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【コミカライズ配信中!】ヒロインがヒロインしてくれません!! ~私は悪役令嬢なんです!だから王太子殿下の婚約者なんてお断りいたします!!~  作者: 朝姫 夢
王太子視点

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24.素顔のままで

 とにかくまずは、ローズの誤解を解こう!ということになったのまでは、よかった。


 問題は、その方法。


 そもそもにして今現在避けられている状態で、どうやって二人きりになって何を話すべきなのか。

 それをここ数日ずっと考え込んでいたせいで、ゼラには『いい加減にしろ!!』と軽く鉄拳制裁をもらったりもしたけれど。

 結局今までのことを素直に話すしかないと思って、迎えた当日。


「ローズ」

「どうかなさいましたか?」


 珍しく緊張しつつ呼んだ名前の主は、普段通りに振り返る。

 いつもだったらその何気ない仕草も可愛いと思うのに、今はそんな風に考える余裕すらない。


「その……今日の放課後、時間を取れないだろうか…?少し、話しておきたい事があるんだ」

「え、えぇ…、構いませんが……」

「本当か…!?ではサロン……あぁ、いや。執務塔にしよう。あちらならば側に護衛もいるし」


 つい昼休みに一緒にいたことがあるサロンに誘おうとしてしまって、そうと気づかれない内に慌てて執務塔に変更する。

 そもそもこんなにも簡単に了承が得られるとは思っていなかったから、あまりにも驚いてしまって。素直になろうと思ったからか、それすら顔に出ていたような気がする。

 ただ驚きすぎて、少しだけ日本人だった頃の俺も出てたな。そっちはすぐに引っ込めたけど。


「美味しいお菓子と紅茶も用意しておくよ」


 でもだからこそ、その言葉が覆らない内に約束を取り付けて。何より今までローズに向けていた、王太子スマイルを脱ぎ捨てて。

 本心からの笑顔を向ける。


「それじゃあローズ、放課後楽しみにしているね」

「っ…!?!?」


 今までとは全く違うことが分かったのか、ローズが珍しく驚いたような顔をしていたけど。

 あえてそこには触れずに、そのまま彼女に背中を向ける。


(ここで長々と話しても意味がないし、放課後の約束が出来たのならそれだけでも御の字)


 そう思っておかないと、あとでバチが当たりそうで。

 ただ嬉しさはやっぱり隠せなくて、言葉通り楽しみにしている気持ちが前面に出てしまった笑顔だった気もするけれども。

 まぁ、そこはむしろ結果オーライなんだろうな。



 そう、だから。


 今日ここから、ようやく本当の始まりだから。



「あぁ、よかったローズ。来てくれたんだね」

「お約束、しましたから…」


 放課後本当に執務塔に来てくれたローズを部屋の中に招き入れて、ソファまでエスコートする。

 当然この時間は最初から最後まで、王太子スマイルを出すつもりはない。むしろローズが来てくれた嬉しさをそのまま顔に乗せる。

 我ながら少しだけ、犬みたいだなと思わないわけでもない。けどそこはまぁ、今までが今までだったから仕方がないと思っておこう。


「ローズは紅茶はストレート?それともジャムを入れる?」

「え、っと……」

「あぁ。ちゃんとラヴィソン公爵領のバラジャムも用意してあるよ」

「…でしたら、それを……」

「何杯入れる?」

「え…?あ、いえっ…!自分でやりますので…!!」

「いいじゃない。やらせてよ。こんな風に二人きりでお茶が出来るのなんて、初めてなんだから」


 実際本当に二人きりでのお茶なんて、一度もなかった。

 他の令嬢達は二人きりになりたいなんて、直接は口にしなくてもねだってくるような子たちばっかりだったのに。


 けど、まぁ。

 本来はそれは許されないはずだから、ね。

 たとえ本当に婚約者同士になったとしても、未婚の男女が部屋に二人きり、なんて。何かがあっただろうと疑われるような行為だから。


 そう、だからこそ。


「あぁ、そうだ。ローズ。今日の事は内緒だよ?そういう約束で、みんな許してくれている事だから」


 最初に話しておいて、彼女を安心させてあげないといけない。


「私がどうしてもローズとちゃんと話をしておきたいと頼んだんだよ。外にはちゃんと護衛たちがいるから、大声を出せばすぐに入って来てくれるよ」


 もちろん俺は、こんなところで手を出すつもりなんて一切ないけど。

 だって俺は男だし誘った側だから、この状況を簡単に受け入れられるだけで。女性側からしたら不安でしかないだろうから。

 力で敵わない相手と二人きり、なんて。きっと怖いだろうし。


「勿論ローズがそんな事をしなければならないような事、私はするつもりはないから。安心していいよ」

「っ…!」

「それに、誰かほかの人間がいては……私は王太子として振舞わなければいけないからね。素顔のままでローズと話すことなんて出来ないと思ったんだ」


 実際、王太子スマイルではない笑顔、なんて。

 ローズ以外の女性になんて、誰にも見せたくはない。


 それに。


「ねぇ、ローズ?正直に答えて欲しい」

「え、っと……。はい、何でしょうか…?」


 今から俺がする質問の返答次第では、ヘコむどころじゃすまなくなるから。

 その姿を誰かに見られるのも、正直イヤだった。


「ローズは私の事が、嫌い?」

「っ!?!?」


 ねぇローズ?

 その驚いた顔は、どっちの意味なのかな?


 見透かされていたという驚き?

 それとも予想外のことを言われたという驚きかな?


「い、え……その……」

「ここには私達二人だけだから。本当の事を教えて欲しい」


 最後の言葉は、もうほぼ懇願に近かった。



 俺が知りたいのは、避けられていた根本の原因。



 そもそも王太子だからなのか。

 それとも性格的な問題だったのか。

 もしくは本当に、王太子スマイルが問題だったのか。


 どうにかできる部分なら、まだ救いはある。

 改善できる部分なら、これから努力していくから。



 だからどうか、もう一度だけ俺にチャンスが欲しいんだ。



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