表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/57

鎧イノシシ

「ムウ?」


 フェーリカが器用に草を編んで紐にしてくれてはいる。

 けど……やっぱ★の違いなのか、物凄く力を込めながら結ってるのはわかるぞ。

 で、何を作っていたのかと思ったらボーラだった。

 紐と石で作れる投げて相手の足とかに絡ませる武器だ。

 地味に便利な物を作れるなぁ。


 ボーラ ★★★ 付与効果 無し


 消耗品に近いけど、無いよりマシだ。

 というか作り手の所為じゃないのか? ★の劣化は。

 ここでも謎が解けた気がする。


「フェーリカはそう言った援護を頼めるか?」

「ムウ!」


 重そうだけどぐるぐるとフェーリカがボーラを回して見せる。

 ただ、見ているだけ寄りは良いかもしれない。


「クア!」


 ゴジョが自分もやりたいとばかりに飛び跳ねているけどー……無茶はさせられないしなぁ。


「気持ちだけで十分だよ。水が欲しかったら言ってくれ」

「クア……」


 残念そうにゴジョは鳴く。

 申し訳ない。

 ゲーム風で言うなら俺だけ特出した場所に無理して来ているんだ。

 攻撃に対して期待はさせられない。


「そもそもゴジョ、お前は生まれたばかりなんだから、もう少し甘えてて良いんだぞ」


 無理に俺の力になろうなんてまだしなくて良い。

 俺はゴジョの頬……えっと一頭身だから脇かもしれない所に手を伸ばして撫でる。


「クアアア……」


 うん、ゴジョが嬉しそうに目を細めてくれたから良いと思うしかない。

 魔物とはいえ生まれたばかりのゴジョに戦わせるとか、野生の動物でさえ真っ青な危険極まりない事はやっぱさせられないよな。

 幾らLvの急上昇で大きくなってきてると言っても!


 ぐー……。

 ゴジョのお腹が鳴っている。

 辺りに生えているキノコに目を向けるゴジョさん。


「ダメだぞ? お腹壊したらどうするんだ」

「クア……」

「ムウ……」


 何か一目で食料だって分かる物があれば良いんだけど。

 後は十分に注意しないと行けない問題を確認しておこう。


「フィールドが変化する時があるけど、それはいつ頃起こるかわかる?」


 一番注意しないと行けないのはフィールドが変わる事だろう。

 前回の時も変化した事で難易度が上がったと自覚している。

 あの草原っぽいフィールドだったらまだ楽だったと思うし。


『一応、目安となる事が起こる事はありますが、こればかりは運なので』

「へー……」


 なんとも難しい問題っぽい。


「とにかく、目新しい魔物が出てきたら注意して行こう。リーゼもお願いするね」

『はい。とりあえず次の段階に進む為にオイルタイマーで出口へ向かってください』

「了解」


 という訳で俺達はオイルタイマーを頼りに進んで行った。

 遭遇する魔物もそこまで驚異じゃない。


「ムウ!」


 フェーリカが狙い辛いラベンダーアイスリトルドラゴンにボーラを投げて絡め取ってくれたお陰で楽に倒す事が出来る。

 ウソみたいに順調だな。

 ゴジョとフェーリカのLv上昇が相変わらず凄い……何Lvまで上がって行くのやら。


 なんて感じにサクサク魔物を倒して進んで行くと、大きな森の広場みたいな所に見た事のあるゲートがある。

 上には謎の蔓が網目状に生えていて、蔓が所狭しに伸びている。

 高低差のある足場もあるぞ?

