表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/57

スパイ

「ムウ!」

「今日の探索で何Lvまで上がるか見物ではある……リーゼ、今日はどこまで潜るべきだと思う?」

「出来れば安全が確認出来ている八級が良いですが七級辺りに挑戦するのも良いですね」

「最初に挑んだのが六級だからまだ軽いと思うけど……」


 まあ、ボスのキメラに手も足も出ずゲートに飛びこむ為に逃げた様な物だったんだけど。

 そういう意味では昨日と同じ階級に挑むのも悪く無い。

 Lvや装備を整える感じでさ。


「とにかく、法則がだいぶわかって来たので、今回は七級の階層が深い所に挑めれば良いと思っていますよ」

「そういえば詳しく聞いてなかったんだけど、ゲート内の脱出用のゲートを潜って更に潜るとどうなるの?」

「上の階層に行く事になりますね。一定量、登れば級が上がる事はあります。その場合は階層は一層からになります」


 なるほど。

 そこ等辺は想像通りの様だ。


「了解。じゃあそろそろ出発するからレイオンとフェーリカも準備してくれ」

「うん。フェーリカ、がんばって!」

「ムウ!」


 レイオンの応援にフェーリカがグッと拳を作って答える。

 仲良いなやっぱり。


「じゃあ私も使い魔を呼び出しますね」


 と、リーゼが昨日も呼んでいた使い魔を召喚して俺の肩に乗せる。


「ああ、ロザリーも雑談に混じりたいと仰っていたので、出発前に呼びますね」

「……なんだかなー」


 雑談に混じりたいって遊びみたいな感覚で言われても……。

 確かにゲート内の冒険って命を掛けているけど、遊んでいる様な錯覚は確かに覚える。

 これって俺が現代人だからと思っていたけど、リーゼ達にとってはどんな感覚なんだろうか。


「嘆かわしい事です。かと言ってロザリーは魔法科なので、私達ではわからない事も察知してくれる可能性は大いにあります」

「そうなの?」

「はい。例えば使い魔をゲートに飛ばす探索では隠れた道具等を見つけるとかもしてくれますし、私よりも使い魔の魔法援護が出来ると思います」

「ちなみに前回の探索じゃ僕もフェーリカに使い魔を付かせていたから会話出来たんだと思うよ」

「ムウ!」


 そう言えばレイオンはフェーリカと飼育魔で繋がっている扱いだったんだっけ?

 確かにそれだけだと俺とリーゼみたいに使い魔を中継しないと会話は出来ない。

 やっぱり色々と工夫をしているんだ。

 さすがは学園の生徒って事か。

 ロザリーが援護してくれる事でどれだけの事が出来るようになるか、少し楽しみだ。


 なんて思いながら俺達はレイオン達と別れてゲートに挑む為に出発の準備をする為に水車小屋を出て、校庭を横切る。。

 ぶっちゃけ、へんてこな格好をどうにかしたい。

 さすがに顔に毛皮は付けていないけどさ。


 なんて思っていると、校庭で――ちょっと遠い場所で顔を布で隠した人影が目に行く。


 学園の生徒か?

 それにしてはなんて言うか、雰囲気が違う様な気がする。

 戦闘系学科の連中でも、あんなポツーンとしてたっけ?


 確か戦闘学科の生徒が練習で何かするにしても、学園の生徒の証である物の携帯をするんじゃなかったっけ?

