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ブルーマンティコア

 突然地形が火山帯に変わった。

 かなり暑い。

 汗がじんわりと浮き出て来る。

 あまりの暑さにウンザリしつつ、探索を続ける。


「どんな空間なんだよ」


 周りを見渡すとあまりにも変化してしまった。

 遠くには火山があって、辺りには岩がごろごろと転がっている。

 しかも高い崖が行く道を制限している。

 そんな場所だ。


 マッピング自体が無意味になる事も然ることながら落ちている道具、ゴミの類も変わってくるみたいだ。

 ただ、俺が拾った物や加工した物は失われていないのは幸いか。


「お?」


 やはり落ちている道具も変化があるようだ。

 ピックが落ちていた。

 とりあえず拾って行こう。何が起こるかわからないし。


『アイアンピック』★★★ 付与効果、掘削


 鉄製のピックか。そんな感じだから当たり前だ。

 しかし……リュックに入りきれないなぁ。

 念のためにと結っておいた紐が役立つ。

 掘削があると言う事は何処かで掘る事が出来るのかな?


 残念だけど今は脱出が優先だ。

 武器として使わせてもらおう。


 と、歩いていると赤幼妖狐という子狐みたいな魔物と遭遇。

 見た目はかなり可愛げがある。

 尻尾は二つある。完全に化け狐だ。


「ケーン!」


 俺を見るなり思いっきり鳴いて突進してくる。

 敵意満載だ。

 俺は河童の槍を構えて突く。


「ケ――」


 横っ跳びで避けられた!?

 そのまま俺に向かって火の弾を吐きだしてきた。

 槍を引く隙だ。スケイルシールドで耐える。


 ガスッと良い音が響いた。

 盾が……熱い!

 やばいな。

 そう何度も受けていたら取っ手が熱を放って持っていられなくなるぞ。

 ポケットに入れていた皿の欠片を赤幼妖狐に投げつける。


「ケン!」


 サッと、ステップで避けられた。

 コイツ、すごく身軽だぞ。

 少しでも隙を見せると火の弾を吐きつけてくる。


「く……」


 と、盾で構えているとボフっと煙を吐き出してきた。


「うお!?」


 な、なんだ?

 視界が……歪んで来た。

 何度か瞬きすると、赤幼妖狐がリーゼの姿に映し出され、両手を広げていた。


 っ!?

 目を瞑る。

 するとリーゼが今日も睡眠時間を削って理論構築を行っている姿が浮かぶ。

 何度諦め掛け、それでもがんばって俺を助けようとする姿を見た。


 うん! アイツは偽者だ。

 妖狐と言うからには惑わす能力があると見ていい。


「騙されるか!」


 槍で突くと、赤幼妖狐は忌まわしいと言うかのように声を漏らして避けた。

 どうする? 幻覚能力を持っているとなると、厄介だぞ。


 ……そうだ。

 俺は河童から奪った水筒に入れていた水を槍に掛ける。

 その隙を火幼妖狐が突いて、こちらに駆け出してきた。

 そのまま河童水筒を投げつけ、回避運動を取らせた。


「喰らえ!」


 河童の槍で赤幼妖狐を突く動作をすると河童の槍から水弾が飛びだした。


「ケン!?」


 水の弾が赤幼妖狐に命中し、赤幼妖狐はびしょぬれになると同時に吹き飛んだ。

 二度バウンドし、それでも立ち上がる。

 濡れてものすごく調子が悪そうだ。

 この隙を逃すつもりは無い!

