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職業条件

「リカバリーを掛けたらどうなったのか聞きたいな」

「能力値のボーナスが増えました。他はまだわからないです」


 そもそも職業のLvもあるみたいだ。

 こればかりは再度ゲートに挑んでみないと分からない。

 まあ、この世界の魔物とかでLvが上がるかと言う疑問も解決させたいけどさ。

 少なくとも昨日の戦いで俺自身のLvは上がらなかった。


 経験値自体は入っているが、上がるほどには入らなかったと言うのが正しいか。

 そもそも安易にリカバリーを施しちゃったけど、実験をするなら破損率を回復せずに試した方が良かったかもしれない。


「まだまだアビリティコアに関しては研究を続けないといけない様だね」

「随時ゲートに挑んで行きたいと思っています」

「それが良いだろうね。こちらも新事実を深く研究して行きたい。ところでセイジくん、どうしてコアをこの世界の人達が使えないか、君ならではの見解はあるかい?」


 王様に尋ねられて俺は考える。

 何故? と尋ねられて安易に浮かんでくるのは★の数だろうか?

 他にも体質、異世界人である俺だから使えるとか?


「そういえば飼育魔や使い魔にはアビリティチップって使えるんですか?」

「使えると聞いている」


 そこで王様に大臣が資料を持ってきて見せる。


「過去にコアはいろんな実験がされた事があってね。人間は元より、飼育魔や使い魔……魔物に持たせても同様の症例が発現している。その場合、魔物の内部構造に多大な変化が起こってね。飼育魔や使い魔も例に漏れず暴走を引き起こしているよ」


 うわ……。

 とんでもなく危険な代物という事か。


「ただ、長く飼育した強力になった飼育魔の体内にコアが生成されると、とても強力な力を宿す事があるとも分析されているね。だから魔物の力……とアビリティチップはゲートに挑む者達にとって重宝されたものである訳だけどね」

「飼育魔の体の中に作り出される……」

「そう、相当強く飼育魔を育てないと行けないから中々思う通りにならないのだけどね。その時には……確かにセイジくんが報告した様な項目が出現したとも言われているよ」


 そういえばフェーリカとレイオンが俺とリーゼみたいに視覚の共有をしていたんだっけ?

 原理的にはレイオンがフェーリカにコアが生成された時にアナライズリングでステータスを見せてもらう感じなんだろう。


「だから魔物の内臓器官の力を人間が使うのは……難しいと思われていたのだよ」


 魔物の一部は使用する事が出来る。

 だけど人間は無理。

 今まではそう思われていた。

 俺と言う例外が現れるまでは。


「……俺自身が特別……とするのは簡単だと思います」

「そうだね。一番しっくりくる。何せ君は実質リーゼくんの飼育魔だろう。こちら人間とは根本的に構造が違う、と決め付けたくなる。だけどそれでは思考停止も良い所だ」


 王様が何を言いたいのかわかる。

 おそらく、人間にもコアを使いこなす方法を確立させたいんだ。

 俺という前例を元に。


 この世界、この国の人達は俺の命の恩人の様なものだし、衣食住を提供してくれている。

 俺自身が帰還する方法の模索の為にゲートに挑んでいるけれど、同時に新事実の発見はして行きたい。

 それがリーゼや学園の人達への恩返しになるんだろうし。


「だからセイジくん、この謎の解明も一緒にしてくれるとありがたい」

「俺でよければ、力になります」


 リーゼが懸念しているのはきっと俺自身に振りかかる何かだ。

 俺がその場に居て解決できる問題かどうかはわからないけれど、国の人達が共に新たな発見を元に強くなれるなら良い。

 何よりどうせゲートを攻略していくなら、ついでにやっておいた方が良いはずだ。


「助かる。何から何までセイジくんとリーゼくんに頼ってばかりだけど、宜しくお願いするよ」

「はい」

「他には……確かセイジくんと共にゲートに挑んだ場合、使い魔と飼育魔が同行出来たと聞いたのだけど」

「そうです。王様」


 今まで黙っていたリーゼが一歩踏み出して答える。


「セイジさんが飼育魔登録した河童のゴジョと合成科のレイオンアードの飼育魔で合成獣のフェーリカが私の使い魔と共にセイジさんの方へと挑む事が出来ました」

「どう言った法則なのかリーゼくんは理解しているかね?」


 王様の問いにリーゼは分厚い資料を王様に提出する。

 何時の間に? ……って俺の援護をしながら解析していたのかな?

