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石器武具

 ……やっぱりその手の話だったのか。

 わからないはずもない。

 国家の情勢はまだよくわかっていないけれど新事実の発見なんてあったら、人間が考える行動なんていくつもない。

 俺の世界だってそれは変わらないだろう。

 核とか……色々と負の部分は腐るほどある。


「王様は出来る限り国民である私達を守ると仰っていましたが、何が起こるかわからないのもまた事実……跳ねのける強さを得ないといけません」

「そういう意味があったんだね」


 一応、俺はかなり強くなってきているみたいだけど、戦争で勝てるかというと未知数だ。

 個人では強いかもしれないが、大軍に勝てるかと言われたら難しいだろうし。


「俺がいる事でみんなに迷惑が掛っているんだね」


 リーゼ達には命を助けてもらったけれど、更に迷惑を掛けているのか。

 何もかも裏目に出てしまっているんだな……。

 ゲートに挑みたいなんて言わなければ、判明する事も無かったのに。


「いえ! そんな事はありませんよ! そんな事を言う人を私は許しません!」


 リーゼが怒鳴る様に大きな声で言い放った。

 その表情は心の底から俺を心配しての顔をしている。


「あくまで可能性でしか無いです。★の事実も国内で信用できる者にしか知られていません。情報の流出にしてもそのリスクは大いに管理されています。ドラーク学園は研究機関、口の軽い者の入学は許されませんし、国だって同じです」

「今は……まだ?」


 俺の問いにリーゼは渋々頷く。


「人であるだけに……否定できません。ですから一刻も早くセイジさんにゲートの解明を急ぎ、世界中にその情報を提供するか……国力の増強を図って私達に被害が及ばない様にするかを議論されているのです」

「王様はどっちの派閥なのかな?」


 国力の増強というのはつまり、強靭な兵隊を育成して戦争に備えるという事だろう。

 確かこの世界ってゲートからの恩威で戦争はあまり無いと聞いた。

 まあ安全に水と食料の配給さえあれば争い自体は減ると聞く。


 だが、それで満足できない権力者が少なからずいる事くらい俺だってわかる。

 国をそんな連中の侵略から守る為に国力の増強……俺みたいな奴を量産する計画だって容易く想像できるだろう。


「王様は情報が纏まり次第、世界中に事実を広める方針を取っています。上手く広まればゲートにしても市場の活性化が図れるからです。そうすれば自然とセイジさんの重要性は大きく下がるでしょう。それでもテストケースとして狙われる可能性があるので今の内に強さを……という話です」

「なるほど」

「……名残惜しいですが、元の世界への帰還を推奨するのもこれに由来します。セイジさんが帰還さえしたら研究資料は破棄すれば、危険性は大いに減るでしょうし」


 ……俺がいる事でリーゼ達に迷惑が掛る。

 だけどそれってリーゼはどうなるんだ?


「リーゼは? 俺を召喚したって狙われるかもしれないでしょ?」

「その点に関しては……あまり頼りたくないですけど私自身のコネで逃げ切れますので安心してください。絶対に、私を見つける事が出来ない様にして見ますよ」


 そう、リーゼが微笑んだので俺はそれ以上聞く事は出来なかった。

 そういえばリーゼと長く一緒にいるけど、どんな出生なのかとか全く聞いていなかった。

 いつか俺に話してくれる時が来るのかな?


「とにかくゲートの探求を続けましょう。今度はどれくらいの階層に挑みますか?」

「前回はボス以外は割と簡単だったからもう少し、深い所へ挑んでみようかと思っているよ」

「じゃあ時間と挑む場所を決めましょうか。前回の探索でのデータからある程度推測できると思います」

「そんな事まで特定出来るんだ?」

「あくまで今までのゲート分析と言う膨大な資料があって事ですけどね。★の階級が違う事でどれだけ予測からずれてしまうか不確定な所が怖いですね」

「いやいや、参考に出来るだけ十分だよ。俺は何も知らないんだし」


 リーゼ達が援護してくれる事で、ホント楽に戦う事が出来たんだ。

 コレは十分な程に助かっている。


「じゃ学園に戻りましょう。それから……ゲートに挑む時はフェーリカさんとゴジョを再度連れて行ってくださいね」

「うん、研究になるんだもんね」


 あの二匹がどれだけ強くなるかでも指針になるっぽい。

 だから挑戦して行くのが近道になるとか。


「持ち帰った物資で色々と作れそう?」

「アーマーワイルドボアの素材で色々と作れる様ですけど、手始めに骨で作った斧になるそうです。装甲板の方は単純に盾、鎧の方は……まだ難しいですけど、毛皮の鎧の作成には挑戦する予定だそうです。骨を組んで兜とか、肩当てを作ったみたいですよ」

