9.取り巻きとかどうでもいい。私はバッドエンドを回避したいの
不具合に気を取られている間に、総合PV20万アクセスをとっくに突破しておりました…!!(汗)
いつもお読みいただき、本当にありがとうございますっ!!m(>_<m*))ペコペコッ
それは本当にたまたま。
たまたま、通りがかって。
たまたま、見かけてしまったから。
「どういうつもりなのかしら?」
「あなた、男爵家の庶子なのでしょう?」
「そんな身分でルプレア様を差し置いて、フレゥ殿下と昼食を共にするなんて…!」
あー……これ、あれだ。
乙女ゲームのイベントだ。
ってことは、だ。
「あの……すみません…。本当に、そんなつもりじゃなくて……」
答える声は、明らかにヒロインのもの。
しかもしおらしく聞こえるように言っているけれど、たぶんこれ内心めんどくさいと思ってるヤツ。
「口答えするつもり!?」
そして、何を言っても無駄なヤツ。
「はぁ……」
ついたため息は私のもの。
そもそもこんな厄介ごとに顔を突っ込むなんて、本来ならやりたくないところだけど。
ヒロインが強制イベントに巻き込まれた原因は、私にあるわけだし。
というか、聞こえちゃったんだもん。
放っておけないじゃん?
未だにヒロインしてくれない相手だけど、嫌いなわけじゃないし。
むしろ初めて見つけた同郷の相手だから、ちょっとした仲間意識もあるし。
ってなったら、さぁ…?
「何をしているのかしら?」
助けないわけには、いかないじゃん?
「っ…!?あなた…!!」
「何をしているのかと聞いているのだけれど、答えては下さらないのかしら?」
こうなったら、令嬢モードだ。
しかもこっちは正真正銘の悪役令嬢モード。
「なんだかおかしな言葉が聞こえてきたのだけれど?私の気のせいだったのかしらね?」
目につかないような場所に女生徒一人連れ込んで、大勢で囲んで。
明らかないじめ現場を目撃された上に盗み聞きまでされたとなれば、彼女たちの言い訳なんてそう簡単に出てくるはずがなくて。
というか、一応私は彼女たちにとって一番のライバルなわけだし?
これを王太子殿下に報告なんてされたら、即候補から落とされると思っているだろうし?
内心どころか表面上にまで出てくるほどの焦りように、本当に王妃教育を同じように受けてきた令嬢なのかと疑いたくもなるけど。
見てみなさいよ。
落ち着いているように見えるの、唯一発言していなかったルプレア様くらいなものだから。
「な、なんでもないわ…!!」
「ローズ様も、お付き合いするご友人は選んだ方がよろしくってよ…!?」
「わ、私達やルプレア様の品位まで疑われて落とされては困りますからね…!!」
「あら。それは私に見る目がないと仰っていると思ってよろしいのかしら?」
捨て台詞のつもりだったのだろうけれど、ちょっと睨んで見せればすぐに怯む。
そんな度胸もなくて、よくそんな事口にできるわね、本当に。
けど。
「そのように怖い顔をしなくてもよろしいのではなくて?真偽のほどが分からなかったので、彼女に少しばかり質問をしたかっただけなのだから」
なんて、さらりと言ってのけるルプレア様。
まぁ、ね。私が聞いた発言は、ルプレア様のものではなかったから。
本人がそう言っている以上、そのつもりだったというのが事実になる。
本音はどうだったとしても、ね。
「まぁ、そうでしたの。でしたらもうよろしいかしら?私、彼女に用事がありますの」
「えぇ、構わないわ。私達ももう行きますから。ごきげんよう」
「えぇ、ごきげんよう」
最後まで毅然とした態度で、真っ直ぐ背筋を伸ばして去って行くルプレア様。
それに比べて他の令嬢は、慌てた様子でその後ろをついていくんだから…。
あれでなー…制御できていればなー…態度がもう少し柔らかければなー…。
私から青王太子の一番の婚約者候補に推すんだけどなぁ……。
現実って、本当にうまくいかないよね…。
『あ、あの……。よかった、の…?今の、ゲームのローズの取り巻きでしょ…?』
流石に誰かに聞かれたらマズい内容だと分かっているのか、ヒロインがそう日本語で話しかけてくるけれど。
『取り巻きとかどうでもいい。私はバッドエンドを回避したいの』
私の目標は、ずっとそれ一つ。
死にたくないし、幸せになりたい。
でもまぁ、そのために他者を犠牲にしたいとも思わないけどね。
『……そ、っか…。うん、まぁ、そう……だよねぇ……』
ゲームのローズの最期を知っているヒロインからしても、その気持ちは分からなくはないんだろう。
どこか遠い目をして、しみじみと頷いているのはそういう事なのだろうし。
『でも目をつけられたのは私のせいだから。ごめん』
『え…!?いや、まぁ、否定はしないけど…!!』
『……割と、素直よね。良い性格してる…』
『え、そう?やだなぁ。そんな風に褒められても…』
これを褒められたと捉えるのか、そうか。
図太いヒロインめ。
ま、ヒロインなんて図太くなきゃやっていられないか。
『今度っから、何か言われたら私と約束してるとでも言って適当なところで切り上げていいから』
『え、いいの!?』
『その代わり、ちゃんと私のところに来てよ?そうじゃないと口裏合わせてあげられないんだから』
『やったぁ!!ありがとう!!』
なんて。
なんだか妙にヒロインと仲良くなっている気がしないでもないけれども。
果たしてこれが、吉と出るか凶と出るか。
ゲームが始まっているのかも定かではない現段階では、私には何一つ判断できなかった。




