31.デート大作戦!!
『そう、囮作戦。またの名を、デート大作戦』
デート大作戦!!なんか怪獣大作戦みたい!!
あ、いや。全然意味は別物だけど。
あとなに?そのネーミングセンス。微妙にダサい。
『ちなみに名付けたのはウチの両親なんで』
あ、ごめんなさい国王様、王妃様。ダサいとか思ってごめんなさい。
『あの人たち、割とそういう所ノリがいいというか…。まぁぶっちゃけ、ローズを逃がすなって言われてるんだけどね?』
『ですよねー』
『聖女だからね。取り込みたい気持ちは、王族としては分からなくはないけど…。俺はローズを道具みたいに扱いたくはないんだよね』
何気なく言われた言葉に、少しだけドキリとしてしまったのは。
あまり気持ちがいいわけではない裏の現実を、何一つ包み隠さず話してくれているところに。
すっと本心を伝えてくれたからなのか。
まぁ、どっちにしても。
『どうせ拒否権がないのなら、とことんやらないと』
『そうこなくっちゃ!』
断れないのなら、もう仕方がない。
やりたくないけど。ものすごーーーーっく、やりたくないけど。
囮とか、何考えてるんだと思わなくもないけど。
ま、その分ちゃんと守ってくれるだろうし?
何より実の息子すら囮に使おうっていう、その決断をした国王陛下御夫妻も相当な覚悟だっただろうし?
臣下としては、それに応えないわけにはいかないんですよ。
それに……。
『デートって事は、ルプレア様を本気で疑って……』
『うん、そうだね。正確に言えば、ディジタリス家が怪しいと思ってる』
『やっぱり…』
フレゥ殿下が言うには、ルプレア様よりも父親の方が怪しいらしく。
もちろんルプレア様も、王家に嫁ぐことに関してはノリノリらしいけど。自分から聖女だとは、今も口にしていないらしい。
実際学園の中でも、もしかして、ぐらいに囁かれているだけで本人は何も言っていないし。
ただし「分からない」と否定も肯定もしていないから、あわよくばとかは考えているんだろうな。
正直、あんまり気持ちのいいものではないけど。
なのでまぁ、正直それで本当に犯人が炙り出せるのならアリかな、と。
違うのなら違うで問題ないわけだし。
ただ……。
「……綺麗だね、ローズ」
「あ、の……。ありがとう、ございます……」
ちゃんと囮だって伝えてはいたけれど、それはそれ、これはこれ、と。
誰って、お母様が一番張り切ってしまって。
結果。
私は清楚なイメージをと、髪色と同じ赤いドレスに純白のレースをあしらったドレスを着せられて。
白い絹の靴下に、これまたドレスと同じ色の赤い靴。ヒールはちょっと高めにして、ちゃんと殿下に寄り添うように歩きなさいとお母様から指導を受けた。
その指導が本当に必要だったのかどうかは、正直謎だけれど。
それと……。
「その、バレッタ……つけてきてくれたんだね。嬉しいよ」
「っ…」
至近距離でその眩しい笑顔はっ…!!
目がっ…!!目がああぁぁっ…!!
目に毒だよ、これ……。
でも実際、フレゥ殿下が言う通り。
子供の頃にプレゼントされた、ゲームの中のローズがつけていたバレッタ。
今日はあえて、これを選んでつけてきた。
だって。
「デート、ですもの……」
「ローズっ…!!」
というのは建前で。
……いや、半分くらいは、本心だけれども。
でもほら!デート大作戦じゃん!?
しかも本当にルプレア様が魔物に取りつかれているのなら、これ以上ない煽りじゃない!?
実は私だけ花以外に贈り物を頂いていたんですよ、なんて。
「あぁ、本当に……綺麗で可愛くて…。ローズを一日一人占めできるなんて、私は本当に幸運な男だな」
「あのっ……褒めすぎですからっ…」
それはそれはとろけそうな笑顔でそういうフレゥ殿下は、たぶんわざと大袈裟に言っているんだろうけれども。
外でそれをやられた私としては、たまったものではない。
ちなみに本日は、格好からも分かる通りお忍びデートなんかではなく。
きちんと王侯貴族のデートなのです。
なので行先は、まずは王族御用達の高級レストランにて食事。その後はオペラを楽しんで、ディナーもご一緒してから帰宅、と。
それはそれは、完璧なまでのフルコースデートなのですよ。
ただこれは、あくまで囮作戦。
そう、だからこそ。
人目に付きやすい場所で、わざわざ食事をする訳で。
本来だったらお城に呼びたかったんだと、オペラの休憩時間にそっと耳打ちされた。
うん、そう、だから。
明らかに周りから注目されているのも、仕方のない事で。
いつもと違う状況だから、ドキドキしてるだけで。
これは決して、異性に対してのドキドキなんかじゃない。
そう、そのはず。
なのに……。
『ローズとだったら、こうして楽しく過ごせるのにな…』
日本語で小さく零された呟きを聞き取ってしまった私は、妙に嬉しくなってしまって。
そこにある真意は、同じ元日本人だから気楽だとか。そういう意味合いかもしれないのに。
どこかで、少しだけ。
そう、ほんの少しだけ。
期待している自分がいたことに、自分自身で驚いてしまった。
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