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等級上昇

『じゃあゲートを潜る前に挑戦ですね』

「うん。フェーリカ、準備は良い?」

「ムウ」


 あ、この表情はわかる。

 胸やけしそうでちょっと嫌だけど、やった方が良いみたいな顔だ。

 フェーリカは徐に小石を取り出して口に含む。

 それからもぐもぐとし始める。


「ム……ムウ」


 ドンドンと喉に詰まるみたいな様子で、胸を叩いている。

 俺はフェーリカの背中をさする。


「クア?」


 ゴジョが首を傾げている。


「ゴジョは絶対に真似しちゃダメだぞ」

「クアア?」


 なんで? って顔している。

 お前、石を食えるのか?

 真似はさせちゃいけないだろうなぁ。


「ム、ムウウウ……」


 やがてフェーリカがどうにかこうにか踊り始めたのだけど、何度も胸を叩いて吐き出しそうになるのを堪えながら踊って行く。

 ……地味に河童の甲羅で実験した時よりも長く踊っては居る。


『Lv上昇のお陰で魔力がかなり上がったそうですから、踊る時間も延びた様ですね』

「だけど……」

「ム、ムウウウ……ッム、ッム……ムウウウ……」


 何度も吐きそうにしている。

 なんか死にそうな声を出しているぞ。


『フェ、フェーリカ。無茶しないで』

「ム――ンペ……」


 ガバっとフェーリカが大きく口を開き、小さな小石が苔生した岩へと変貌して転がる。

 ボチャンと海面に落ちた。


「ムウ……ムウ……」


 物凄く咽ている。

 やっぱり無茶だったか。


『後30秒って所だったけど……危ないかもね』

「そうだな」


 仮に上手く体に取り込めたとしても、あんまり身体によくなさそう。

 幾ら能力アップが出来ると言っても限度があるという事か。


「じゃあさっそく次の階層へ挑みに行くけど、そっちは大丈夫?」

『ええ、本音で言えば今すぐ帰って貰いたいですが、ここで帰っては実験になりません』

「うん。リーゼが止めても進む予定だよ」

『……それくらいの方がセイジさんらしいですね。無茶は絶対にしないでくださいね』


 とまあ、心配性のリーゼの注意を聞きながら俺はゲートを潜る。

 合わせてゴジョとフェーリカが着いてくる。


 ★★★の七級海3階層フィールド攻略完了!


 →進みますか?

  帰還しますか?


