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【コミカライズ配信中!】ヒロインがヒロインしてくれません!! ~私は悪役令嬢なんです!だから王太子殿下の婚約者なんてお断りいたします!!~  作者: 朝姫 夢
王太子視点

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26.ローズがいい

『ローズがいい』

『いや、急にどうした』


 彼女が帰ったあと、ゼラに一応の誤解は解けたと話をして。ついでに彼女の夢の話も、少しだけしたあと。

 静かに頷いてくれた姿を思い出して、つい口をついて出てしまった言葉にゼラが怪訝そうにこちらを見ていた。


『やっぱり誰か一人を選ぶのならローズがいいなって、改めて思っただけ』

『いやいやいやいや。何を急に乙女みたいなことを』

『もともと乙女ゲームの登場人物なんだから、別にいいだろ?』

『そういうこっちゃないだろうよ』


 とはいえ、確かにゼラからしたら唐突すぎたのかもしれない。そこは一応反省しておく。


『っつーか、俺としてはその夢ってやつに興味があるんだけどな』

『まぁ、なぁ……』


 彼女が語った夢は、まさに乙女ゲームの世界の話。

 相手が誰なのかを理解していて、あえてローズはヒロインと仲良くしているのか。それとも無意識になのか。

 その辺りも、かなり気になるところではあるけれど。


『フレゥが言うように、ラヴィソン公爵令嬢が聖女だとすれば、だ。確かに聖女特有の力の可能性も否定はできない』

『確証は一切ないから、なんとも言えないけどな』

『けどそうじゃなかったら、同じ夢を何度も見るなんて普通あり得ないだろ?』


 彼女が転生者じゃない限り。


 そう小さく呟いたゼラの言葉を、考えなかったわけじゃない。むしろそう考えた方が、自然な気もしているから。

 でも、だとしたら。

 どうしてヒロインと仲良くしているのかが、やっぱり理解できない。


『たとえば、実は転生者だけど本人が気付いていないだけ、とか?』

『無意識で昔のことを夢として見ているってことか。確かにそれならあり得そうだけどなぁ……』


 そうだとしても、やっぱり色々と納得ができない。

 そもそも本当に転生者だとしても、ここと同じ世界観のゲームをやったことがあるとは限らないから。


『聖女って言われた方が、ぶっちゃけしっくりくるというか、納得できるというか……』

『まぁ、その辺りはおいおいでいいんじゃないか?それよりも今は、十年分のローズとの時間を取り戻したい』

『うん、まぁ……最重要事項だな、それ』


 そもそもにしてローズが見ていた夢と、俺の王太子スマイルが今までの関係性の原因だったのだとすれば。

 まず俺が彼女と二人の時だけは王太子スマイルを封印して、かつ本気なのだとアピールしなければ始まらない。というか、つまり今までは始まってもいなかったというわけで。

 そのためにも積極的にローズとの時間を作って、色々と彼女のことを知っていかなければならない。


『とはいえ、一人だけ贔屓するってのもまずいだろ?』

『むしろ今までローズとの時間を取らなすぎた。他の候補者たちと比べても、圧倒的に少ない』

『だからって、どうしようもないだろ』

『いいや?こっちはこれでも国のトップの息子だからな。方法なら、なくはない』


 むしろそれが一番いいとは思ってる。多少手間と時間はかかるけど。


『お前それ……割とグレーなんじゃ……』

『使えるものは親でも使えって言うだろ?だったら存分に使わないとな』

『いや、立っている者は親でも使えだから。立ってないのに使おうとするなよ』


 ゼラのツッコミはあえてスルーして、今後の算段をつけ始める。

 むしろ陛下から、なんて。誰もが納得せざるを得ない理由をつけない限り、また外野がうるさくなるだけだから。

 幸い我が家は、全員一致でローズを迎え入れることに決定しているし。そのための助力なら惜しまない人たちだろう。

 なにより、ローズを選ぶことが国にとって一番だと誰もが思ているからこそ。候補者たちの親以外に邪魔されるようなことは、考えられない。


『ってことでゼラ。陛下への進言を頼んでいいか?』

『あーあー。やっぱりそうなるのかぁ』


 俺が直接言うのもいいけど、それよりも王太子(おれ)の側近からの報告って形にした方がより信ぴょう性が増す。

 婚約者候補の中でローズに対してだけ、圧倒的に時間を割いていないってな。

 一応第三者であるゼラからそう報告されたとなれば、さすがに平等にしなさいと忠告せざるを得ないし、周りもそれを納得するしかない。

 一人だけ悪い方の意味で不公平なんて、許されるわけがないからな。


『どーせあとから陛下たちに色々言われるだけだろ?』

『たぶん褒められるんじゃないかな。臣下の使い方と、周りを納得させるための動かし方が上手になったって』

『こえぇよ、王族一家』


 だってこれから一生、そうやって生きていかないといけないわけで。それなら今から出来るようになっていかないと、今後が困る。


『昔から言ってるけど、俺はローズしか選びたくないの。そのために必要だと思えば、どんなことでもするさ』

『一応手段は選んでるから、反対はしないけどな』


 そう言いつつため息をついたゼラは、それでも言葉通り反対しているわけじゃないから。

 きっと頼んだ通り、数時間後には報告に向かっているんだろう。



 誰か一人を選ぶのなら、ローズがいい。


 ローズしか、選びたくない。



 俺が唯一本気で欲しいと思えるのは、彼女だけなんだから。



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