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【コミカライズ配信中!】ヒロインがヒロインしてくれません!! ~私は悪役令嬢なんです!だから王太子殿下の婚約者なんてお断りいたします!!~  作者: 朝姫 夢
王太子視点

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3.そもそも悪役令嬢の定義が分からない

『……なんだよ、その顔』

『いや、だって……それが出来なかったから、ゲーム中も候補者どまりだったんだろ?それをまぁ、こんなに簡単に……』


 しかも未来の王妃だぞ?国母だぞ?

 そんな理由で決めていい相手じゃないだろ。


 そう言うゼラは、自分が王太子の右腕になるという自覚が十分にあるんだろう。

 だがこちらも、軽い気持ちで言っているわけではない。


『実際努力家なんだ。何よりヒロインさえいなければ、結局選ばれてたんだ。遅いか早いかの違いだろ?』


 それに今からなら、いくらでも王妃教育を施すことが出来る。

 性格が良いのなら、それに越したことはないのは事実だろうし。


『っつーかさぁ……それなら何で、悪役令嬢って呼ばれてるわけ?一応ヒロインをいじめたのは事実なんだろ?』

『それは魔物に取りつかれたから、だな。本来の性格とは別人のようになったって説明があった』


 というか、そもそも悪役令嬢の定義が分からない。

 ヒロインをいじめたら悪役令嬢?

 じゃあ例えば、ヒロインの方が間違っていたら?

 それにいじめってどこからなんだ?

 注意をしたらいじめ?身分通りの態度だといじめ?

 仲間外れだとか、明らかな悪意を向けない限り悪役とは言えなくないか?


『あー……なるほど。本来ならそういう事を一切しないような性格だったってことか』

『むしろ他の婚約者候補を蹴落とすような事すらしないほど、清廉潔白な性格らしい』

『いや、そっちの方がヒロインじゃん』

『だから、俺にとってはそうなんだって』


 "俺"という存在にとっても。

 "王太子"という存在にとっても。

 ローズ・ラヴィソン以上に最適な相手など、存在しない。


『つってもなぁ……。難しいぜ?正直』

『分かってる』


 どうして最有力候補と言われながら、学園が終わるまで選ばれないのか。

 それは貴族間の様々な思惑と、力関係が理由なのだ。


 ただ実際ラヴィソン公爵家は、今まで特に不祥事も起こしていないし。

 むしろ現在は領地の特産であるバラを化粧水に取り入れて、国内外でかなりの人気を誇っている。

 国の財源の一つとして、かなりのウェイトを占めているのは事実だった。


『一番手元に置いておきたいよな。国としても、王族としても』

『だから彼女が選ばれるのはほぼほぼ確実なんだよ。それをいつにするかってだけの話なんだ』

『けど、他の家にだって箔ぐらいは必要なんだよ』

『それも、分かってる』


 選ばれるかもしれないという、箔。

 一度は候補者になったほど、優秀なのだというそれは。

 今後の家の発展のためにも、必要不可欠なんだろう。

 だから、最初から一人に絞る事はほぼ不可能。


 ただ。


『途中で宣言するのは、ダメじゃないだろ?それに初めから一人だけ特別に扱えば、周りが気付く』

『まぁ、だろうなぁ。王太子殿下のお気に入りのご令嬢、なんて。明らかに未来の王妃様だもんなぁ』


 家柄容姿共に問題なく、更に候補者にも残るほどの令嬢。

 その中の一人だけを特別扱いすれば、嫌でも周囲が動く。

 それが、俺が生まれ変わったフレゥという人物だった。


『王族ってのは本当に面倒だよなぁ。そういう事一々考えて、行動しなきゃいけないんだから』

『その王族の右腕なんだからな?しかも未来の国王の』

『なー。マジでなー。気づいた時本気でビビったんだからな?今では当然だと思って受け入れてるけど』


 こんな感じではあるが、実はゼラは意外にもかなり真面目だったりする。

 実際俺が王族らしくない言動をとれば、すぐに注意してくれるだろうという安心感がある。

 先に前世を思い出していた分、妙に達観しているのかもしれない。


『ま、とりあえず何とか頑張りますわ。情報収集なら我が家の十八番だし、俺もスキル磨いておく』

『あぁ。頼んだぞ、ゼラ』

「お任せを、王太子殿下」


 最後だけこの国の言葉で言うあたり、茶目っ気だけは元からの性格なんだろう。

 流石におかしくて、二人して顔を見合わせて笑ってしまったが。



 さぁ、これから忙しくなるぞ。


 必ず生き残らせてみせる。


 悪役令嬢になんて、させるものか。



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