 何かリーゼの視界を見ると書いてたし。

 こんなに書いていたのか……と、リーゼの分析力に驚く。


「使い魔から流れる魔力波形とセイジさんへの直流視覚共有、更にゴジョとセイジさんのパーティーリンク。レイオンアードとフェーリカの視覚共有等、色々と纏めております」

「よくここまで記してくれたね。ふむ……専門ではないけれど、わかりやすく纏められていると思うよ。さすが我が国の魔導学のスペシャリストだ」

「ありがとうございます」


 それからリーゼは資料を朗読を始める。

 何か魔力数値とか専門知識的な説明をしていたけれど、俺からしたらまだよくわからない事ばかりで、追いつけそうに無かった。


「――その為、使い魔を経由してセイジさんの援護が可能だったのだと思われます」

「ふむ、他に報告として、僅か一日でLvが47に上がったというセイジくんの飼育魔の話があるね。レイオンアードの合成獣のフェーリカくんも67と、上級冒険者に仲間入りを果たせるLvに到達した様だし」

「はい。レイオンアードの目からしても驚異的な経験値が入った様に見えたとの事です」


 そこで王様が何やら考える様に腕を組む。


「やはり★の階級違いと言うのは確かな様だ。このままLvを上げて行ったらどれだけ行くか楽しみだと思わないかね?」


 そういえばゴジョは学園に帰ってからずっとご飯を食べていたっけ。

 お腹が空く年頃なのだろうか。

 食べるたびに大きくなっていたけど。

 ムクムクと膨れて行ってちょっと怖かった。

 まあ、食べた後は疲れたのか寝ちゃったけどさ。


「飼育魔をセイジくんに預けて、上げてもらったらそれはそれで優秀な魔物が量産出来そうではある」

「ですが……あまり大量に飼育魔を行かせるのはセイジさんの負担になりかねません。セイジさんは弱いとおっしゃる魔物でしたが、私達からしたら驚異的な速度で動きまわる化け物でした。あのような所へ再度行かせるのは……」


 王様の意見にリーゼが真っ向から否定する。

 すると王様は即座に引き下がる。


「わかっているよ。これは国王としての癖の様なものだ。セイジくんから提供される事実は山の様にある。あくまでも案の一つだから、今は考えなくて良い」


 と、王様は区切った。


「どちらにしても、今後もゲート探索を続けて欲しい。その全てが新たなる事実への解明のカギになるのだから」

「は!」


 という訳で王様との謁見を終えて城を出る。



「ふう……」


 気さくな王様なんだけど、場所が場所だけに緊張したな。

 真面目な内容だったのも理由の一つか。


「ホント、新発見の連続で学園も大変ですよ」

「一躍有名人の仲間入り?」

「一般冒険者には知られてませんけどね」

「内密なんだ?」

「一応は……ですけどね」


 リーゼの表情に陰りが見える。

 何か嫌な空気と言うのかな? そう言った要素が見え隠れする。


「セイジさん、王様が言っていた様に強さと言うのは時に厄介な問題を招きかねません。時にセイジさんの強さだけでは解決できない問題が起こる可能性がある事を覚えておいて下さい」

「それは、前に王様に囁かれた事が関わってる?」


 俺の質問にリーゼは頷く。

 創作物で聞いた事がある。

 強過ぎる力は災いを招く、なんて話を。

 それ自体は悪い事でなくても、何が原因で問題が起こるかわからないんだから、吹聴して周る必要はない。


「ええ、もう話しても良い事だと思いますが、セイジさんの強さを分析する為に、他国が我が国へ侵攻してくる可能性は大いにあります。セイジさんを寄こせと、果てはセイジさんを召喚してしまった私を寄こせと圧力を加えてくるかもしれません」

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