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雪原

 そうこうしている内に視界が一瞬で切り替わる。 

 ずぼっと足に冷たい何かが当たって埋まる。


「クアアアアアアア……」


 ゴジョが凍える様に声を発した。そりゃあ全裸だし……。

 辺りは一面の白一色、先ほどの常夏みたいな気候から一転して極寒と表現するのが一番と思わしき……雪原が俺の視界を埋め尽くしていた。


 ★★★の七級雪原4階層フィールド

 アナライズリングを確認すると、そう表示される。


「雪原フィールドみたいだ」


 吹雪いている訳じゃないけど、遠くに雪山みたいなのが見える。

 林みたいな森もあるしー……うん。行った事無いけど雪国って感じだ。


『雪原フィールドですか……傾向として食料が落ちている事がありますね』

「食料?」

『何故か保存食……干物とか干し肉等が見つかる事があります。代わりに薬草類の植物は期待できないですね』

『無い訳じゃないけどね。この地形でしか手に入らない物もあるんだよ』


 うーん……?

 よくわからないけど、そう言った法則があるってことね。


『武具の類も期待できるかもしれません。どちらにしても寒いので十分に注意を』

「クアアアアアアアア」

「うん。ゴジョが絶賛凍えてるよ」


 俺は凍えてどうにか寒さから逃げたいゴジョを抱き上げる。


「クアア」


 ホッとしてるけど、今の体勢だと俺が戦えない。


「ムウ」


 あ、フェーリカがゴジョを抱きかかえてくれるっぽい。

 全身毛皮のフェーリカの方が暖かそう。


「頼むよ」

「クア」


 さすがにゴジョもフェーリカの方が温かいのを理解しているのか素直に応じる。


「ちょっと狭いし荷物でゴチャゴチャしてるけど、リュックの中に入る事も考えてくれよ」

「クア!」


 ゴジョはフェーリカに抱きかかえられた後、肩車状態でフェーリカの肩に足を乗っける。


「とりあえず、手頃な木を探して枝で簡易的なかんじきを作ろう。戦えなくは無いけど、進みづらい」


 靴の底に付ける簡易的な物でしかないし、すぐに壊れかねないけど、足が埋まる様な場所で満足に進めるか些か不安だ。

 まあ……動けない程、深く足が埋まる事は無いけど、滑って転ぶ可能性もあるんだから注意しておくべきだろう。

 転んでいるうちにフルボッコにされたら最悪だからな。


「ムウウ」


 で、フェーリカが雪の中を何か軽快に歩いて行く。


『フェーリカは雪の上を歩くの得意だもんね』

「ムウ!」


 あー……確かに、寒い地方の生き物っぽい毛の生え方してるもんな。

 足跡がそこまで沈んでない。

 とりあえず手頃なしなる枝を使ってかんじきっぽいものを自作して靴の下に張りつける。

 まあ、一応の保険だ。


『枝とかで即席のソリを作る手もありますが、今は進んだ方が良いですね。戦い辛いと感じたらオイルタイマーで撤退を考えておいてください』

「了解」


 そんな訳で俺達は、雪原フィールドを進み出したのだった。



 かんじきを付けたお陰で雪の中でもそれなりに動きやすくなる。


「確かに……保存食が何故か落ちてるな」


 魚の干物や缶詰が落ちてる。

 賞味期限とか大丈夫か不安になる。

 見た感じ、干物はまだ食べる事が出来そうだ。

 缶詰って確か、一応は消費期限を過ぎても食べる事が出来るらしい。


 リーゼ達に缶詰を見てもらった。

 まあ、さすがに缶詰くらいはあるらしいけど、それなりに値が張る保存食らしい。

 どっちにしても食料に関しちゃ困って無い。

 遭遇する魔物とかを解体したりして食べる事は出来るしね。


「お?」


 雪の中に道らしき物を発見。

 足が埋もれずにあんまり滑らずに歩けそう。

 とはいえ……そこまである訳じゃない。

 なんて言うか、街道だったのが人が居なくなって廃れたけもの道になったって感じに疎らに道がある感じ。


『セイジさん、前方に敵影……二匹いる様です。確認をお願いします』


 リーゼの指示で、目を凝らして確認する。

 スノーホワイトリトルデビルという、白い一頭身の……バイキンをイメージした生き物みたいな魔物がこっちに気付いて接近してくる。

 デビルって事は悪魔って事なんだろうけど、なんとも……ゴジョと似たファンシーな外見だ。

 スノーホワイトリトルデビルが視認出来るほど近づいて来ると同時に一匹が銛をこっちに向けて突撃して来て、もう一匹が魔法を唱える様に立ち止まって何やら儀式を始めている。