 その前方に見覚えの無い魔物が横になっている。


「リーゼ」

『はい。どうやらゲートを守護する魔物がいるみたいですね』


 ゲートの前に物凄く大きな、鎧みたいな毛皮を付けたイノシシ……ジョンブリアンアーマーワイルドボアと言う魔物がいる。

 名前が長いから鎧イノシシとしておこう。

 全長5メートルはある。凄く大きいぞ……。


『ちょっと待っててください』


 リーゼの使い魔が偵察とばかりに飛ばして近づく。

 鎧イノシシはリーゼの使い魔をなんとも思っていないのか無視って感じだ。

 多分、アレを倒さないとゲートを潜らせてくれないんだろうなぁ。


『分析を完了しました。上手く解析出来て良かったです』

「何かあるの?」

『はい。あの魔物は私達の基準で言う所のセミボスクラスの魔物で、そこまで強くない範囲なんです』


 セミボス……中ボスとかそんな辺りの魔物って事か。


「で? 解析って言うのは?」

『ええ、なんと驚く事に★3クラスでは内部にコアを所持している様なんです。ですがこれはチャンスなんですよ?』


 リーゼの使い魔が俺のアナライズリングの上に乗っかって、突く。


『セイジさん。アナライズリングに解析の項目があると思うので呼びだしてください』


 すると俺のアナライズリングが反応して一つの画面を映し出した。

 それは鎧イノシシをサーモグラフィーで見たかのような画面だ。

 あ、鎧イノシシのHPが浮かんでいる。


『まず装甲の薄い部分がここですね』


 と、赤い色合いの部分をリーゼが指示する。


『逆に硬い部分は暗く描写されていると思います』

「うん」


 で……頭と心臓の部分はわかるんだけど、喉辺りに球体の何かがある様に映し出されているのだ。


『ここがコア、魔物の心臓部です。ここさえ破壊できれば魔物は絶命しますから重点的に狙ってください』

「う、うん。わかった」

『後は……周りに色々と足場や蔓があるので有効活用して、行くと良いと思います。蔓に掴まると牙で岩か何かを掘削して投げつけて来る攻撃がこちらの情報にあります』


 何から何まで、リーゼのアシストがあると中ボスとは言え凄く戦いやすそうな相手に見えて来てしょうがない。

 頑丈な所と弱点がわかるだけでも、かなり差がある。


「ゴジョとフェーリカはどうしようか? 危ないから隠れていて貰うべきだよね?」

『はい。出来れば遠くから物を投げつけて挑みたい所ですが、手持ちの物資からは難しいと思います。危ないと判断したらオイルタイマーで帰還を』

「ムウ!」

「クア!」

『アビリティチップを上手く使ってください』

「うん」

『上手く行けばアビリティチップが増えますよ』

「え?」


 リーゼの言葉に俺は首を傾げる。


「中ボスを倒すとアビリティチップって手に入るの?」

『あ、話してませんでしたか? あのコアを破壊した欠片がアビリティチップの材料なんですよ。魔物の本体の欠片の力によって、特殊な力を授かるんです』

「へー……」


 良い事を聞いた。

 上手く仕留めれればアビリティチップが手に入る。

 そう思うと俄然とやる気が出てきた気がする。

 という事で俺は鎧イノシシに挑戦する事になった。



「いくぞ!」


 通路の脇でフェーリカとゴジョが隠れ、俺は鎧イノシシに向かって突撃する。


「はああああああ!」

「ブ! ブルウウウウウウウウウウ!」


 俺の接近を悟って鎧イノシシは立ち上がり、地面に牙を突き立て、岩を掘り出して転がして来る。

 そんな鈍い攻撃! 当たるものか!

 サイドステップで射線を逸らし、足場を駆使して鎧イノシシに近付く。


「ブルウウウウウ!」


 凄い鼻息を出しながら俺に向かって突進する鎧イノシシの攻撃を足場を使って飛び越え、方向転換しようとする隙を使ってなまくら剣で斬りつける。

 もちろん、先にリーゼの解析で柔らかいだろうと分析された脇腹の鎧の縫い目をだ。

 ザシュっと剣に確かな手ごたえがあったのだが、深く突き刺そうとした途端、ギュッと何か壁の様な感覚が当たって止まる。


「チッ!」


 急いで引き抜き、後ろの腿の隙間に再度突き刺す。


「ブウウウウウ!」


 これ以上深く攻撃すると反撃とばかりに牙を振りかぶって来る。

 当たる訳にはいかない。

 一撃離脱の後、俺を狙って頭を振りかぶった鎧イノシシから僅かに距離を取る。

 追撃とばかりに追いかけて来る鎧イノシシの攻撃を避ける様に、蔓を使い、足場を使って距離を取る。


 さすがにあの巨体では空中に逃げて別の足場に移動した俺を追えない。

 隙を狙う事は出来るみたいだけど、なまくら剣じゃ柔らかい所を狙っても深く入らないか。

 だが、切った場所から少しずつ血は出ている様だ。

 HPを見ると目盛りだけど10分の1くらい削れた。

 少なくともキメラの時の様な手も足も出ない相手では無さそうだ。


『セイジさん、十分に注意してくださいね』

「ああ」


 と言う所で、高台でこっちを睨む鎧イノシシが大きく息を吸う。

 なんだ? とりあえず、盾を持って防御……じゃなく急いで足場を降りる。

 そこで俺は選択が間違って居なかった事を悟る。

 なんと鎧イノシシが炎を吐いて俺がいた場所に吹き付けていたのだ。

 あの場にいたら焼け焦げていたぞ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