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【コミカライズ配信中!】ヒロインがヒロインしてくれません!! ~私は悪役令嬢なんです!だから王太子殿下の婚約者なんてお断りいたします!!~  作者: 朝姫 夢
王太子視点

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11.それは逆効果だよ?

 とはいえ、流石に唐突過ぎて焦った。

 焦るあまり、本来ならば告げるべきでないことまで口にした気がしないでもないけど。


 それでも、そんな事すら今は気にならない。

 実際最有力候補は今も昔も、そしてこれからもずっとローズのまま。ローズだけが、その席に座れると決まっているから。


 貴族たちの今の力関係も含めて考えても、結局はローズが一番だという結論になる。

 ディジタリス公爵は財務大臣という肩書を持っているけれど、彼がこの国を支えている出資者というわけではないし。そもそもラヴィソン公爵家がこの国から出て行ってしまえば、かなりの損失になる。

 それを知っていても、娘を王族に嫁がせたいんだろう。

 とはいえ本人が直接家の権力を振りかざさない所を見ると、おそらくそこはしっかりと言い含められている。そうじゃなければ、あの性格だ。ローズに対して失礼な事を言い続けていただろう。


 第一、ディジタリス公爵にはこれ以上権力を持たせたくないと思っている者達が多すぎる。

 敵が多い上に、正直あの家は胡散臭い。

 今のところ確たる証拠は出てきていないので、何とも言えない所ではあるが。それでも気になっていることは、ある。

 まだ年齢的に政務に関われないのが悔やまれるところではあるけれど、こればっかりは致し方ない。

 一応ゼラには探るように言ってあるし、父上にも進言している。


 ただ、何よりも。

 候補者でありながら疑いの目を向けざるを得ないような相手を、本気で選べるわけがないのだと。

 その辺りは周囲もなんとなく感じ取っているらしくて。


 まぁ、そうじゃなくてもローズ一筋だと言葉でも態度でもハッキリと示しているから。

 下手に勘繰るような者達もいないし、むしろ微笑ましそうに見守られてる感すらある。

 それだって、ローズが努力家で優秀だと知れ渡ったからだ。


 なのに、本人には一切その自覚がない。


 いや、自覚がないからこそいいんだけど。

 自覚して努力をやめられたり調整されたりしたら、それこそ手に入れられなくなる。


 それじゃあ、困るんだ。



 そう、だから。



「……全く…。逆効果かもしれない、なんて。微塵も考えていないんだね…」


 立派な令嬢になるため、なんて。将来王妃になった時に困らないようにするためだと、暗に言っているように周りには聞こえるのに。

 本人はきっと、しばらく会わずに済むとか考えているんだろう。

 そういうちょっと抜けているところも、可愛いと思うけど。


「逆効果?何の話でしょう?」

「いいや。何でもないよ」


 離れて行こうとするローズに、少しだけ苛立ちを覚えながらも。

 いつものように王太子スマイルを崩すことはない。



 ねぇ、ローズ。君は分かってないでしょ?

 それは逆効果だよ?


 周りがその言動を、意味を、どう捉えているのか、なんて。

 きっと何一つ、気付いていない。



(頭はいいのにね)


 でもその分助かるよ。

 こちらの思惑通りに、物事を進められるから。


「じゃあ私も、次にローズと会う時にはもっと立派な男になっていないとね」


 そう返すこと自体、どういう意味合いを持っているのか、なんて。

 そこまで考えていないのも、なんとなく分かった。



 だから、ね。



 手加減なんて、しないことにするよ。



『で?結果外堀埋めるどころか囲い込みにまで発展しようとしてるわけだ?』

『逃がさないって決めた』

『だろうなぁ。立派な令嬢になります発言からの、返しが立派な男に、だろ?周りからしたらお互い将来のために覚悟を決めたように聞こえるよなぁ』


 そう。わざとそう聞こえるように返した。

 実際傍についていた侍従なんか、嬉しそうに顔をほころばせていたし。


『本気だよな、お前』

『当然。むしろたぶん一目惚れだった』

『おっも!!王太子の一目惚れとか重すぎて怖ぇんだけど!?』

『知るか。王族だろうが王太子だろうが、一人の人間だろ』

『そりゃーそうだけどな』


 ローズの言葉を都合のいいように使った自覚はある。

 けど、もとはと言えば俺から離れようとしていたローズが悪い。


 それに。


『俺はどうしてもローズを助けたいし、結婚するのならローズがいい』


 どういう形で、魔物に取りつかれるのか。

 それが、分からないから。


『ま、確かになぁ。それに正直、ディジタリス公爵家は……』

『何か、分かったのか?』

『いいや、なーんにも?けど……』

『けど、何だよ?』


 言い淀むゼラが珍しくて、先を促せば。

 少し困ったような顔をして、肩をすくめてみせる。


『あそこの家の家紋、ジギタリスなんだよ。令嬢も見た目がそれっぽいというか、連想させるというか』

『ジギタリス?』

『例のごとく花の名前だな。しかも花言葉は、不誠実、不真面目』

『それは、何とも……』

『さらに付け足すのなら、有毒だ。誤って食べれば、場合によっては死に至る』

『う、っわ……』


 ゲーム中では語られていないどころか、おそらく名前すら出てこなかっただろうモブ令嬢だろうに。

 そんな存在に、まさかそんな不穏な情報が乗せられているなんて。


『ま、用心だけはしておくに越したことはないのかもな。令嬢がっていうより、ディジタリス公爵家自体に』

『そうだな』


 意外とこの植物にまつわる知識は、バカにできないだろうから。

 世界観のモチーフとなっている手前、意味が無いとは言い切れない。


『間違っても食べるなよー?』

『誰が食べるか!!』


 どうせ食べるのなら、食べられるバラがいい。


 流石にそこまでは口にしないけど、本心である事に変わりはないから。

 毒だと分かり切っている花を、わざわざ口にする必要なんてないだろう。



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