表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/57

重歩兵

『コアを攻撃すればもっと早く倒せたのに、なんで心臓を攻撃したんですか!』


 リーゼが詰問する口調で俺を咎める。


「ムウ」

「クア」


 俺が勝った事を確認してフェーリカとゴジョが駆け寄って来る。

 とりあえず……敵らしい魔物はもういないようだ。


「いや、アナライズリングに浮かぶ画面でコアに攻撃を入れたらバキンとか警告っぽい音がしてランクダウンって浮かんだからさ」

『それで良いんですよ。もしかしてアビリティチップが手に入るから、コアを破壊するのを温存したとか言う気じゃないでしょうね?』

「違うの?」


 丸のままコアを手に入れたら沢山のアビリティチップが手に入ると思ったんだけど違うのだろうか?

 自慢じゃないが、そういうゲームをやった事がある。

 ……ここは異世界であってゲームじゃないけどさ。


『違いますよ。過去に魔物のコアを綺麗なまま取り出した研究があるのですが、魔物のコアと言うのは言わば心臓部。触れた相手を浸食し、その魔物の要素が混ざった化け物へとなってしまったんですよ!』


 うへ……俺の予想が大きく外れちゃったって事?


『アビリティチップは確かに魔物の力であるのは否定しませんが、コアは別物……触れて良い物じゃないんです』


 という所で、鎧イノシシの喉辺りから蠢く。

 まさか……コアを破壊していないから動き出したとでも言う気か?

 ブシュッと音を立てて、若干ヒビが入ったコアが飛び出す。


『セイジさん! 早く破壊を!』

「お、おう!」


 フェーリカとゴジョを庇う様に前に飛び出し、俺は剣を振りかぶろうとして……コアがただ浮かんでいるだけなのに気付く。

 特に……戦闘意識は無い?


 アナライズリングで分析を試みる。

 魔物名とか出現するはずだ。

 ……特に反応は無い。

 あ……名前が出現した。


 ジョンブリアンアーマーワイルドボア=重歩兵のコア 破損率30% ★★★


 重歩兵……?

 あ、ふわふわと俺のアナライズリング目掛けて飛んでくる。


『セイジさん!』


 そして……光となって俺のアナライズリングの中へと消えて行った。


「あれ?」


 そしてブウンと新しい項目が出現する。


 重歩兵のコアGET!

 Lv1 破損率30%

 魔結晶によるリカバリーを行いますか?

 

 リカバリー? 手持ちの魔結晶なんてアナライズリングに登録はされていない。

 だからリカバリーなんて出来ない。

 とりあえずキャンセルをする。


 すると項目を操作できるようになった。


 →コア無し 登録アビリティチップ ステップLv1

  重歩兵 Lv1 破損率30%


「ねえリーゼ」

『セイジさん!? 大丈夫ですか!? 魔物に浸食されていませんよね!?』

「リーゼ、冷静に話を聞いて!」

『は、はい!?』

「どうやらコアは俺は手に入れても大丈夫みたい。どういった理屈なのかよくわからないけど」

『わ、わかりました』

「それでなんだけど、何かアナライズリングにコアが吸収されてあのイノシシのコア……重歩兵のコアという物になったみたいなんだけど、選んで見て良い?」


 これが何なのか良くわからない。

 けれど、どうもボスを倒した際のボーナスに見えてしょうがない。


『非常に危険です。出来ればやめて欲しいのですが……』

「というか、魔結晶でリカバリーするか? って問いまで出たんだ。危険な物をリカバリーさせる指示って普通ある?」


 俺の問いにリーゼは深く考え始めた。

 そして……。


『少し待っていてください』


 そう言って学園の研究者の所へ走っていく。

 それからしばらくの間、リーゼ達は相談を始めた。


「俺達はその間にこのボスを解体しておこうか」


 中ボスとはいえ、使える素材に出来るだろう。

 特に牙とか骨は武器にも使える。

 毛皮だって無駄にする必要は無い。


「ムウ!」

「クア」


 リーゼ達が話し合いをしている間に、俺は鎧イノシシの解体をしていた。

 もちろん、鎧イノシシがパージした鎧部分も。

 盾にしたら強そうだし、加工の仕方は幾らでもあるだろう。


「ム……ムウ」


 さすがのフェーリカも重さを感じているっぽい。

 俺はまだ持てるけど。

 やっぱ★の差は大きいか。

 と、ある程度、解体を終えた所でリーゼ達の話し合いが終わったようだ。


『セイジさん。私としては危険な事は反対です。ですが、学園の研究者からの推測を話します』

「うん」

『もしかしたらアビリティチップの詰まった物である可能性が高い。アナライズリングがリカバリー指示を出したという事は危険性は大いに下がる。出来れば試して欲しい。との事です』


 リーゼからしたら反対。

 だけど研究者は試せか。


「わかった。じゃあフェーリカ、ゴジョもそうだけど、何かあったらすぐに逃げられる様に、ゲート前に待機」

「ムウ!」

「クア……」


 フェーリカは賛成で、ゴジョの方は良く分かってない感じかな?