 思い切り力を込めて赤幼妖狐の胸を槍で貫いた。


「ケ――!?」


 一声鳴いたかと思うと赤幼妖狐は絶命した。


「ふう……」


 厄介な攻撃をしてくる奴だった。

 おそらく、惑わすのは煙を吐く必要があるからそこに気を付ければ良い。

 だが、こんな能力を持つ奴がいると言う事は落ちている道具に化けるなんて奴も居そうだ。

 とにかく、俺は絶命した赤幼妖狐の死骸を解体した。


 尻尾が二つ……何か便利そうだ。

 使い道が思い浮かばないのが厳しい所だけど。

 毛皮には火耐性とかありそうだ。

 同族を相手にする時に使えそうだから乾かしたら、スケイルシールドの取っ手に巻きつけておこう。


 しかし……リュックに入れるにしても重くなってきた。

 どうにかした方が良いとは思うけど……取捨選択をしなきゃいけなくなった。

 ちなみに魔物を一匹倒す毎に魔晶石が手に入る。

 小さいから問題なかったけど数が多くなってきたから、そろそろ諦めるべきだろう。


「うーむ……」


 河童の槍と相性の良い相手だったから助かった。

 だけど次はこうもいかないかもしれない。

 俺の知る狐は単独行動を望む生き物だが、迷宮内の魔物がそれに適応するとは限らない。

 十分に警戒するべきだ。


「しかし、暑いなぁ……」


 額に浮かぶ汗を拭って俺は火山を見つめた。

 現在、俺のLvは17にまで上昇している。

 何処まで行けるかわからないけど、戦えてはいる。

 ただ、定期的にマップが切り替わって魔物の種類が変わるとなると、厳しくなるな。

 そう……思いながら、歩き続けた。


 今度は昼夜がある場所らしく、日が沈んだ。

 火山の火で辺りは明るい。

 洞穴みたいな洞窟があったので、中を確認する。

 上手く行けば休む事が出来るだろう。


 そこに魔物がいた。

 ファイアエンジェルが三匹。

 何か羽の生えた綿埃みたいな魔物だ。

 俺を見るなり、魔法の詠唱に入った。


「先手必勝!」


 河童の槍から水弾を出して、ファイアエンジェルをずぶぬれにさせてから貫いた。

 バサッと、赤幼妖狐よりも弱く、倒すことが出来た。

 どうやら、生き物と言うより、エネルギー体みたいな感じっぽい。

 死骸を見ると羽しかなかった。後はドロップ品か。

 ドロップ品は一匹が落とした訳だけど……。


『火天使の羽飾り』★★★ 付与効果 火耐性


 羽飾りか……一応つけておこう。

 どっちかと言うとリーゼが付けた方が似合いそうな装備だな。

 帰れたらプレゼントしようかな。


 お? 何か付けたら少し涼しくなってきた気がする。

 気の所為かもしれないけど。

 とりあえずはこの洞窟を今夜の休憩場所として、辺りの探索をしていくとしようかな。

 なんて気楽な様子で、辺りの探索をした時、俺は想像もしない相手を見つけた。


 ん?

 洞窟からそれなりに離れた所で、大きな魔物……ブルーマンティコアという、ライオンの体にサソリの尾、蝙蝠の翼が生えた魔物が現れた。

 なんとなくイヤな予感がする。


「ギャオオオオ!」


 俺を見るなり、ブルーマンティコアは突撃してきた。

 く……俺はスケイルシールドを前に出して防御し、河童の槍で貫こうとした。

 だが――。


「うわ!」


 ブルーマンティコアのツメ攻撃がとてつもなく重く、スケイルシールドでは耐えきれなかった。

 思い切り弾き飛ばされてしまう。

 しかも河童の槍で突いたにも関わらず、ブルーマンティコアの毛皮はビクともしなかった。


「ガアア!」


 ん?

 ブルーマンティコアが後ろを振り向いて――

 ドスっと俺の腿に何かが刺さる感触があった。

 見るとブルーマンティコアのサソリの尻尾が俺の腿に刺さっていた。

 う……。

 何かを流し込まれる感覚がある。


「やめ――」


 槍をマンティコアの尻尾に振りかぶった。

 ここは弱いのか尻尾がアッサリと切り飛ぶ。


「ガアアアア!?」


 思わぬ反撃にブルーマンティコアは仰け反ってから走り出して俺に振り向く。

 ぐ……毒を流し込まれたっぽい。

 急いでスクロールにある解毒を使いたい所だけど、余裕が無い。


 というか、相手が悪い。

 今の俺では勝てそうにないぞ。

 やばいと思ったと同時に、非常用のスクロールに手を伸ばしていた。


「シャイニングLv5!」


 名前からして光を放つもんだと思う。

 残数は5。拾って置いて助かった。

 俺の予想通り、シャイニングのスクロールは強い閃光を放った。


「ガアアア!?」


 目が眩んだと言わんばかりにブルーマンティコアは目を強くつぶって悶えた。

 今のうちだ。

 足を引きずりながら俺は岩場の影に隠れる。

 とにかく、今は解毒をしなきゃいけない……思いのほか動けるな。

 って……スケイルシールドにはマヒ耐性があったんだ。


 おそらく、ブルーマンティコアの尻尾にはマヒ毒があると見ていい。

 それでも負傷してしまったからヒールで傷を癒す。

 だが、思いのほか受けるダメージが大きいし、碌なダメージが入らない。

 どうしたものか。


10時だと被るので、これから9時からにします。

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