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【コミカライズ配信中!】ヒロインがヒロインしてくれません!! ~私は悪役令嬢なんです!だから王太子殿下の婚約者なんてお断りいたします!!~  作者: 朝姫 夢
王太子視点

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15.ゲーム、スタート?

『なーんで桜なんだろうなぁ……』


 ポツリと呟いたゼラは、ただ疑問を口にしただけだったんだろうけど。


『日本で作られたゲームだからだろ?あんまり深く考えるな』

『素っ気な!!いや、ある意味真理だろうけど!!』


 代々学園に入学する王族のためにと用意された執務塔は、学び舎とは少しだけ離れた位置にあって。

 実はこの執務塔のそばにある花畑が、ヒロインとの最初の出会いの場所だったりする。の、だが……。


『いいか?そんなことよりも俺は今日、夕方になるまでここを出ないと決めてるんだ』

『まぁ、そうだよなぁ。下手に出歩いて、ヒロインに出会ったらたまったもんじゃないもんなぁ』


 入学式前にローズと会えたのは幸いだったけれど、その後はいつイベントが起こるのか分からないから。

 とはいえ実は今日、側近候補の一人との初顔合わせもあるので、速攻で城に帰ることも出来なくて。


 というわけで、仕方なく執務塔に篭ることにしたわけだ。

 幸いにも、やることは既にいくつかあるし。持ち込んでいる執務を片づけるにも、ここなら邪魔が入らない。


『で?待ち人はいつ来るって?』

『リジオン・ウストマチュスだろ?紫の。同じ学年だから、そろそろ来るはずなんだけどな』


 そうゼラが言った次の瞬間。まるでタイミングを見計らっていたかのように、扉がノックされた。

 いつもの護衛の彼に返事をして、待ち人を部屋の中に通させる。

 入ってきたのは当然、先ほどゼラが口にした人物。リジオン・ウストマチュス。

 紫の髪に黄色い瞳。眼鏡をかけた真面目そうなこの人物は、この国の宰相家の次男で。当然、ゲームの攻略対象者。


 ちなみに今まで彼との顔合わせをしてこなかったのは、何も避けていたからではなく。側近候補よりもローズを優先していたから。

 というか、両親もそれを許しているあたり本気度が分かるというもので。


「よく来たね」

「お初にお目にかかります。ウストマチュス公爵家のリジオンと申します」


 というわけで、本日ようやく初顔合わせとなったわけだ。

 デビューの日も結局ローズを優先したため、見かけた覚えはあるけれど話すのはこれが初めてだったりする。


「聞いているよ。こっちは私の乳兄弟で、ジェラーニ・ジプソフィール。私の生涯の右腕だ」

「初めまして、ジェラーニと申します。気軽にゼラと呼んでいただいて構いませんので」

「ありがとうございます。私のことはリジオンと」

「敬称は、いらないのですか?」

「王太子殿下にお仕えする者同士、遠慮などしていては肝心な時にお役に立てないかもしれませんから」

「では、遠慮なく」


 さすがのゼラも、今は本性を隠すことにしたらしい。

 まぁ、その内暴露するだろうから。いつまで続くのかは、本人次第なんだろうな。


「リジオン。君に私の名を呼ぶ権利を与えよう」

「殿下っ……!!はっ!ありがたき幸せにございます!!」


 形式的なものではあるけれど、一応これでリジオンは「フレゥ殿下」と呼べるようになったということ。

 まぁ別に、この辺りはゲームに沿う以前の問題で、側近にする予定である以上は必要な措置。これを許さない限りは、認めていないことと同義だから。

 こういうところ、本当に面倒だなと思わなくはないけど。まぁ、仕方がない。


 とはいえ、だ。


『なぁ、あのリジオンって、ゲームだとどんなキャラクターなんだ?』


 とりあえず今日は顔合わせだけだからと、明日からの一週間の予定を決めて彼を帰したあと。窓の外を眺めながら問いかけてきたゼラに、キャラクター設定とゲームの内容を思い出しながら簡単に説明する。


『まぁ……一言で言うと、真面目な王太子至上主義者』

『うっえぇ~……。お堅そ~~……』

『まぁそのお堅い真面目君を落とすのが、女性は楽しいんじゃないか?確か初めて恋を知るとかなんとか?』

『ありがちー。女子が好きそーなやつぅー』


 それを言ってしまえば、メイン攻略キャラが王子って……王道も王道で、ありがちじゃないのか?

 乙女ゲームなんて全然知らないから、その辺よく分からないけど。


『ま、次男だから家は継がないんだけどな。その分、国と王太子に忠誠を誓ってるってことだ』

『あー……なるほど、ねぇ……。つまりフレゥが、家を継げないあいつにとっての希望ってわけだ』

『希望?』


 何のことかと首を傾げたら、ゼラが器用に片方の眉をあげながら肩を竦めてみせて。


『あいつ、モチーフはトルコ桔梗だろ?トルコ全体なら、花言葉は優美、すがすがしい美しさってのがあるんだけどな。紫はそれにプラスして、希望ってのがあるんだ』

『希望、ねぇ……』


 なにが希望なのか、なんて。家を継げない貴族の子息たちからしたら、次期国王の側近になれるのは希望中の希望だろう。それだけで、将来安泰なわけで。


『あと何だったっけなぁ……。永遠の愛とか、感謝とか……あぁ!花嫁の感傷、なんてのもあったな!』

『もういっそ、ブライダルにでも使いそうな花言葉だな』

『いや、ブライダルに使われるんだよ。バラとかと同じで。花の見た目も、ある程度似てるところがあるし華やかだし。使いやすいんだろうな』


 そんな風に、とりとめもない会話をしていれば何事もなく過ぎ去って。

 結局側近候補との初顔合わせのみで、ヒロインが花畑に現れることすらなく一日が終わった。


 果たしてこの世界は、この後どうなっていくのか。


『なぁこれ。本当に……ゲーム、スタート?』

『さぁ?どうだろうな?』


 呟いた二人分の言葉は、誰にも聞かれることなく部屋の中に溶けて消えていった。



 本編では最初にちょこっと名前が出ただけだった、リジオン・ウストマチュス。

 見た目もですが、リジオンは名前からもトルコ桔梗を連想しました。


 トルコ桔梗は別名「ユーストマ(Eustoma)」「リシアンサス(Lisianthus)」

 その二つをもじって「リジオン・ウストマチュス(Lision Eustomathus)」


 割とモチーフの名前をもじってつけていたりします(笑)



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