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河童

「飼育魔に出来る魔物の卵ですね。しかもこの紋様は即時孵化まで出来るなんて……」


 紋様の方にも★が付いているようだった。


「飼育魔って確かフェーリカとか使い魔とも異なる魔物なんだよね?」

「基礎の視覚聴覚の共有は同じですが、他の部分に差異はあります。使い魔に出来ない魔物の方が多いですし……大きな違いは飼育魔は主よりもLvを上に出来る事でしょうか?」

「え? じゃあ使い魔は?」

「主よりも上になりそうになるとLvの上昇がストップします」

「じゃあ俺は?」

「セイジさんの場合、使い魔と言うよりも飼育魔の方が近いかもしれませんね……何分、偶然召喚してしまった挙句、契約が固定されている状態なので」


 とにかく河童を飼育魔に出来るって事なのかな?


「飼育魔って使役するのに特別な魔法とか覚えないと行けない感じなのかな?」

「いいえ、飼い主になる事自体は簡単ですよ」

「じゃあリーゼが登録する?」


 河童の飼い主にリーゼを……ってのは何か変な気をするけど。


「いえ、おそらく私が飼育魔の契約をしても、★の数など様々な要因で失敗する可能性の方が高いかと思います。ですからセイジさんが試してくれませんか?」

「わかった。じゃあどうしたら良いの?」

「まずは卵の紋様にアナライズリングを合わせてから……」


 リーゼに言われるまま、俺はアナライズリングを河童の卵に添える。

 ピコンと音が成ってアナライズリングの上に河童の卵を孵化させて主として契約するかの是非が問われる。


「良く考えたら魔物を飼育魔……飼う事になるんだよね?」

「そうなりますね」

「良いの?」


 俺と言うごく潰しって訳じゃないけど、割と金食い虫状態の奴と更に魔物まで面倒を見る事になる訳だけど。


「問題ありませんよ。セイジさんの持ってきた魔結晶でお釣りが来ますから」

「それなら良いんだけど」


 リーゼがとても面倒見が良くて助かるなぁ。


「生まれたばかりの魔物ってしばらく世話をする必要があるよね? 大丈夫?」

「実験もありますし、直ぐにゲートに挑む訳じゃありませんよ。それに飼育魔は成長が速いのと、Lvの上昇に合わせて急成長もします」

「そうなんだ? 俺の知るペットとは随分と違うんだね」


 むしろフェーリカくらいしか知ってるの居ないけどさ。

 と言うかフェーリカってレイオンと幼馴染って話だけど、何歳で寿命は幾つなんだろうか?

 まあ良いや、リーゼが許可するなら実験も兼ねて河童を孵化させてみよう。


 はい、の選択肢を選ぶ。

 するとローディングみたいな棒が出現して直ぐに振り切る。

 登録完了!

 って文字と共に河童の卵にヒビが入る。


「クアアアアアアアアアアアア!」


 パリンと勢い良く卵の殻が砕け散り……手の平サイズの緑色の河童の赤ん坊が飛び出した。

 橙河童と同じ外見をしている。一頭身の冗談みたいな体系をした魔物だ。

 小さな甲羅と皿……短すぎる手足……。


 河童 Lv1 ★


「えっと……★は1みたいだね」

「そうなんですか?」


 河童をリーゼ達に見せる。

 リーゼの方も魔法で河童を分析しているっぽい


「おやおや、卵の★が多くても生まれる魔物は★1だというのか」


 カーミュが眼鏡を持ちあげて分析交じりに答える。


「クア?」


 俺と目があった河童が俺の手の上で軽く飛び跳ねる。

 部屋にあったお菓子でも食べさせるかな?