 あくまで学園の敷地内では。

 しかも生徒が横を通り過ぎているのに気付いていない。

 ……こう、まだこの世界に詳しい訳ではないので迂闊な事は言えないが、不審人物に見える。

 リーゼに聞いた方が早いか。


「ねえリーゼ、あそこに何か人がいるんだけど学生?」

「え?」


 リーゼに怪しげな人物がいる方角を指差す。

 俺が指差した方角をリーゼは何度も瞬きしてから目を凝らしているようだが、見えないらしい。


「セイジさん。少々視界を盗み見させてもらいますね」

「うん。あそこ」


 リーゼが俺の視界を共有する様に片目を瞑る。

 やがて……。


「学園の生徒じゃありません! スパイです!」

「何!?」


 思わず走り出す。

 リーゼの言葉と俺が走ってきたのにバッと覆面を付けたスパイらしき人物が逃げ出した。

 直後に学生達が気づいて臨戦態勢に入る。


「何奴!?」

「気配がしなかったぞ!?」

「相当の熟練者か!?」

「チッ!」


 急いで動き始めた所為だろう、生徒たちも気づけるようになったって所かな?。

 ナイフを取り出し、一目散に校庭から逃げ出そうとしている。


「邪魔をするなら容赦せん!」


 そう言って門の方に立っている生徒と警備の者にスパイは姿を現して、高速ステップで急接近する。


「学園の生徒に何をする気だ!」


 だが、もう遅い。

 そんな事をするよりも早く追いつき、奇妙なステップをLvと★の差で追いついて拳で叩きつける。


「ガハ――馬鹿な!? 拙者に追いつくだ――と!?」


 ガツンと叩きつけ、侵入者は地面に倒れ伏す。


「く……ここで掴まる訳にはいかん!」


 で、叩きつけた割に、まだ元気で何か手榴弾っぽい道具の紐を抜こうとしているので、その腕を押さえつけて紐の根元にある、手榴弾を強引に力技で奪い取って踏みつける。


「うぐ!? は、早すぎる! 化け物か!?」


 アナライズリングで確認するとやはり爆弾だったようだ。

 自決用とかどんだけだよ。


「取り押さえろ!」

「おう!」


 俺が踏みつけた所為で侵入者は何も出来ずに捕縛された。

 ちなみに捕縛後に判明したのはLvは80のスパイだったそうだ。

 ノレイトークを倒した影響でスパイが学園に忍び込む事態にまで発展してしまっているという事か……。


 なんというか、リーゼや王様の話に信憑性が出てきた。

 スパイがやってくる程とか……。

 しかもLvが高い。

 なんせリーゼ達がLv40代なのに、その倍だからな。


「凄いですね、セイジさん」

「いや、堂々と校庭を歩いて来てたからさ。多分アビリティチップか何かの技能と、本人の資質とかでがんばったんじゃないの?」

「そうですね。このマスクや装備品、その全てが潜伏用の防具です。相当の熟練者じゃないと見破れないと思います」

「これも★の影響って事か……」


 ★1のスパイじゃどんなに上手く隠蔽して来ても俺には見抜かれてしまうって事なんだろう。

 これも★の恩威って事なんだろうな。


「本当に凄い事なんですよ。しかも極めて逃走能力の高い相手をあんなに手早く……」

「俺が凄いんじゃなくて、世界ルールの違いだと思って欲しい」


 スーパーマン状態な訳だけど、これって俺が凄いんじゃなくて、この世界が俺よりも基本的に階級が低いだけでしかない。

 本当に強い猛者相手だと見切られてしまうし、単純な戦闘技術じゃ勝てない。

 自惚れてはいけないと思う。

 それでも前よりも強くなった様な気はする。


 とはいえ、今回偶々運が良かっただけで、次も上手く行くとは限らない。

 実際、既にスパイがやって来ている訳だしな。

 やはりゲートで強くなる必要がありそうだ。


「学園のセキュリティを上げる申請をしましょう。学生じゃないと入れない様にします」

「最初からすれば良いのに?」

「冒険者を雇用する場合や、業者の搬入、更には魔結晶の燃費の所為で、王様などの重要な来賓客が来ない限りしないんですよ」

「魔結晶の方は俺がどうにか出来そうだもんね」

「ええ……高燃費モードにしておけば扱えるでしょう。そうなったら間違いなく学園が許可した者以外は入れなくなります」


 穴もありそうだけど、学園自体は問題なく防衛できるか。


「私もその辺りの設備を色々と関わっているので、セイジさんの持ってきた魔結晶でどれだけ出来るかやってみます」

「うん。宜しくお願いするよ」


 なんて一幕があったが、その後は問題なく出発の準備を終えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