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フォンノイマンのレクイエム  作者: 加茂晶
6. パズルの絵
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6.19. 情報戦?

 だけど、白銀さんの「一撃」は、オレに幸運をもたらした。廊下の突き当たりにいた「SATもどき」2人が銃声を聞きつけて、オレがいる部屋の前を通過して、白銀さんが降りてくる階段の方へ向かったからだ。

 ドローンに彼らを追跡させて、オレ自身は音を立てないように気をつけて真っ暗な廊下へ出た。すると、すぐに赤い光点をいくつか見つけた。廊下に設置された監視カメラのようだ。

 だが、「深淵を見た時、深淵もお前を見ているのだ」と言ったのは誰だったか。一番近くにあった監視カメラのレンズがオレの方を向いている。

 これで「敵」はオレの位置を把握したハズ。…もうハッキングしている暇はない。きっと、白銀さんを含む数人の「SATもどき」は、間も無くこちらに来る。


 何故か不意に、時宮准教授から渡された「棒」で監視カメラを打ち付けると電気火花が散る…状況が頭をよぎった。これも白昼夢か?

 もしかすると…それなら…。オレは白昼夢に賭けることにした。「棒」をじっと見ると、ケーブルに近い部分を「棒」で打ち付けた。すると、「棒」は青白く光り、火花が散った。

 やっぱり。…予想通りだ。時宮准教授はきちんと説明してくれなかったけど、この「棒」には強力なスタンガンが仕込まれているらしい。だから、「棒」で叩くとこうなった…。

 監視カメラを叩いた直後、暗闇に光っていたいくつかの赤い光点は、全て消えた。つまり、スタンガンの高電圧で、「敵」の監視カメラのうち恐らく1階は全滅。他の階の監視カメラやシステム自体もダメージを受けた…と思いたい。

 間も無く白銀さんたちが、1階にいるオレを攻撃するためにやってくる。このまま1階で迎え撃つなら、少しだけ有利になった…かもしれない。


 これで1勝1敗。


 それにしてもだ。この状況から、白銀さんは里奈を捕らえている「彼」を守るガーディアンだと思う。それなら、オレは白銀さんを倒さなければ、里奈を取り戻せないのか?

 現実世界では格闘技なんてやったこと無いし、子供の頃から喧嘩はメチャ弱かったオレだ。まともに闘えば「SATもどき」の最弱の奴とだって、間違い無くオレは勝てないだろう。

 一方、白銀さんは「SATもどき」たちのリーダーのようだ。オレが白銀さんとその仲間たちを倒す…というのは、どう考えても無理ゲーだろう。

 それでも、里奈を奪われたままで良いわけがない。状況は厳しいけど、どんな手を使ってでも取り戻すんだ。


 …どうやって?


 オレと白銀さんがやろうとしていることが、かち合わなければ良い。オレは里奈さえ取り戻せれば良いし、白銀さんは「城」と「彼」を守れれば良いのだろう。

 それなら、オレは白銀さんの裏をかいて逃げまくる。それが、オレにできる最善だ。里奈を取り戻して「城」から逃げきるか、豊島たちがスナイプナビの映像を持って白銀さんの息のかかっていない警察に訴えることができれば、オレの勝ちだろう。

 

 2階と3階の「SATもどき」たちが白銀さんに合流した時から、オレは2階にいたドローンに探索を再開させていた。その結果、2階には誰もいないようだったが、3階に移動すると、かすかに物音が聞こえた。…この階にはきっと誰かがいる。


 1階のドローンは、1階にいた2人が白銀さんたちと合流した映像を伝えてき

た。白銀さんは直ぐに、ドローンが2人を追って来ていたことに気付いて撃ってきたが、合流した2人が邪魔になって外した。

 大きな銃声が間近に聞こえてきた。このままドローンが白銀さんから逃げれば、彼女は追いかけて撃墜しようとするだろう。そこで、オレは手近な部屋のドアをそっと開けて、静かに中に入った。

 白銀さんがあの時の「グリムリーパキラー」くらい冷静沈着であれば、1階の各部屋のドアを一つづつ開けてチェックしただろう。オレは、その可能性もあるとは思っていた。オレはドキドキして手汗をかきつつ、「棒」を握りしめてドアの内側でじっと構えていた。

 でも、今の白銀さんから見れば、オレは無害な虫けらに過ぎない。それなら今は、敵対するものを一つづつ潰して行くことが、彼女のとりそうな戦略だと思って賭けた。

 そして、オレの賭けは当たった。彼女はドローンを追って、オレのいる部屋の前を駆けて行った。…「SATもどき」たちも一緒に。

 さっきまでオレがいた部屋のドアは、わざと開け放しておいた。そこにドローンは入って行った。ドローンはそのまま窓から外に出ると、中の様子を映像として送って来る。

 白銀さんが、部屋の外から数発の銃弾を打ち込んだのだろう。またも銃声が轟いた。その後、僅かに時間が経過した後、部屋に突入した。…その様子も、ドローンから送られて来た映像で確認できた。

 それなら、ここからはこのドローンの制御を新庄に任せて、オレが「城」の外で様子を伺っていると見せかけるような動きをしてもらう。…時間稼ぎだ。

 その間に、オレは里奈がいる可能性が高い3階に向かうことにした。もちろん、1階の階段付近には最後のドローンの予備機を置いて、白銀さんたちの動向をチェックする。


 白銀さんたちがいなくなった後、3階のドローンは全てのセンサのゲインをMAXにして探索を続けていた。オレが3階まで登り切った頃には、人が中にいる可能性の高い部屋は1つに絞られていた。

 そこに里奈がいるハズ。そして、そこにはきっと…「彼」が待ち構えているに違いない。わざわざ、ここにオレを来させるために里奈を攫い、川辺にそれを伝えさせたのだろうから。

 だが、何故そんなことをしたのか?

 オレに用事があるなら、ただ呼び出せば良い。こんなことをする必要は無かったのでは? それでは済まないから、こんなことをしたのだろうが、それは一体何なのか…。


 ドローンを3階の廊下の警戒のために残して、慎重にドアを開けた。


 部屋の中は明るく、一瞬、目が眩んだ。すると、間近にカチリという音がした。撃鉄を起こした音か? やばい…間も無く撃たれるかも。

 頭の中が真っ白になった。


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