「石器時代な武器な匂いがするね」


 学園への道を歩きながらリーゼと話をする。

 昨日の今日なので、現在鍛冶科が持ち帰った石でかまどを作っている最中だ。

 設備で作れる様になるのかという分析をしている。

 そう言えばゲート内でフェーリカが作ったボーラは★が落ちていなかった。

 特に道具も無しに作れる物は★の低下が無いんだったっけ。

 基準がわからないんだよなぁ。


「かまどの方は、まだ石材が足りないのでもっと持ち帰って欲しいそうですよ」

「もちろん今度も脱出する時に持って帰るよ。むしろオイルタイマーを使って入ると同時に片っ端から持って脱出って手もあるけど」

「悪い手じゃないとは思います。ですが、脱出用のオイルタイマーは重量制限があったはずなので思ったよりも持ち帰れないかもしれません」

「そういうのもあるんだ?」


 重量制限か……確かにありそう。

 脱出用のゲートは門って感じだからかなり大きかったから納得できるけどさ。


「あくまであるって程度ですけどね。セイジさんがリュックに沢山石を詰めた程度じゃ、大丈夫……だとは思いますが」


 確定で言える事じゃないかな?


「後、あまりにも短時間でゲートを行き来すると体調に不調をきたす事も多いので推奨出来ません。移動酔いで死んだらどうするのですか?」


 ……そういえば初めてゲートに挑んだ時は移動の衝撃で失神したんだっけ。

 確かに、何度も行き来するってのは危なそうだ。

 やめておいた方が良いか。


「まあ、探索して工房とかまた見つけたらリーゼ経由で教えてもらって挑戦とか出来るし、急ぎ過ぎる必要は無いか」

「はい」


 という所で学園に到着した。

 鍛冶科の教室前ではエルトブルグさんが生徒達と一緒に俺が持ち帰った石を組んでかまどを制作しようとしている最中だ。

 見た感じ……石材が足りなさそうだ。

 うん。今日もゲートに挑んだら材料を持ち帰ろうっと。

 近付くとエルトブルグさんが俺を見て前回と同じような顔をしてる。


「来たか」

「は、はい」

「昨日持ち帰った素材で武具を作ったぞ。試しに持って行け」


 と鍛冶科の教室に凄く武骨に作られた、骨の斧が置いてある。

 片手で持てるけど……刃先の部分は鋭く削っている、大きな骨をそのまま斧にしたって感じか。


 ボーンアックス ★★★ 付与効果 強打補正


 うーん……単純な攻撃力は、どうの剣より少し高いけど……正直心もとない。


 ボーンレッグガード ★★★ 付与効果 斬撃耐性


 こっちの方は思ったよりも性能は高そうだ。


「骨で鎧を組むか考えたんだが、今使っている奴の方が防御力が高そうなんでな。何か機会があったら残った素材を使おうと思っている。頼まれれば骨で兜を作るが……どうする?」

「ありがとうございます。兜は……今回はやめておきます」


 骨の兜を付けたら完全に原始人っぽい格好になりそうだ。

 冒険時にファッションに拘る気は無いけど、他にも有能な装備は幾らでもある。


「こっちも未知に挑ませてんだ。試作品を支給してるんだから礼なんて言うんじゃねえ。むしろ礼を言わなきゃいけねぇのはこっちの方だ」


 口は悪いけど、善意が伝わってくる。

 試作品とはいえ、持ち帰った素材で色々と作ってもらうのはワクワクするし、素直に嬉しい。

 俺だともっとしょぼい物が出来ているだろう。


「ま、こんな所だな。また素材を持ってきたら届けてくれ。注文があれば出来る限り応える」

「わかりました。丈夫なかまどを作れる様に、もっと持ち帰れる様に努めますね」

「期待してる」


 なんて言うか物資を持って出来る事が増える様になるって楽しい気がしてきた。

 早く設備が出来る様にがんばらないと。 


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