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【コミカライズ配信中!】ヒロインがヒロインしてくれません!! ~私は悪役令嬢なんです!だから王太子殿下の婚約者なんてお断りいたします!!~  作者: 朝姫 夢
王太子視点

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1.何者かの自覚

 お待たせいたしました!

 本日より王太子であるフレゥ視点、連載開始です!!



 幼い頃からずっと、意味の分からない言葉を発することがあった。

 頭の中に浮かぶ光景は、見たこともないはずなのに。

 なぜかそれが実在しているのだと、疑いもせず。



 それが、自分の前世に関わる事だったのだと。


 気づいたのは、本当にある日突然。唐突に。



『…………いや、フレゥってゲームのキャラクター……』



 呟いた言葉は、目が覚めて第一声だった。

 しかも困ったことに、日本語で。


 自分が元日本人で、現在はフィオーレ王国の唯一の王太子。フレゥ・ドゥ・フィオーレだと、認識をして。

 さて、どちらが自分なのだろう、なんて。

 思ったのは一瞬だった。


『いや、どっちも俺だろ』


 何者かの自覚は、ほんの数秒で終わった。

 それはひとえに、このフレゥの体が優秀だったからなのか。


 そして日本語の時は前世の一人称や話し方になるのだと、声に出して気付いて。


『……普段は、今まで通りにしよう。うん』


 フレゥは一人称は"私"だったはずだ。何よりつい昨日まで、自分はそうやって生きてきた。

 話し方だって、きっと全然違う。

 だからきっと、それでいい。どちらかに合わせる必要もない。


 ただ。


『あのゲーム、割と王子は馬鹿じゃなかったか…?』


 真偽のほどは分からない。

 だがゲームの中のフレゥ(じぶん)は、勉強は出来るのに婚約者を蔑ろにして。

 あまつ彼女の努力全てを否定した上に、魔物に取りつかれた婚約者を殺してしまう。


 何と言うか……完全にダメ男だった気がする。


 いや、確かに勉強は出来たんだ。勉強は。

 でも貴族だとか王族だとか、そういうしがらみが付きまとう身分のはずなのに。

 なぜか彼が選んだのは、庶子である男爵令嬢。


『……明らかに、王妃にしちゃいけない人物だよな。普通に考えて』


 それに比べて婚約者のローズ・ラヴィソンは、頭脳明晰な上に超絶美人。さらに努力も怠らない素晴らしい女性だった。

 そう、バカな王子が彼女を切り捨てるまでは。


『…………』


 いや、俺はローズの方が好みだし。


 妹がリビングでやっていたゲームだから、内容は割と知っていたけれど。

 最後に必ずローズが殺されるのだけは、なんだかどうしたって納得がいかなくて。

 女子ってこんなゲームが好きなんだなぁ、なんて。あの頃は少しだけ冷めた目で見てたのを覚えてる。


 ちなみに気になって攻略サイトを見てみたけれど、ローズ救済ルートなんてものは一つも存在していなかった。


 それが、現実に。

 しかも自分が当事者になるだなんて。


『……いや、だから。俺はヒロインなんかよりもローズを選ぶんだって』


 でもこのままいけば、ゲーム通りに進んでしまうかもしれない。



 それは、嫌だ。



 幸いな事に、自分の記憶は日本人としてもフィオーレ王国の王族としてもはっきりしている。

 記憶の混濁とかも、今のところは感じられない。


 それなら。


 この知識を使って、ゲームには存在していなかったローズ生存ルートを目指せないだろうか?


 そう、例えば。

 婚約者候補、なんて曖昧な関係じゃなくて。

 いっそのこと、ゲームが始まる前に本当の婚約者になってしまえば。


 そうすれば、未来は変えられるかもしれない。


『とはいえ、まぁ……一人でって言うのも、まぁまぁ難易度高いよな……』


 だが当てがないわけでも、ない。

 むしろ時折呟く不思議な言葉に、乳兄弟であるジェラーニ・ジプソフィールは答えてくれていた。

 彼も、もしかしたら……。


『ゼラなら、情報を集めるのも難しくないだろうしな』


 今までどこか寂しそうな顔でこちらを見ていたこともあったゼラの、あの表情の理由が。

 もしかしたら同じ元日本人、つまりは転生者なのかもしれないと思えば。

 すぐに確かめずにはいられなかった。



「あとでゼラを呼んでくれるか?」


 朝の支度をしに来た王太子付きの執事に、そう告げて。

 何事かと不思議そうな顔をしてやってきたゼラに、日本語で話しかけてみれば。


『やっぱりか!!』


 そう、嬉しそうに肩を抱かれた。



 まだ小さな子供でしかない自分たちは、それでも立場も身分もよく理解していた。

 ただ日本語で話すときだけは、日本人らしく対等でいよう、と。

 そういう約束もこの時に同時に交わしておいたのは、正解だったのかもしれない。


 こうして近すぎる距離感でいられる時間は、実際には残りわずかだったから。


 だから、こそ。

 その間にゼラには全て話しておこうと、決意したんだ。



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