二日目の夜
アレを持ち運ぶとなると、荷車とか欲しい次元だ。
ゲートに荷車を持ち運ぶべきだろうか?
かと言って、前回の海フィールドに出たら荷車を引いて行くのが面倒そうだし……。
『もう少し調査して何のフィールドがでやすいかを特定出来るまでは避ける方が良いと思います』
「そもそも吹雪いている訳じゃないしね」
『ええ。とりあえず出口を目指して進んで下さい。道中に何かありましたら私達が援護しますので』
なんて感じに俺達は進んで行った。
道中で他に、マルーンエンブリオ、グレープフェアリーと言う魔物と遭遇して撃破した。
マルーンエンブリオは空中に浮かぶ……球体だった。
リーゼの話じゃ上位種にホムンクルスという魔物がいるそうで、飼育魔として育てると成長と共に素早く変化する出世魚みたいな魔物らしい。
グレープフェアリーはー……ファイアエンジェルみたいな光る綿埃みたいだと思ったけど、人っぽいパーツを持ってる虫だった。
少なくともゲームとかで見る様な可愛い生き物じゃない。
虫人間ってわけでもないし……説明が難しい。どっちかと言うと昆虫だ。
マルーンエンブリオは動きが鈍くて仕留めやすい。魔法攻撃を放ってくるけど、一直線の攻撃で避けるのは簡単だった。
ただ、リーゼ達の話じゃ早めに仕留めないと自爆とかするらしくて厄介らしい。
グレープフェアリーの方は合成剣の火に近寄って来る。熱を求めて近寄って来る習性があるっぽくて動きは早くても仕留めやすかったかな。
ぶっちゃけると海よりも戦いやすい魔物なので助かる。
あっちはあっちで弱かったけどさ。
その分、経験値の入りが悪い。
Lv25の……10%くらいだ。
次に戦利品と落ちてた品々だ。
スクロールはヒールスクロールLv5、残弾が……合計8。
『アイスニードルLv5』残弾3。
『スノーウォールLv5』残弾4。
『バーンフレイムLv5』残弾3。
『スピードアップLv5』残弾3。
同じスクロールが何個か拾ったのでヒールは多めだ。
次に落ちてた物かな。
ついでにロザリーの進言通りにデコボコ合成剣の火の加護で氷を溶かして発掘した物とかだ。
『チェーンロッド』★★★ 付与効果 打撃効果上昇 鱗破壊
『アイアンアーム』★★★ 付与効果 打撃耐性 風耐性
チェーンロッドは鎖の付いた鈍器で、重歩兵の職業アビリティの鈍器マスタリーと相性が良く、持った瞬間……凄く手に馴染んだ。
ただ、遭遇する魔物とかで試した所、武器の威力の関係で合成剣も負けていない。
……振り回した感じだと、こっちの方が使いやすそう。
アイアンアームは今付けていた河童の腕輪の上に付けた。
アーマーマスタリーの効果が作動して軽く感じる。
何か装備が揃って行くだけで着実に強くなってきている様な気がしなくもない。
他は錆びていたり、今使っている装備品よりも弱そうだったので、今後の捜索の邪魔になりそうだったのでおいて来た。
ブロンズアームとか落ちてても使う気はね……。
尚、毛皮のケープが埋没していたので、ゴジョの為に持ってきた。
炎の加護が掛った合成剣の熱で乾かして、加工してゴジョに付けさせる。
重たいだろうが、寒いよりはマシだろう。
「ク……クア」
ゴジョが重たそうにしているけれど、温かさを感じてほっこりしている。
で、次は魔物のドロップと魔結晶かな?