「ムウ!?」


 進むを選択しようとした所でフェーリカが鳴いた。


「どうした?」

『えっと、フェーリカと僕のアナライズ表記に、等級を上げるか? って問いが出てるんだよ。代償としてLvが1に戻るみたい』


 等級を上げる……先ほどのコアの事から考える。

 フェーリカはLv99になった。

 つまり最大Lvに達してしまったという事だ。

 ここで次のゲートを潜った所で等級を上げるかの問い。

 先ほどの下げるか? という問いと同じだろう。


『どうしましょうか? 現在、レイオンさんと一緒に飼育魔科へと向かっていますが……』

「……レイオンとフェーリカはどうしたい?」


 こう言う時に専門家がいない状況でリーゼが聞きに行くと言うのは余り意味は無い。

 危険かもしれないが飛びこまない事には答えなんてきっと出ないだろう。


「俺の推測だけどフェーリカの星が上がる代わりにLvが1に戻るんだと思う」


 なんとなくだけど、そんな気がする。

 俺だってゲームをやっていた経験でしか言えない。

 けれど今までのゲート内での状況から察するに、間違いじゃ無いはず。

 そもそも★が1の住人と★3相当の俺とでの違いが大きく存在する。

 ★1の人間が俺に追いつく事が不可能であるのか、そうでないのかを確かめる必要は大いにあると思うんだ。


「クア」


 ゴジョが悩む俺達を交互に見る。


「ゴジョももう少しで同じ悩みを抱くんだろうな」

「クア? クアクアア」

「ムウ? ムウウ」


 何かゴジョとフェーリカが話をしている。


『フェーリカの話だと、ゴジョはリーゼのLvを上げる仕事があるから同じ状況になってもしないって』

「クアア」

『セイジがリーゼと一緒に来れないのは★の所為で、リーゼの★を上げられるなら手伝いをしたいってさ』


 おお……ゴジョは健気だなぁ。

 俺がやった分のLv上げをリーゼに合わせて上げたいって事なんだな。


「確かに……仮にフェーリカの★が上がった場合、ゲートを潜ったらどうなるかわからないもんな」

「ムウ」


 フェーリカが悩むように腕を組んでからレイオンと何やら相談を始める。


『うん。確かに……一緒にゲートに挑む事は出来なくなるかもしれないけど、僕は君が強くなる事を否定しない。可能性に掛けて欲しい』

「ムウ!」


 そうしてフェーリカは俺に向かって大きく頷いて鳴いた。


『セイジ、リーゼ、試してみるよ。フェーリカも決めたから』

『……わかりました。危険な可能性もありますが、引き下がっては何にもなりませんものね』

『うん』

「じゃ、やって見てくれ」

「ムウ!」


 俺の言葉を受けて、フェーリカが目を泳がせて、何やら指示を出す。

 ゲートの光の中でフェーリカに淡い光が集まって行く。

 スーッとフェーリカの辺りを光が漂って行ったかと思うと、光が飛び散った。


「ムウウウウウウウウ!」


 で、なんか調子良さそうに軽くジャンプする。


『等級が上がったってさ。同時にアナライズの精度も上昇したらしいよ』

「ほう……」


 そんなシステムなのか。

 ★があって、その中でLvがある。

 そしてLvが99になったら★を引き上げる事が出来てLvは1に……とはいえ実際はLvの限界を突破した様な状態って事だろう。


『未知の発見が多くて、驚きの連続ですね』

「よくリーゼ達の世界の人達は気づかなかったもんだ」

『えーっと、過去の文献を調べて来たんだけど』


 そこでリーゼの視界でロザリーが古びた本を片手に歩いて来る。


『Lv99になったって人物は極少数だけど過去にいたみたい……けど、その先に至ったって文献は無いわね』

『秘匿していたか、それとも気づかなかったという事でしょうか?』


 他にも条件があるってことかな?


「何か他に条件があるんじゃない?」

『かもしれませんね。例えば……特別な資質が必要とかでしょうか。他に魔物、合成獣じゃないといけないとか』

「過去の前例が無いってのがネックだなぁ……」


 リーゼ達の世界ってどんな常識があるのか、まだ俺には分かっていないんだよな。


『今こそ前例を作り出す時と言う事でしょ。セイジ、調査が色々と出来たらこの世界の者でも等級が上げられるのか、もっと詳しい調査をする事になると思うわよ』

「フェーリカみたいな魔物を同行させるって事?」

『そうね。ゴジョも後々実験する事になるでしょうけどね』

『過去の文献と大きな違い……セイジさんが戦っているのを見ていたに近いですが、等級が上の魔物と戦ったとか……ですかね』


 リーゼが文献を照らし合わせながら資料を纏める。

 ありそう。


「だけどそれだと俺の協力無しじゃ上げ辛くない?」

『あくまで可能性ですけどね。後は……もしもの可能性ですが、ゲート内、★一級の深い階層に化け物の様に強いボスがいると言う話があります。もしかしたら……その魔物は★2だったのかもしれません』

『なるほど、Lvの上限に達した者が命がけで★2のボスを倒すことで等級を上げる資格を得る。推測の域を出ていないけどありえない話じゃないわよ!』


 ロザリーが興奮気味にリーゼの仮説を肯定する。


『セイジさんと一緒にいたフェーリカさんの等級が上がったのは、これが証明なのかもしれません』


 俺は★3のケルピーを仕留めた。

 前回のアーマーボアを仕留めた時に変化が無かったのは、あくまでもLvが99じゃないと行けないとかの制限に引っ掛かったって事か。

 しかし……ノレイトークもそうだけど、命がけの戦いとなると、Lvがカンストした冒険者は危険な事をしないのだろうか?


 まあ……命には代えがたいって事で発見される事は無かった事実なんだろうなぁ。

 俺からすれば常に命がけだけど……★4の魔物を相手にする時、俺は臆病風に吹かれる時が来るのかもしれない。

 ともかく、フェーリカの等級が上がって★2のLv1になったって事だな。


「じゃあ進むよ」


 いつまでもこんな所にいられない。

 早めに移動をしようと思う。


『承知しました。では頑張ってください』

『フェーリカ! 頑張って!』

『新発見、論文……夢が広がるわね』


 ホント、ロザリーは研究者肌だな。

 そんな訳で俺は進む事を選んだ。


 浮遊感を覚えたその時!


「ォォォォォン――」


 遠くで、遠吠えが聞こえた様な気がした。

 俺は辺りを見渡すが、光の中で何か変な物は見えない。

 ……気の所為か? 再度耳を澄ましたが、何も聞こえなかった。



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