 何が飛び出すか分からない。


「行くぞ! フェーリカ達は……」

「ムウ!」

『まだ早くて無理だと思うよ』


 うーむ……とはいえ、フェーリカの動きが海の時よりも対応でき始めている様に見えなくもない。

 かと言って危ないか。


「クア!?」

「とりあえずゴジョは援護射撃をお願いする!」

「クア!」


 俺の指示にやっと出番だとばかりにゴジョが水筒の水を口に含み、寒さでかじかみながら動かず詠唱をしているスノーホワイトリトルデビルに水弾を拭きつける。


「キヒ!?」


 弾速は遅いが受けたら多少のダメージを受ける事を懸念しただろう後方のスノーホワイトリトルデビルが詠唱を中断して横に避ける。

 俺はその間に突進してきたスノーホワイトリトルデビルを合成剣で斬りつけパワースイングで追撃を仕掛ける。


「キヒャ!?」


 炎の加護のお陰か、それともスノーホワイトリトルデビルの耐性の所為か、コアが順調に成長して来ているのか、前方のスノーホワイトリトルデビルが吹き飛ばされて行く。

 致命傷は与えきれないか?


「まだだ!」


 追撃とばかりに接近をすると、後方に居たスノーホワイトリトルデビルがフェーリカ達に狙いを絞ろうとしている。


「させるかっての!」


 鉄の剣を思い切り力を入れて投擲、続けざまに俺に殴りつけられて倒れている方にトドメを刺す。


「アギャ!?」


 そして突き刺したまま、フェーリカ達に狙いを絞ろうとしていた方に死体を投げつけて、追いかける。

 ゴツっと仲間の死体が当たって、よろめいた所に追い打ちとばかりに蹴りを加えて強打をぶつけた。


「ムキュアアア……」


 目を×にしてスノーホワイトリトルデビルは揃って絶命した。


「手ごたえで言えば……海の方とそこまで差は無いか」


 経験値は……多少多めに入りはしたけどさ。

 誤差の範囲かな。


「ムウ!」

『またフェーリカのLvが上がったよ!』

「まだ上がるか」

『えっと、Lv8になったね』


 パワーレベリングで上げて来ているからなぁ。

 あっという間に追いつかれそうだけど……どこまで上がるか見物だ。


「クア!」


 ゴジョが褒めてとばかりにフェーリカの肩から俺に向かって頭を向けてる。


「よしよし、良くやったぞー」

「クアアアア!」


 元気にゴジョは鳴く。


『割と善戦出来てるんじゃない?』

「前の階層と比べて差はそこまで感じないかな。魔物の強さも誤差範囲だと思う」


 最初にゲートに挑んだ際のフィールドチェンジ程の差を経験したら、そこまで怖くは無い。


『見た感じだと、武器の相性が良かったみたいね』

「そうだね。火がとても効果的に効いた気がする」 

『セイジの合成剣があれば雪や氷に閉じ込められた物も発掘出来ると思うわ』


 ロザリーの助言で時々掘削や氷を溶かして道具を集めようと思う。

 火属性の武器を持っていて良かったな。


「とりあえず……まだまだ進めそうだからがんばってみるよ。ところで探索重視なのか、それとも次階層を目指したらいいのかな?」

『戦いやすい場所なのでしたら滞在する事もお勧めしたい所ですが、雪原ですからね……吹雪いていないのが運が良いですけど』

「吹雪いてたらどうなるの? 止むまで待つ感じ?」

『えーっとー……』


 リーゼの声が小さくなる。

 今までの傾向から考えるに、天候が変化するって事は無い。

 むしろフィールドが変化する事の方がありえる。


『その場合、フィールド変化をするまで吹雪の当たらない場所に潜むか、吹雪の中でオイルタイマーを頼りにゲートを目指す事になりますね。魔物も視界が悪いので、そこまで悪くはありません』

『吹雪避けの魔法もあるから、上手く運用するって所かな』


 ロザリーの方が便利そうだけど、維持するのが大変そう。


『魔導科にあるわよね。吹雪避けの道具』

『あるにはありますが……持ち運びが面倒で壊れやすいですよ?』


 リーゼの持ってる機材を思い出す。

 多分、エンジンみたいな機材なんだろうな。


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