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24.彼の語る真実

『とりあえず、今のところ全員が元日本人ってことでオーケー?』

『オッケーでーす』

『そう、です』


 最初の確認は、ある意味でただの再確認。

 私たちの返答を聞いて小さく頷いただけのところを見ると、きっとそこはさして重要じゃないんだろうな。


『じゃあ、まずは俺の話から。といっても、さっき言った通り妹がゲームをやってたのを横から見てたくらいで、詳しくはあんまり知らないんだよね』

『ちなみに妹さんは誰ルートでプレイをしてたの?』

『基本的には全員、かな。お気に入りはフレゥだって言ってたから、ちょっと複雑だけどね』


 妹のお気に入りのキャラに転生……。

 うん。確かにちょっと複雑な気分になるかも。


『ただ正直な事を言うと、あんまりヒロインは好きじゃなかったなぁ。俺はローズ推しだったから』

『!?』

『あ、分かるー』

『!?!?』


 ちょ…!!なんでそこでヒロインも同意するわけ!?

 いや、私もそうだったけどさ!!


『あのゲーム、ところどころなんか納得いかないというか……。そもそもローズ本人は、何も悪くなくない?』

『そうそう!むしろなんで平民育ちの癖に王妃になれるのこのヒロインってね!』

『この世界に生まれて、実際王族として育ってきた今だから分かるけど…。ゲームとはいえ、あまりにもご都合主義が過ぎるだろ』


 分かる。

 分かるんだけど、ね?


『それを言ってしまったら、ゲームなのに夢がないんじゃ……』

『あれ…?ローズはあの内容肯定派?』

『否定派です。否定派だけど……』


 ゲームや物語の創作の中くらい、少しは夢を見てもいいとは思う。

 限度はあるけどね?


『ご都合主義なら、ローズが生きて幸せになるルートがあってもいいと思う。少なくとも俺は、必ずローズが殺されることが納得いかなかった』

『っ……』


 あのっ……。そういう、真剣な瞳で、ですねっ……。

 いくらゲームの内容のこととはいえ、今は私がそのローズなんですよっ…!!


 だからあんまりこっちを見ないでっ…!!


『口説くのは後にしてもらってもいいですかねぇ?』

『くっ…!?』

『……元日本人なのに、空気が読めないのかねぇ?そこのピンク髪は』

『だーかーらっ!!ピンク髪って言うなぁ!!』


(た……助かった……)


 正直今あの瞳に見られると、なんか、こう……変な感じになっちゃうからっ…。

 今回ばかりはヒロインに助けられた気がする。


『ゼラがピンク髪って呼んでるのは、毎度毎度邪魔されてたからなんだけどな』

『え!?私何してた!?何の邪魔してたの!?』

『自覚がないから、なお質が悪い』

『ちょっ…!!気になるじゃん!!教えてよー!!』

『ゼラが戻ってきたら直接聞けばいい。それよりも今話すべきは、俺が何をしようとしていたか、だ』


 正直、そのジェラーニ・ジプソフィールの件についても気になるところではあるんですけどね?


 とはいえ今、話の腰を折るわけにもいかなそうだから。

 流石にヒロインもそう思ったらしい。口をつぐんで大人しく聞く姿勢になる。


『まぁぶっちゃけて言えば、ゲーム進行の阻止だな。これに関しては、どっかの誰かさんが全部ぶち壊してくれたおかげで何もしなくてよくなってたけど』


 誰かさんって、一人しかいないよね?

 ねぇ、ヒロイン?


『私もゲームは始めたくなかったんで。その辺り、目的は一致してたわけか』

『でも、どうして…?』

『どうして、って……。だってゲームを進めたら、ローズが酷い目に遭うだろ?ローズに死んでほしくないから、そうならない未来を探してたんだ』

『っ…!?』


 え…?じゃあ、もしかして……。


『どうやらローズもゲーム内容を知ってたみたいだし。本当は一番その未来を避けようとしてたんじゃない?』

『…し、てた……』


 はじめから、全員同じ方向へ向かおうとしてたってこと……?


『正直夢の話だと言われた時に、だから昔から俺は避けられてたんだなって。安心したのと同時に、ちょっと悲しくなったよ』

『うっ……。ご、ごめんなさい……』

『仕方ないのは分かるけどね。そりゃあ嫌だよね。自分を殺すかもしれない相手だもんね』


 そう、ですね。そうなんですけど……。

 真実を知った今となっては、申し訳ない気持ちでいっぱいです……。


『まぁでも、そのおかげで色々とゲーム内容とは違ってきてたし。結果オーライかな』


 それは本当にオールライトなんでしょうかね…?


 とはいえ、今だからこそ初めから話しておけばと思えるのであって。

 初めて出会った時に私転生者ですなんて、言えるわけがない。


 だから過去の事はもう仕方がない事だと割り切るしかないと、分かってはいるけれど。


『とりあえず俺の目的は、ローズが生き残る事。それだけだったから』


 真っ直ぐそう言ってくれる人を、今まで避けてきたのはあまりにも心が痛む。


(今度からはもうちょっと、普通に接していこう……)


 だから私がそう決意したとしても、何もおかしくはなかったんだ。



 だって、彼の語る真実は。


 ひたすらにローズ(わたし)を救おうとしてくれていたものだったから。



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