魔結晶はアナライズリングに収めてストック中。
ドロップの方は、スノーホワイトリトルデビル、マルーンエンブリオ、グレープフェアリーでそれぞれ。
スノーホワイトリトルデビルが未鑑定箱を二個、スクロールを数個(スクロールの項、参照)で専用ドロップ未確認。
マルーンエンブリオはエンブリオアックスと斧を落とした。
『エンブリオアックス』★★★ 付与効果 ファイナルバースト
リーゼ達に聞いたら絶対に使っちゃいけない武器らしい。
話によると同様の付与効果のある武器があるらしいのだが、強力な一撃だけど、武器が壊れると同時に使い手の魔力と体力をごっそりと削り取る必殺攻撃を放つ事が出来るらしい。
斧としての性能は……かなり微妙。
斧の部分がエンブリオの膜で作られていて殺傷力が無い。
付与効果を作動させた時に破壊力を得る武器だとか。
他にも何か落とすかもしれないけど、まだドロップを確認出来ていない。
グレープフェアリーはフェアリーの脛当てって言う……マッチ棒みたいな防具が出たかな。
『フェアリーの脛当て』★★★ 付与効果 敏捷上昇(微)
アクセサリーとして、紐で結んでキーホルダーに加工したって所。
「うーん……何か微妙な物が多いなぁ」
薬草の類は雪に隠れて見つけづらい。
山の方へ行けば鉱石とか取れるだろうか?
ぶっちゃけると鍛冶とかで新しい武器とか作ってみたい衝動にかられるけど、運よく火山フィールドとかに行かないとその辺りは見つからないか。
なんて思いながら歩いていると、雪をブロック状に固めて作ったっぽいかまくらを発見。
誰か居るかと思って調べたが何もいなかった。
若干、劣化している様に見受けられるので、廃屋と同じく、使い手が居なくて破棄された物だと思われる。
『今日はここで休んだ方が良さそうだね』
レイオンの言葉にリーゼ達も頷く。
何だかんだで海フィールドの捜索で午前中が潰れ、雪原フィールドの捜索で大分日が傾いて来ている。
風をある程度避けられるし、休むには確かに良さそう。
フェーリカのリュックで暖をとっていたゴジョをかまくらの中で毛皮のケープを加工した物を敷いて座らせる。
かまくらの前で焚き火をして、石とかを熱して毛皮で包んでかまくらの中で暖をとって寝るとしようかな?
「ムウ?」
寒さからフェーリカがゴジョを抱えて、焚き火の前に座る。
『セイジさんが出発して二日目の夜ですね』
『リーゼ、その言い方だと早くセイジに帰ってきてと、催促してるみたいよ』
ロザリーが茶化す。
うん。俺もそう聞こえた。
俺も早く帰りたいとか思っちゃうし……こう、ずっと話をしながら探索しているの恋しく思ってしまう。
「ムウムウ」
ちなみにフェーリカは現在Lv18。
思ったよりも上りが悪くなってきた気がする。
まあ、今までが上がり過ぎていたんだから良いのかもしれない。
ゴジョはもうLv99になって止まっている。
「クアアア……」
『ゴジョは寒がってるね』
「河童だし……きついかもしれない」
両生類っぽい河童に雪原は厳しいだろう。
俺もブロンズアーマー(下)とか金属製の装備を付けているから寒さが直に来るし。
まあ、赤幼妖孤の予備の毛皮を下に付けているからどうにかなってるけどさ。
それでも寒い。もう少し狩っておくんだったな……国に提出した所為で殆ど無くなったし。
「ムウ」
ふかふかのフェーリカの毛皮が温かい。
添い寝して、暖になってくれる。
いると便利だなぁ。
『うう……フェーリカ。君がいない二日目の夜……セイジ、ゴジョ、君達が羨ましい、恨めしいよ』
「ム……ムウ」
リーゼよりもレイオンの方が危なそうだ。
さすがに三日目には帰ろうかな……。
色々と判明した事も多いし。
帰る時に石材を調達しておくべきだろうけどさ。
ま、三日目の夜になりそうな時間に会話を切りだしてみるか。
なんて思いながら、その日の夜……ゲート内は相変わらず明るいけど、夜は過ぎて行ったのだった。
食事に関しては、ゴジョとフェーリカが満足している。
なんとなく……またゴジョが大きくなっている様な気がするけど、気にしない様にした。




