3.全部ヒロインに押し付ける私の計画は！？

　学園内でのルールは色々とあるけれど、その中の一つにどうあっても覆せないものがある。

　それは、クラス内の席順。

　高位貴族であればあるほど、国の中での重要度が高ければ高いほど、それは顕著に表れる。

　だから私のクラスでは、分かりやすいほどにそれが視覚的に理解できた。

　だって、将来の王が。クラスの中に、いるわけだから。

　で、だ。

　それじゃあ何が起きるかというと。

　簡単。

　単純に、窓際の一番前の席が王太子殿下に固定になる。

　本当にただ、それだけが明確な答え。

　学園の中において、席順と言うのはものすごく重要だったりする。

　前世の学校とかなら、席替えとかいうちょっとワクワクするイベントがあったりするわけだけど。

　残念ながら、ここにそんなものは存在しない。

　あるとすれば、学年が変わった時。その時の家の重要度と本人の重要度や成績で、順番が多少入れ代わったりはする。

　けどそれだけ。

　じゃあ何でそんなことになるのかと言えば。

　廊下からの侵入者がいた際、最も遠い場所が窓際。

　そして最前列が、教師が確実に守れる場所。

　要は、必ず守らなきゃいけない人を分かりやすくしましょうと。そういうことなのだ。

　で。

　じゃあそれ以外はと言えば。

　まず窓際の一列が、総合的な判断の元下された序列最高者たち。

　これに関しては、侵入者から最も遠いからと言うのに付随していて。何かあれば、窓から飛び降りて逃げられるから、と。そういう事。

　とはいえ、だ。果たして本物の子息令嬢達が窓から飛び降りる勇気があるのかと問われれば、正直どうなんだろうと思わずにはいられないけど。

　でもいざとなれば飛び降りろと、そういう事なのだ。

　最悪窓から護衛が入ってくることも出来るからっていう意味合いもあるにはあるけど、そんなもの微々たるもの。

　第一本当に能力があって生き延びなきゃいけない人なら、飛び降りる勇気ぐらい無いとダメだからね。

　私は当然あります。生き延びる事最優先。死にたくない。

　で、だ。

　そういう理由もあって、私は常に窓際に座っているわけだけれども。

「はぁ……」

　今日も今日とて、収穫はなし。

　そもそもどうして私が今更、こんな席順だの窓際だの言い出したのかと言えば。

　フレゥ王太子殿下のルートで、スチルがあったのだ。

　仲良く寄り添って話す王太子様とヒロインの後ろから、その姿を恨めしそうな顔をして教室から見ているローズという構図のスチルが。

(しかも季節はまさに今！！桜舞い散る中での幻想的な二人！！みたいなやつだったよ！？)

　なのに。

　もう既に桜は終わりに近づいていて。

(このままじゃ、本当にゲームが始まらない…！！)

　全部ヒロインに押し付ける私の計画は！？

　生き残った後の幸せな生活は！？

　ねぇ！！どうなるの！？

　当然、このままと言うわけにもいかない。

　けど、出来ることもない。

「はぁ…」

　だからただ、ため息をつくしかなくて。

「どうしたんだい？さっきからため息ばかりついて。具合でも悪いの？」

　何より、これだ。

　私にとって一番の恐怖のフラグが目の前にいて、心配そうにこちらを見てくるから。

「いいえ、なんでもないのです。お気になさらず」

　おちおちため息もついてらんないんだよ！！

　何なのこの状況！！ものすごくストレスなんですけど！！

　そもそも、私がこんな席順になったのだってこの青王太子のせいでしょ！？

　この男、確実に学園側に手をまわしてる。

　じゃなきゃ私が序列二番目なんて、あり得ないんだ。

　一応ね、我が家は役職持ちじゃないから。

　真後ろにいる生徒の方が、父親が役職持ちだったはずで。

　第一その生徒、男子なんですよ。跡取りなんですよ。

　なのに私の方が上だと判断されるとか、もう明らかじゃない…。

　ちなみにこのクラスは、一応全員貴族の中でもかなり重要度の高い家柄の子供たちばかり。

　なので本当は、全員守れた方がいいんだけど……。

(窓際が安全な反面、廊下側は危険だって言われてるしな……。特に出入口付近の生徒なんて、一つ下のクラスだったら序列一番だったのに)

　枠組みが違えば序列も変わる。

　それは仕方のない事なのかもしれないけど……。

(早くヒロインが出てきてくれないと、私この位置から移動できないんだけど…！？)

　むしろ窓際じゃなくてもいいから。

　何ならクラスが一つ落ちてもいいから。

　とにかくこの魔物化ルート死亡フラグの象徴、王太子様から離れられればなんでもいいんだ…！！

　ねぇだからお願い…！！

　ヒロイン出てきてよ…！！