表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/356

30.偽物聖女にご用心

『とにかく!まずは様子見すること!不用意に近づかない!』

『いや、近づく気はないけどさぁ…』

『ピンク髪は正直どーっでもいいんだよ』

『はぁ!?』


 なんていうひと悶着もありながら。

 結局、王家からの正式な発表があるまでは誰が聖女なのかは伏せておくことになって。

 というか、急いで現状を話し合ったらしい上の方々から、直接その場にお達しがあった。

 何が凄いって、フレゥ殿下が指示を出さなくてもジェラーニが初めから陛下に伝える予定でいた事。

 確かに国の一大事だけど、まさか最初からそういう算段になっていたなんて。


 おかげで秘密裏に我が家にだけ真実が伝えられたせいで、帰宅したら大騒ぎになっていたけれど。


 とはいえルプレア様が怪しいのは間違いないというのは、ジャスミンの言。

 一応本人が言い出したわけじゃないけど、ちゃんと警戒しようというのは全員の共通認識だった。


 ジャスミン曰く。


『偽物聖女にご用心』


 らしい。


 まぁ、ね。

 何があるのかも分からないんだから、用心するに越したことはないけれども。



 だからって、さぁ……?



「ローズ。たまには君との時間を持ちたいと思って、色々用意させてみたんだ。どうかな?」


 いや、どうかな?じゃないんですよ。


 なんで目の前に、明らかにお城から持って来たであろう豪華なお弁当が?

 というか、どうして私はこの人と二人きりで、しかもお昼休みにサロンを一つ貸し切りにして向き合っているの?


「え、っと……」

「他の婚約者候補たちとは、時折昼食を共にしていたんだけれどね?ローズとだけ、あまりに過ごす時間が短すぎると思ったんだ」

「それで…これを?」

「そうだよ。一人だけ時間が少ないなんて、不公平でしょう?」


 いや、むしろ今が一番不公平だと思います。

 だって、これ……私以外の人に、してないでしょ…?


「心配しなくても大丈夫だよ。他の候補者たちにもちゃんと理由は伝えてあるし、陛下からも時間は平等にしなさいとお言葉を頂いているから」


 陛下かー!そっかー!!

 じゃあ仕方ないよねー!

 っていうか、私にはどうしようもないよねー!!



 …………って、なるかああぁぁ!!!!



 何用心しろって決めた翌日から、こんな積極的にルプレア様を避けてるわけ!?

 もしも彼女が本当に魔物に取りつかれてるのなら、狙われるの私じゃない!?

 ちょっと!!変な方向で死亡フラグ立てるのやめてよね!?


 それともあれか!?わざとか!?わざとなのか!?


「昨日は魔物騒ぎがあったし、しばらくは生徒だけで外に出るのは禁止されてしまったからね。解決したら、ガゼボで食べるのもいいかもね」


 え、待って。

 ホントに待って。


 真実を知っていながらそれって、ホントにしらを切りとおすつもり?

 陛下からのお達しだから、黙秘は最上級の命令なんだけどさ。それは分かってるんだけどさ。

 執事と護衛しかいないこの状況でも、隠さなきゃいけないような最重要事項なんだ?


 でも、だとすると、さ?


 どうやって、連絡事項とか伝達するのかな?


「他の候補者たちはね、何が好きとか何が苦手とか、色々と教えてくれたんだよ」

「それは……食べ物の、ですか?」

「食べ物もだけれど、他にも色々と。苦手なものを頑張って克服しようとしていると聞くと、なんだか微笑ましいよね」


 それ、本心ですかね?

 笑顔が王太子様スマイルだから、しょーっじき、信用ならないんですよ。


「でもふと思ったんだ。私はローズの好きなものを、バラ以外で知らないな、と」

「まぁ……そう、ですね…」


 基本的にバラ園でしか会っていなかったから、話題は常にバラの事ばかり。

 食べ物の話とか、たぶんしたことないんじゃないかな?

 少なくとも、私にその覚えはない。


「だからしばらくはローズと時間を取る予定でいるし、色々と教えてくれるかな?」

「え、っと……」

「勿論私の好きなものも、色々と知っていってくれたら嬉しいよ」


 あ、これ。久々に拒否権ないやつだ。


 っていうか。

 たぶんこれ、陛下の意図は別のところにあるってことか。


 その証拠に。


「今日の放課後も、お茶に誘っていいかな?」


 食事が終わってサロンから出る直前、フレゥ殿下はそう言いだしたから。

 これは何か話があるなと、素直に頷いた私に。

 彼は安心したように微笑んで。


『それじゃあ放課後に、また』


 エスコートしようと近づいてきた一瞬の隙をついて、耳元にそう囁いてきたから。



 たぶんこの行動全てが、私を監視するものであり、私を守るためのものでもあるんだろう。

 それがきっと、陛下の真意。


 あとは、まぁ……。

 聖女だから逃がすな、って。

 そういう意味も、あるんだろうなぁ……。



 でも、ですよ?



『囮作戦んんっ!?』



 だからって、何でもしていいってわけじゃあ。無いと思うんだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