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40.悪役令嬢から聖女になった私は、今日も婚約者様に愛を囁かれています

「好きだよ、ローズ。その瞳に私を映して?」


 話し合いをしてから一か月後。

 ようやく学園にも通えるようになったフレゥ殿下に誘われて、最近では週に一回必ず放課後お茶をしている。

 しかもわざわざ、誰も邪魔をしに来ない執務塔で。


 お昼はジャスミンと一緒だったりすることが多かったけど、最近ではそこにジェラーニが加わることが増えていた。

 それがフレゥ殿下の復帰と同時に、四人での食事に早変わりしてしまって。

 おかげで毎回、ジャスミンとジェラーニの言い合いが絶えない絶えない。

 でも本当に仲が悪いわけでもなさそうなので、正直放っておいているけれど。


 ただ、ね。


 お昼休みはまだ大人しかったフレゥ殿下が、放課後になるとあら不思議。

 なんか、こう……妙に甘くなるというか、なんというか……。


『だーから!俺の目の前で口説くなっつーの!』

『しょうがないだろ?ゼラが常に傍にいるのが悪い』

『だから俺はそういう役目なんだっつーの!!結婚するまで手は出すな!!』

『出してないだろ?ちゃんと常識の範囲内だ』

『口説くのは常識か!?なぁ!常識なのか!?』


 一応途中でこうやって、ジェラーニからの制止の声があるからいいけれど。

 それが無かったら今頃どうなっていたのか。

 なんかちょっと怖いので、考えないようにしている。


 と、いうか……。


『ジェラーニジェラーニ』

『ん?』

『婚約者様が私のことを好きすぎるんですけど?』


 王家とか貴族とか色々な思惑を疑っていた私がバカみたいだったと思うほど、毎回毎回こうやって飽きもせず甘ったるい顔を向けてくる人を前にして。

 流石にその言葉を疑うとか、出来るわけがなかった。


『今頃気づいたのか?言っとくけどこれ、昔からだから』

『昔から!?』

『割とマジで一途なんだよなぁ、フレゥって。そいつの口からラヴィソン公爵令嬢以外の女のファーストネーム、出てきたことねぇもん』

『それはそれで極端!!』


 いや、まぁ、分かるけど。

 下手に名前なんて呼んだら、どういう憶測が飛び交うか分からないから。

 そこは理解できるんだけど…!!


「ローズ?どうしてゼラとばかり話しているのかな?」

『うぇっ…!?』

『あぁ、こっちの言語じゃなきゃダメなのか』

『いや、そういう事じゃなくて…!!』

「じゃあ、私を見て?ゼラばかり見ているなんて、ローズは酷いな」


 なんでそうなるの!?!?

 ちょっと第三者に意見を求めただけじゃん!?別にジェラーニを見つめてるわけでもないのに!!


「ねぇ…ローズ?」

「はぅっ…!」


 みっ……耳元で話さないでっ…!!くすぐったい…!!


「私を見て?ローズ……。君の婚約者は、ゼラじゃなくて私だよ?」


 ちょ、まっ…!!

 待って待って!!変な声出ちゃうから!!


「ほら、ローズ?私の愛しい婚約者?」

「ぁ、んッ…!」


 あああぁぁぁぁっ…!!だからもうっ!!

 くすぐったくて変な声出ちゃったじゃんかああぁぁぁっ!!!!


『うーわ……。俺がいる前でそこまでするかよ。いいのか?自分の好きな女のそんな顔とか声とか、他の男に見せたり聞かせたりして』

『本音を言えば嫌だ。けど……』


 え、待って…!!

 ホントに待って…!!

 今必死で声が出ないように口を押えてるところだから…!!


「ローズの瞳に私が映らないのは、もっと嫌だな?」

「んんッ…!!」


 見る…!!見るからちょっとホントに待って…!!

 恥ずかしすぎるから…!!


「い……意地悪しないで下さいませ……」

「あぁ、やっとこっちを見てくれた。それに意地悪なんかじゃないよ?ローズが可愛くて仕方がないんだ」

「そっ…!そういう事をどうして恥ずかしげもなくっ…!!」

「真実だからね。仕方がないよ」


 なんだこれ!?なんなんだこれ!?

 違う意味で公開処刑じゃない!?

 なんでよりにもよって知り合いの前で、私は青い王太子様にこんな目に遭わされてるわけ!?!?

 あと、なんで中身日本人のはずなのにそんな恥ずかしいセリフをサラッと言えちゃうわけ!?!?

 意味分かんない!!!!


「ねぇローズ…好きだよ。君だけが……本気で、好きなんだ…」

「ぁ、ぅ……」


 愛おし気に、切なげに見つめられて。

 少しでも目を逸らせば、耳の中に同じことを吹き込まれて。

 そんなことを、毎回毎回本当に飽きもせず。


『だーめだなこりゃ。ま、前々から分かり切ってたことだけど』


 一人諦めたらしい声が聞こえたけれど、それでもいなくなる気はないらしい。

 それがありがたくもあり、恥ずかしくもあり。



 ある日自分が、ゲームの悪役令嬢だと気づいた時から。

 何が何でも回避しようとしていた未来は、回避できたけれど。


 代わりに、違う未来に捕まってしまった。


 それを嫌だとは微塵も思わないけれど、まさか一番避けていた人物の婚約者に収まる事になるなんて。

 あの時は、想像もしていなかった。


 しかも、こんなに積極的な人だったなんて。

 社交界デビュー以前の彼の行動が、今では可愛く見える。

 むしろあれでかなり抑えていた方なんだと、今になってようやく分かった。



 ゲームのヒロインだったはずのジャスミンは、晴れて恋人になった相手と卒業後の話をしたり、デートをしたりしているらしいけれど。



 悪役令嬢から聖女になった私は、今日も婚約者様に愛を囁かれています。



 これにてローズ視点の本編完結です!!


 そして次回から、満を持してフレゥ視点の連載開始です!!

 ご要望も何度かいただきましたので、きっと心待ちにして下さってた方もいらっしゃたのではないでしょうか。

 ぜひ本編の"あの時"の裏側を楽しんで下さい♪



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― 新着の感想 ―
[良い点] 本編完結おめでとうございます! お疲れ様でした(〃艸〃) ずっと楽しんで読ませて頂きました。ありがとうございました! 次話からフレゥ殿下視点なのですね( *´艸`) ローズが避けてきたあ…
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