「フェーリカ、俺に何かあったらゴジョを宜しくね」

「ムウ!」


 素材は十分に採取した。

 本当は石とか沢山持って帰りたいけど、今の俺達に持てる限界は思いのほか少ない。

 それでも石とかは持って帰れるだけ、俺のリュックに詰め込んだ。

 という訳で光るゲート前にフェーリカとゴジョを待機させ、俺はアナライズリングから先ほどの項目を呼びだす。


  コア無し 登録アビリティチップ ステップLv1

 →重歩兵 Lv1 破損率30%


 重歩兵に変化しますか? 

 はい・いいえ


 迷わず、はいを選択する。

 するとアナライズリングから光が飛び出し、俺を包むように飛びまわる。


 そして……何事も無かったかのように光が散った。

 ……なんだろう。力が溢れる様な不思議な感じがする。

 重く感じたリュックが軽い。


『セイジさん、大丈夫ですか?』

「うん、むしろ絶好調ってくらい」


 アナライズリングの色がジョンブリアン色に変わった事以外……外見の変化は無い。


 そこでステータスを確認する。

 すると能力値にボーナスが発生している事に気付いた。

 同時にもう一つ、メインのLv以外にもLvが存在するのを発見する。


 重歩兵 Lv1

 アビリティ


 アーマーマスタリー

 重量強化

 鈍器マスタリー

 シールドマスタリー

 パワースイング

 バッシュ


 ……これ、間違いなく職業だ。

 頭に知らないはずの構えとか攻撃の方法が浮かんでくる。

 とはいえ、ぼんやりって程度だけど。


「えっと、異常なし。むしろ新発見。アビリティが沢山内包されている職業能力を得たっぽい」

『え? それってどういう事ですか?』

「うん、じゃあ試し打ちするね」


 ぼんやりとしていたら魔物……カナリヤサンショウウオが三匹、ボスがいなくなったからかこっちを発見して近づいてくる。


『セイジさん、気を付けてくださいね』

「うん」


 俺は剣を握りしめて意識する。

 たぶん、叫ばなくても良い攻撃、ステップを使う時と同じ動作だ。

 カナリヤサンショウウオに近づいて、先頭の一匹に殴りかかる。


「パワースイング!」


 剣に何かが纏わりついて衝撃が発生する。

 それを横に振りかぶる感じだ。

 剣技じゃないけど、威力が違うんだろうと言うのはわかる。


「――!?」


 殴打されたカナリヤサンショウウオが横に大きく仰け反って吹き飛ばされ、二匹目に命中。


「バッシュ!」


 今度は縦に、物をぶつける感じ、パワースイングの再使用時間まで時間があるから別の攻撃方法だ。

 呆気に取られた三匹目の顔面にバッシュを当てると、不自然なくらいめり込んで衝撃が発生。

 絶命する一匹目の死骸を退かした二匹目が一瞬で二匹葬られた事を理解して動きが止まった所をすかさず剣を振りおろす。

 今まで戦っていた時よりも更に軽い手ごたえで二匹目は倒れた。


『複数のアビリティを連続で作動させるとは……魔法でも難しいのに……』

「たぶん異なるアビリティチップを使うって事なんだと思うけど、システム的なタイムラグがあるのかもしれないね」


 だけどこの攻撃は一つのチップ……違う、コア内で完結しているから次の動作が速い。

 しかもコアには職業の力が内包されていてステータスに変動が掛るし、薄らとアシストしてくれている。

 かなり優秀な事なんじゃないかな?


『新発見の現象です。ゲートも攻略を終えましたし、出来れば帰還してもらいたいのですが、よろしいですか?』

「もちろん。それじゃあみんな、帰ろう」


 かなり大変だったけど、大きく前進したと思う。


「ムウ!」

「クア!」


 ああ、ちなみに俺のLvが23、フェーリカは65、ゴジョは47まで上がった。

 幾らなんでも上がり過ぎだろうと思ったけど。一日でコレは大収穫だと思う。

 そんなこんなで俺達は持てるだけの物資を持って脱出用のゲートに進んだのだった。


 ★★★の八級森林5階層フィールド攻略完了!


 ボーナス発生!


 帰還のオイルタイマー★★★にクラスアップ!


 →進みますか?

  帰還しますか?


 予備のオイルタイマーを持ってきたお陰で帰還出来る数が増えたようだ。

 進む事に興味はあったけど、かなり疲れたし、新発見の再調査をしたいので帰還を選択した。

 光が俺達を飛ばす。

 こうして俺は再度、ゲートから帰還したのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