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21.こんなところに魔物が!?

 評価ポイントが2,020ptと、2,000ptを突破しておりました!!

 評価して下さった218名の方、ありがとうございます!!m(>_<*m))ペコペコッ



「何してるのよ、私……」


 お昼休みに、珍しく一人で。

 サロンでヒロインと二人でもなく、本当にただ一人学園内の森かと思うような緑たちの中。

 周りに誰もいないのをいいことに、独り言をつぶやきながら俯いて歩く。


「なんで断らなかったの……なんで候補から外してほしいって言わなかったの……」


 昨日の放課後のやり取りがあまりにも鮮明に思い出せるせいで、昨夜からずっと自問自答を繰り返している。

 そのくらい、自分の行動の意味が分からない。


 あの場で正直に話していれば、何事もなく婚約者候補から外れる事が出来たかもしれないのに。

 魔物化ルートからの死亡フラグを回避できたかもしれないのに。


 いや、実際には魔物化ルートがそもそも現実味がない状況だけれども。


「それでも、不確定要素は全て潰しておくべきなのに……」


 なんなの、ときめいたって。

 いや、少しだけど…!!少しだけだけれども…!!


「少しだからいいってものでもないでしょうに……」


 もはや自分の心の中の声にも自分でツッコミを入れるような状況。

 こんな姿、どう考えたって誰にも見せられない。


「はぁ……」


 思考と言動がどう考えても合致していない今の自分に、一人誰にも見つからないような場所でため息を吐いて。

 今まで感じた事のない、訳の分からない感情をどうにかこうにか受け流す。


 これが何なのかを理解できれば、正しく吐き出すことも出来ただろうけど。

 今の私にはこれが精一杯。


 どうしようもないモヤモヤを抱えながら、とりあえずどこかで一人ゆっくり過ごそうとかなり奥深くまで歩いてきた私は。


「…………え……?」


 目の前を横切って行った黒い影に、寸前まで気づかなかった。


「……いま、の…は……まさか……!?」


 不思議なほど進まないゲームとは裏腹に、季節が過ぎていっている事には気づいていた。

 だってもう桜なんて散り切って、季節は緑たちが眩しい時期に突入していたから。


 でも……。


「なん、で……?なんで……こんなところに魔物が…?」


 そう。

 どうして、こんなところに魔物が!?

 学園内なのに!?

 ちゃんと結界が張られているはずなのに!?


 しかも。


「待って……ちょっと待ってよ…!!」


 今の魔物が向かったであろう方向には、学園が誇る美しい中庭があるはず。

 そしてそこではたくさんの学生たちが、このお昼休みを過ごしているはずなのに。


 そんな中に、魔物が突っ込んでいったら…………


「冗談じゃない…!!」


 起こる惨劇を想像して、私はつい何も考えずに走り出していた。


 普段よりも速く走るなんて、風の魔法で調節すれば簡単だけど。

 問題はどうやって魔物をそちらに向かわせないか、だ。


(囮とか怖すぎて嫌だけど、だからって放っておくわけにもいかないし…!!)


 一瞬だったから何属性なのかは分からないけど、水や風で閉じ込めれば少しは時間が稼げるかもしれない…!

 その間に何とかして先生を呼べれば、犠牲も出さずにすむかもしれないし…!!


(ってゆーか、これって本来はヒロイン専用のイベントじゃなかったの!?)


 後にこの事件は悪役令嬢であるローズが、魔物に憑りつかれたせいで引き起こした事件だったとされているけれど。

 確かこの時に襲われる生徒たちを救ったのが、他でもないヒロインだったはず。


 そしてそのことが、フレゥ王太子殿下の相手に相応しいと認めてもらえる布石になるという。

 友人曰く「これも王道の一つだよね!!」だそうだけれど。


(でもだったら、なんで私が何もしてないのにイベント発生しようとしてるのよ…!!)


 まさかこれから嵌められる?

 そのせいで魔物に憑りつかれているわけでもないのに、魔物化ルートに乗っちゃうとか?


 いや、でも……。


「今日はヒロイン、教室から出ない予定なのよ…!!」


 だって私が、今日はサロンに誘わなかったから。

 だから彼女自身が言ったのだ。今日は教室で食べるから大丈夫ですって。


 つまり。


(発見者の私が止めないと、ヒロインは来てくれない…!!)


 しかも彼女、ゲームを始めてすらいないから。

 フレゥ殿下の攻略ルートになんて、自分から乗ってくるわけがない。


(お願いだから、間に合って…!!!!)


 更に速度を上げて走る私は、どう考えても淑女とは程遠い姿だろうけれど。


 非常事態の今、そんな事を言っている場合でも考えている余裕もなくて。



 ただひたすらに、被害が出ない事だけを祈って。


 魔物の後を追いかけるしかできなかった。



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