
3人が揃ったのを見て、レンゲがいよいよ勘違い愛憎劇の開幕を告げた。
「スカイ、あなた何をしているのかわかっているの?」
「ああ、もちろん」
ご飯を食べていただけだ。
ソフィアも当然ご存知。
部屋の中からシチューのいい香りがしたので、レメもなんとなくご飯を食べていたのだろうと想像がついた。
「レメさんと言う人がいながら、ソフィアさんともそういうことをして!」
「仕方ないだろう。食べたかったんだから」
「言う!?言っちゃう!?それ簡単に言っちゃうのね!」
ご飯を食べていたことを言っただけで、なんでこんなに怒られるのか理解に苦しむスカイだった。
「だって食べたいだろ。二人とも美味しいし」
料理がね。少し言葉足らずである。
「それが問題だっていうのよ!いいわ、この際やってしまったことは見逃してあげる。けどね、ちゃんと一人を選んで頂戴。どっちがいいの!?男ならはっきりしなさい!」
「どっちって言われても。両方美味しかったしなぁ」
「どっちなのよ」
面白そうなので、レメも追随して聞いてみた。
「ハッキリ言ってくれて構わないわ。今後の上達につながるし」
ソフィアも受けてたつ構えだ。
「じょ、上達!?」
弾劾しに来たはずのレンゲが徐々に興奮しだしてきた。
「うーん、じゃあ言うぞ」
「ごくり」
分かりやすくレンゲが続きを欲しがった。
「正直に言うと、レメの方が美味しかった。濃厚で、それでいて繊細なんだよな。何度でも食べたくなるっていうか。飽きないんだよなぁ」
「け、結構ストレートに表現するのね」
「わかりやすくていいだろ?」
「じゃあレメさんの勝ちね。今後はレメさんだけにしておきなさい」
無事解決。レンゲの心に平和が戻って来たかと思いきや、そうはならない。
「ただなぁ。ソファアのも違ったうまさなんだよ。なんていうか初々しいっていうか、一生懸命さが伝わってくるというか。今後の上達も楽しみな感じだしな」
「今後!?何回いただくつもりなのよ!」
「そりゃ出来れば何回でも。今日も5回もいただいた」
おかわりを。
「5、5回!?そ、その割には元気そうね」
「まあな。俺って結構無尽蔵だから」
「ま、まあそうだとは思ってたけど、改めて聞くと凄いわね」
興奮して顔が赤くなってくるレンゲ。呼吸も少し早くなってきていた。
「レメさん、もっと怒ってもいいんじゃない?5回もしているのよ!この男」
「うーん、5回はやりすぎよね。私のときは3回だったのに」
レメの時は3回だけおかわりしたスカイだった。そこにはレメも少し不満。
「レメは優しいからな。またいつでも食べさせてくれるだろうという安心感がある」
「あの男レメさんを安く見てるわ!」
「そうね。しばらくお預けね」
ショックを受けるスカイだったが、まあレメのことなのでまたそのうち作ってくれるだろうと高を括っている。
「まあどちらにせよ、俺はただで食べさせて貰ってる時点で、本当に感謝してるんだ。毎回毎回美味しく頂いてるのに、お金もかからないとはありがたい限りだ。金欠だから、なおのことありがたい」
「あの失礼男、お金の話をしだしたわ」
「まあな、普通は金を払わないといけないダメだろ?その点二人はただなので最高だ」
「ちょっと待って。あんた普段お金を払うところにも行ってるの?」
「一日三回」
「絶倫かよ!!」
「最近は友達も出来たし、一緒に楽しく頂いている」
「ど変態仲間の情報なんていらないのよ!」
「具を分け合ったりもするぞ」
「いらねーっての!!」
呆れと怒りと、いろいろ混ざりあってレンゲは感情が爆発しそうだった。
「あんたね、あんまりそういうお金払うところは行かないようにしなさい」
「そう言われても金を要求されるんだから仕方ないだろう。我慢できるものでもないし」
「出来るわよ!レメさんとソフィアさんのを盛りだくさん頂いているのに、まだ足りない訳?」
「えー?そりゃ足りないだろ」
「我慢しなさい!ね、レメさんとソフィアさんもそう思うでしょ?」
ちょっと言い渋るレメ。
「な、なによ」
「えーと、我慢できないかも?女子は体系のために結構我慢しちゃうけど、男子はそういう人も少ないし」
「甘やかしちゃダメよ!」
「あ、はい」
なぜレンゲが怒っているのか不思議で仕方のない三人だった。
「いいわね、スカイ。相手は一人!お金は払わない!」
「お金を払わないと捕まるだろ」
「行かなきゃいいのよ!ったく、王都の貞操観念は狂ってるわ。私がしっかりしないと!!」
王都の貞操観念を正すため、一人燃えるレンゲだった。