「まあ、どちらにしても要観察ですね。名前を付けて上げたらどうでしょうか?」

「うーん……」


 河童だからなぁ。

 手に乗っている河童の赤ん坊はカエルの様なぬめりと冷たさがある。

 名前かぁ。


「クア?」


 河童って言うと西遊記とかのアニメとかだと河童だよなぁ。

 日本以外の西遊記とかだと違うらしいけど、有名所って感じに浮かんで来たから、そんな有名なキャラクターに成る様にって願いを込めて拝借しよう。


「じゃあゴジョって名前にしよう」


 沙悟浄からゴジョと言う部分だけを貰う。


「クア!」


 名前を貰って嬉しいのか、全身を使ってアピールしてくる。

 具体的には両手を伸ばして、俺に向かって鳴いてるだけだけど。


「やっぱ餌はキュウリ……この世界にあるかな?」


 似た野菜があったし、大丈夫か。


「ええ、確かありますよ。かと言ってキュウリだけじゃ栄養が偏りますから飼育魔の本で何を食べるか調べてみましょう」

「クア」

「まあ、とりあえず何か未鑑定箱を見つけたら届けてくれたまえよ。それじゃあ」


 なんて感じにカーミュは去って行った。

 そんな訳でゴジョの世話を俺はする事になった訳だ。

 とはいっても、日本のペットみたいに言葉が通じないと言う訳じゃ無く、飼育魔は割と物分かりが良いのもいるそうで、ゴジョはその分類に幸運にも入っていた。

 トイレや食事、更には俺達の言葉をちゃんと理解して、大人しくしている。


「クア」


 部屋の隅に設置した水槽がゴジョの寝床であり、素直にそこで休む。

 不思議なくらい良い子で驚く。


「それじゃあお休み」

「お休みさない」

「クア!」


 その日の夜は過ぎて行った。

 翌日はゴジョをみんなに紹介した。



 まあ、ドラーク学園はゲートに挑む為の研究者を養成する場所故に、特に警戒とかはされなかったな。

 ★3の卵から★1のゴジョが生まれたので、みんな興味津津に観察していたけど。


「クアアア」


 じろじろと見られてゴジョは緊張気味だった。

 俺が抱えると安心したみたいだけどさ。

 キュウリとか果物が主食で、生まれたばかりだと言うのにパクパクと良く食べている。


「あんまり食べ過ぎてお腹壊さないようにな」


 体積に見合わない量を食べようとしていたので注意する。


「それでセイジさん。ゴジョの能力値に関してですが」


 リーゼに尋ねられたので、答える。


「えっと上から――」


 で、判明したのは同個体の飼育魔である河童と比べたら高めだそうだ。

 この辺りが★の差なのかな?


「ところで、ゴジョをゲートに連れて行くんですか?」

「え? うーん……どうしよう?」

「クア?」


 置いてく雰囲気を悟ったのかゴジョが、さびしそうに鳴く。


「うーん……」

「後ろ髪を引かれますね」

「危ないからって置いてった方が良いのは分かるけど……ってこれ、リーゼが俺に思っていた感情と同じ?」

「ちょっと違うと思いますけど……はい」


 となれば、こんな時こそチャレンジ精神か。


「よーし、じゃあゴジョも一緒に来るか?」

「転送事故があったらどうするんですか?」

「ゴジョの★は1みたいだし、リーゼ達も同行してくれるんだから仮に転送事故が起こったらリーゼ側に行くでしょ」


 今回の実験はみんなでゲートを潜った場合、どうなるかで、俺がリーダーをする事になっている。

 もしも俺とみんなの★の差で飛ぶ場所が変わっていたなら、俺がリーダーで何か変化があるかもしれないとの事だからだ。

 だから★1であるゴジョはリーゼ達の方に行くはず。


「それに……もしもゴジョが俺の方に来たら守るさ」


 鎧の隙間にでも隠れていてもらえば守る事は出来るし、何かあったらオイルタイマーですぐに帰ってくれば良い。


「クア!」


 連れて行ってもらえると理解したのかゴジョが嬉しそうに鳴く。


「そう……ですね。ゴジョはセイジさんの飼育魔ですからセイジさんが決めたのなら私は強く言いませんよ」

「ありがとうリーゼ、じゃあみんなを待たせちゃ悪いし、行ってみようか」

「はい」


 そんな訳で俺達はゲートに挑む事にした。

 今回は城の騎士達と、リーゼ、ロザリー、レイオンにフェーリカが一緒だ。

 騎士達は当然、危ないけれど俺の護衛、レイオンとフェーリカは荷物持ちとして同行するって事になった。

 まあ、実験もあるし、遭遇した魔物は俺が率先して戦う事になっている。


「それではセイジ様、宜しくお願いします」

「うん」


 俺がリーダーとしてみんなとパーティーを結成して行く。


「あ、ちょっと待って下さい」


 みんなの登録を終えた後にリーゼが魔法を唱える。

 するとリーゼの手の中に小鳥が出現した。

 白い文鳥みたいな……魔物かな?


「小型の偵察用の使い魔です。念の為に呼び出しておきましょう。これも実験です」


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