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36.前とは状況が違いすぎる

 総合PV数が50万を、ユニーク数が10万人を突破いたしました!!

 いつもお読みいただき、本当に本当にありがとうございます!!m(>_<*m))ペコペコッ



 ようやく学園が再開したのは、事件が起きてから一か月後の事だった。

 それでも異例の速さで再開できたのは、学園内外の警備の強化を図ったからだけではなくて。

 実は生徒が誰一人いない状態で、私が学園の中を隅々まで見て回ったから。


 当然魔物はいないと確信が持てた状態で、厳重な警備の中ぞろぞろと学園内を移動して。

 そうして少しでも魔物の気配が残っている場所があれば、そこに触れてあの柔らかなあたたかい力を注いで。

 いわゆる"浄化"というものらしい。

 これをしておけば、逆に魔物はその気配を嫌って寄りつかなくなるのだとか。

 なので実は、今度の長期休みにはできる限り国内をまわれないかと言われていたのだけれど。

 流石にそれはフレゥ殿下が止めてくれたらしくて、やるならせめて王都だけにという話になった。


 『まぁ、ね。卒業したら時間はいくらでもあるからね。

 それこそパフォーマンスの一環として、各地をまわればいいよ。

 何なら新婚旅行も兼ねて、ね』


 なんて。

 冗談めかして手紙には書かれていたけれど。

 その言葉にこっちがどれだけ悶えたのかなんて、きっとあの青を纏う人は知りもしない。


 そんな風に、手紙でのやり取りは割と頻繁に行っていたけれど。

 実は本人とは、あれ以来全然会えていない。


 だから、こそ。


「一度会って、話がしたいのに……」


 ジャスミンを一人サロンで待ちながら、ポツリと零した言葉は紛れもない本心。


 実は学園は再開したものの、未だにフレゥ殿下は登校出来ていなくて。

 学園内でしかも自分の婚約者候補が起こした事件なのだから、他人に任せきりにはできないと色々奮闘しているらしい。

 実際ルプレア様も、フレゥ殿下にはちゃんと面会して話をしているらしく。

 ディジタリス公爵の汚職の件に関しても、実は調査を進めていたのはフレゥ殿下指示の下だったからと、そちらの仕事も大詰めで忙しいらしい。


 と、教えてくれたのは。

 なぜか自分は何食わぬ顔で登校している、本来フレゥ殿下の右腕のはずの男。ジェラーニ・ジプソフィール。


『フレゥはラヴィソン公爵令嬢に会いたがってるんだけどな。流石に仕事を途中で投げ出すことは出来ないからって、手紙だけ預かってる』

『そう、なの……。無理してなければいいけど…』

『その言葉だけで、あいつ多分あと一週間フルで働けるぜ?』

『何で無茶な方向になるの!?』


 なんていう風に、割と彼ともフランクに話せるようにはなったけれど。

 ただ彼曰く、私を名前で呼ぶことだけは勘弁してほしいとの事だった。


 まぁ、彼からしたら未来の王妃が確定したようなもので。

 未来の国王の右腕なら、その妃も当然上司にあたるのだとか。

 真面目なの?と聞いたら、どこからどう見たって真面目だろ!?と返ってきたその言葉は、明らかに冗談っぽかったけれど。

 実際真面目なのは本当なのだろう。


 だって彼が学園に戻ってきている一番の理由は、私を守るためだから。


 民衆へのお披露目はまだまだ先だけれど、貴族達はローズ・ラヴィソンという名前を良く知っている。

 むしろ未来の王妃候補として、かなり注目していただろう。

 それがいきなり聖女でした、なんて。寝耳に水もいいところ。


 でも逆に言えば、今のうちに仲良くなっておこうとする人たちも少なからずいるわけで。


 前とは状況が違いすぎる今、一人でいたくてもなかなか一人にはなれなくて。

 もちろん一人にならない方が安全なのは分かっているので、私もその辺りは仕方がないかなとは思っている。

 ただいくら聖女が判明した、学園の中にいると言っても、同じ生徒同士。

 そこは何が起こるか分からないからと、生徒全員が常に使用人を連れる事を許可されて。

 さらに職員室を訪れる際は、今後は予約制になった。


 これに関しては、今後の魔物対策にもなるから大賛成。

 実際時間になっても来ない生徒がどこにいるのか、魔法をかけた予約の紙を持っていれば簡単に追跡できるようになったから。

 そうそう事件なんて起こらない場所だけれど、それでも何があるのか分からないと今回で全員が思い知ったんだろう。

 特に本来一番警戒され、厳重に警備されるはずの婚約者候補が魔物に取りつかれるなんて。王族に最も近いはずの人物の中にすら潜り込めるなんて誰も思っていなかった。


 そう、誰も思っていなかったから。

 時に集団パニックを起こしかねないと、常に一定の距離を保ってジェラーニが私の側にいてくれるのだ。

 もしもそんなことが起こったら、一斉に生徒たちが私に群がってくるだろうから、と。


『ない……とは、言い切れないのが怖いところなんだけど?』

『だろ?だからフレゥとも話して、今回俺はこっちかなって。俺のこと知ってるのは、後はピンク髪だけだし』

『……未だにジャスミンの事、そう呼ぶんだ…』

『無実だと証明できたわけじゃないからなぁ。それにほら、こうやって俺がお近づきになれなかった最大の理由だし?』


 彼曰く、本来ならばもっと早く私と友人になって、常に情報を集めつつ守ろうとしてくれてたらしいけれど。

 私がジャスミンとばかり一緒にいるから、それが出来なかったのだと。


 いや、それ聞いた時にね?私、思ったんですよ。

 いくら右腕といえども、あなたも男だからね?そういう事されると、私の評判落ちるからね?と。


 確かに婚約者候補を選ぶ張本人が指示したのなら、そこの間では問題ないんだろうけどさ。

 何も知らない周りからしたら、明らかに私とジェラーニが怪しい関係に見えただろうな。

 そういう意味でも、最初に人探しを断っておいて良かったと胸をなでおろした。

 ちなみにどうでもいいけれど、最近かなり大きくなったのでなでおろした胸は重……いや、何でもないです。


「お待たせしましたー!」


 勝手な理由で邪険にされていたジャスミンが、ようやくサロンに到着した声が聞こえて。

 私は一人思考に耽っていた頭を、目の前の人物へと切り替えたのだった。



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