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油断 3

「そうなのよ。歴代最高と言われる『カルミア』嬢と、完璧な聖女と名高い『シャルティ』嬢が見られるって社交界は話題沸騰中よ。その為の『イベント』もたくさん予定しているって聞いてるわ。だから参加しましょうよ。絶対……面白いから」



 明らかに楽しいトラブルが起きることを予感しているオリヴィアが私たちを誘う。

 


「ジアが行きたいなら参加しようよ」


「……じゃぁ、参加しようかな」


 トラブルに巻き込まれるのはお断りなので、イベントには近づかないでおこう。


 母が健在だったころにも何度か参加したピクニックの記憶は楽しい思い出しかない。


 ボートに乗って探検ごっこをしたり、珍しい蝶々を捕まえたり。

 大きな花冠も作った記憶もある。

 

 あの頃の記憶にふんわりと心が温かくなった。


 計画が上手くいって、首席卒業すればもう王家のピクニックなど参加することはないかもしれない。

 それならば行けるうちに思い出に浸るのも悪くない。


「イベントの中には神事も行うって話も出てるわよ」


 オリヴィアのその言葉にふと気が重くなる。


「神事かぁ……」


 ため息混じりに呟くと、「何? どうしたの?」とオリヴィアが尋ねた。


「今日、カルミアの神事の手伝いなのよ……」


「何よ、手伝いって。神事の時は神殿内は関係者以外立ち入り禁止のはずでしょう?」


 その通りなのだが、それが罷り通っているのが現状だ。


 カルミアが七つの時に聖女と認められてから数年は祖母が聖女としての仕事をしていたが、あの子が十歳になると完全にカルミアに引き継がれた。

 

 それからずっと、神事の準備も片付けも全て私がして、カルミアは『祈る』だけだ。

 

 幼かった故に祖母にサポート役を与えられていたが、私もやりたくもないし、カルミアの為にもならない。

 

 正直カルミアがどうなろうと気にならないが、神事が行えないと、国の安寧を損ねてしまう。


 大事なオリヴィアの国を混乱に落としたい訳ではないので、私がいなくなった後でも滞りなく神事が行えるように、カルミアにもそれだけはきちんと出来るようになって欲しいと思う。

 

 それでもサポートが欲しいと言うのなら、アカデミーの入学試験の成績の悪かった自分ではなく、『優秀』な友人に引き継げばいい。


 という話を『要所』を隠しつつ、ふんわり説明すると、「無理でしょ」とオリヴィアがばっさり斬った。


「あの子、頭悪いし」


「「「……」」」


 身も蓋も無いオリヴィアの言葉に三人が絶句する。


「いや、……でも。成績優秀って聞いてるけど。課題やら私がやってるにしても、授業中あの子が受けているんだし……。良くはなくとも、悪くはないんじゃないか……な?」


 少なくとも授業で答えを求められたら解答しなくてはいけない。

 祖母との授業など、ほとんど質問形式で、常に頭はフル回転だ。


「は? まぁ、教授によって差はあれど、授業は基本一方通行よ。質問することはあっても、質問されることなんてほとんどないわ。ゼミや研究室に入れば別だけどね。あの子と同じ授業をいくつか取ってるけど、稀に質問されても『謎のふんわり』で回避してるわよ」


 『謎のふんわり』って何?

 頭にハテナマークが飛び交う中、ヴュートが言った。


「でも、カルミア嬢は自信満々に『見に来て良い』って言ってたからそれなりに出来るんじゃないかな?」


「ヴュート……、貴方」


 オリヴィアは呆れたように呟く。


「すごいなぁ、ウィンドブル王国では神事は余程のことがなければ王族すら入れませんよ。ウォーデン王国は開かれた神事を行うんですね」


「何言ってるの、マクレン。言い方は良く聞こえるけど、そんなわけないでしょ。話聞いてた? 神事は聖女と限られた神官のみで執り行われるのよ」

 

「今回は、ジアがカルミア嬢の友人に神事のやり方を引き継ぎするのに『特別』に僕も神殿に入れるんだ。何かお礼の物を持って行かないとな……」


 そう言ったヴュートの言葉に反応してしまった。


 貴方のくれたものなら、あの子は何だって飛び上がって喜ぶわ。


 ひんやりと冷めた気持ちで内心呟くも、そんな感情を持つ自分にも嫌気が差す。


「……ヴュート、今日は授業も無いし、カルミアに渡す物をこれから街に探しに行かれてはいかがですか?」


 嫌味にならないように提案するも、彼は少し渋る。


「いや、君を置いて帰るのは……」


「私ももう帰りますよ。シルフェン邸に戻ったら図書室で調べたいこともありますし」


 神事の前に『暁の魔女』についてできるだけ調べておきたい。

 

 知らないことが山ほどありそうだと寒気すら感じる。

 

 

 今まで入学試験で手一杯だったけど、カルミアに先手を越される前にできる限りの予防線を張らなくてはならないのだから。


「そうか、じゃあ帰ろうか。オリヴィア、マクレン。僕らはお先に失礼するよ」


「またね、オリヴィア、マクレン」


「「またね」」


 そう言って二人で東屋を後にした。



 

 

 少し離れたところでオリヴィアとマクレンの弾む声が聞こえ、これからの用事を考えて重くなっていた気分が幾分か浮上し、思わず笑みがこぼれた。

 

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。


面白い、続きが気になると思って頂けたら、励みになりますので、ブックマーク、下の★★★★★評価をしていただけたら嬉しいです。

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