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12.私には関係ないです

 総合評価が4,000ptを突破しておりました…!!


 評価して下さった方、ブクマ登録して下さった方。

 本当にありがとうございます!!m(>_<m*))ペコペコッ



 あの後どうなったのかは、正直一切興味がなくて。


 ありがたい事に翌日はお休みだったので、そのまま家に帰っていつも通りゆっくり過ごしたんだけれど。


 ただほんの少し。

 そう、ほんの少しだけ。


 ヒロインが作った媚薬入りクッキーを青王太子が口にしたことで、二人の関係に変化があったりしないかな、なんて。

 期待していたのも、事実。


 たとえ報われなかったとしても、青王太子の視線をヒロインが釘付けにしてくれていれば、それだけで私には十分だから。



 なんて、ね。


 淡い期待を抱いていた時期が、私にもありました。



「ローズ様!!酷いじゃないですか!!」



 そんな風に、朝登校した私の教室の前で待ち伏せしていたヒロインに、声をかけられるまでは。


「あら、ジャスミン。ごきげんよう」

「え、あ……ご、ごきげんよう」


 挨拶も何もすっ飛ばしたことをそこでようやく思い出したらしいヒロインは、まだ慣れないのだと言わんばかりな雰囲気で挨拶を返してきたけれど。

 正直、こんなところで話すような内容ではないと、どうして分からないのか。


「まだ授業の開始まで時間もありますし、少し出ましょうか?」

「え…?」

「私に、何かお話があるのでしょう?ここでは邪魔になってしまいますし、今からサロンの使用許可をもらうよりは外のガゼボに向かう方が早いのではなくて?」

「あ……。そ、そうですね」


 この子、割と直情型だな?


 薄々分かってはいたけれど、こんなところで男爵令嬢がいきなり公爵令嬢に話しかけて。しかも開口一番「酷い」なんて。

 これじゃあ噂にして下さいと言っているようなものなのに。


(確かにこれは、貴族に向いてないのかも……)


 実際彼女は、もっと自由にのびのび暮らせる世界の方がいいのかもしれない。

 それこそ、転生前の日本のような。


 素直で真っ直ぐなところは長所でもあるけれど、貴族社会では短所にもなる。

 何なら命とりになる可能性もあるわけで。

 そういう意味では「貴族になりたくない」と言った彼女は、自分の事をよく分かっているのかもしれない。


 なんて考えながら、それでも私の後ろを素直についてくる様子は周りから見たらどう思われるのか。

 きっとそれすら気にしてないんだろうなぁ、なんて。

 ちょっとだけ頭痛を覚えながらも、ガゼボに置かれているベンチに腰掛けた。


『で?』

『で?じゃないでしょう!?なんでフレゥ殿下にクッキー食べられてるの!!』

『知らないわよ。勝手に食べたのは向こうだし、私はダメだってちゃんと言ったんだから』

『だからってその後私に押し付けることなくない!?』

『だってクッキーに媚薬なんて入れてるから』

『だから尚更でしょうが!!』


 いや、だからこそ逃げるんでしょうが。


 というか、そもそも最初から私には関係ないです。


 クッキーを作ったのはヒロインだし、それを勝手に食べたのは青王太子。

 私はたまたま通りがかっただけだったし、食べちゃダメだって忠告もした。


 正直勝手に待つようにクッキーを押し付けてきたのはヒロインだし、そのせいで青王太子に絡まれたのもクッキーを食べられたのもヒロインのせいだ。

 自分の身勝手な行動を棚に上げている癖に、責められる謂れはない。


 なんてことを、もう少しだけ柔らかく。けれど直球に口にしたら。


『……そう、なんだけど…。それに関しては本当にごめんなさいなんだけど…』


 流石のヒロインも、そこは非を認めざるを得ないわけで。

 せっかく反省してくれているし、ちょっと今のうちに現実も知ってもらった方がいいのかもしれない。


『反省しているのなら、二度とやらない事。というか何事もなく済んでいるからいいものの、下手すれば今頃私も貴女もお城の牢獄の中なんだけど?』

『ちょ…!!怖い事言わないでよ…!!』


 いやいや、割とあり得た話でしょうよ。


 だって相手は王族だよ?王子だよ?未来の国王様だよ?

 そんな人相手に媚薬って……シャレにならないんだよ、本当に。


『で?王太子様に媚薬は効いたの?』

『クッキー一つ程度なら問題なかったみたいだけど……。流石に黙ってるわけにはいかないから、全部話した』


 わぁ…チャレンジャー…。

 というか、命知らず?


『それでよく無事だったわね……』

『むしろいっそぶちまけてやったわ…!!貴族になんて興味ない!むしろ勝手に人の物を食べるなんて!!ってね!』


 ホントに命知らずだな…!!

 型破りっていうか…怖いもの知らずって感じ。


 でもこういうのが、まさしくヒロインなんだろう。

 そして貴族や王族という枠に囚われた攻略対象たちの心を、がっちりと掴んでいく。



 ……はず、だったんだよなぁ…。



 結局時間だからと教室に戻ってすぐ、何か言いたそうに青王太子がこっちを見ていたけれど。

 私が席に着く前に教師が入ってきたので、とりあえずは話しかけられずに済んだ。


 これで本当は媚薬が効いていて、更にはヒロインのぶちまけた本音の言葉に興味を持って。

 そこから真実の愛に目覚めましたー、なんて展開になったらよかったんだけどねぇ……。


 だとすればイベントが進まないのはおかしいので、そうじゃないことは明白。

 なのに今更何を話したいと言うのか。


 婚約者候補から外れてくれって言うのなら、喜んで受け入れるけど。


 正直私の言葉をちゃんと聞いてくれていなかった青王太子に、今更何を言われようと知ったことじゃない。

 媚薬の事なら、それこそ私は無関係なんだから。



 休み前の事を思い出しながら、なぜか少しだけイライラしながら受けた授業は。


 思っていた以上に頭に入っていなくて、放課後先生に質問しに行かなければならなくなるほどだった。



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