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2.ゲームが始まらない、だと…!?

 さて、当然ながら私は一番上のクラスに、青王太子と一緒にいるわけだけど。


 なぜかその席順は、その青王太子の真後ろ。



 なぜ…!?



 いや、分かってる。分かってるんだ。

 なぜとか、そんなの聞くまでもなく……。


「ローズは私の婚約者最有力候補だからね。当然序列は私の次だよ」


 と。


 いつもの目だけは笑っていない笑顔で、そうにこやかに言い切った元凶がここに。



 このっ…!!学園内最高権力者がーーーー!!!!



 なんて私が心の中で叫んでも、こればっかりはどうにもならない。

 何せこのクラス分け、ただ分けただけでは終わらないからだ。


 学園内は、学びや成績においては全員が平等。それは当然だった。

 誰よりもそれを推進しているのが、この国の王族だから。当然その中には、この青王太子も含まれる。


 我が国は割と実力主義なところもあって、どんなに家柄が良くても実力がなければ上には行けない。

 家を継ぐのは長男でも、長男よりも次男の方が出世する、なんてことはざらにある。

 というか、そうじゃなければヒロインが王妃になんてなれるわけがない。


 そう、つまり。


 ヒロインが王妃になるための土台として、そういう背景があるということ。

 そうじゃなければ、普通に考えて男爵家の令嬢が王妃だの国母だのになれるわけがない。

 第一、周りの貴族たちが許さない。


 だからそういう措置が必要だったと、それだけのこと。

 決して歴史的にどうだとか、そういう深い理由があるわけじゃない。


 まぁでも、個人的にはそういうの、嫌いじゃないから。

 それにそうじゃないと、青王太子をヒロインに押し付けられない。押し付けられなかったら、私が困る。

 だからヒロインには、この一年間しっかりと頑張ってもらわないと。

 来年、このクラスに上がってきてもらうために。



 そう、思って。


 今日までの辛抱だと、その日は家に帰ったのに。



「やぁ、ローズ。おはよう」

「……おはようございます、フレゥ殿下」



 なんで、この青王太子は……。


 未だに私の目の前に、いるんですかね……?



 おかしくない!?ゲーム開始は入学式だよ!?ヒロインは!?

 本来なら今頃、フレゥ殿下はヒロインと仲良くなってるところでしょ!?困ってるヒロインを助けて、攻略対象たちを紹介してるところでしょ!?


 なのに!!なんで!!


 今もまだ私の前にいるの!!!!


「ん…?どうかしたのかな?」

「……いいえ…」


 校内ではあまり王族として特別扱いしないで欲しいと、自己紹介の時に本人が言っていたから。挨拶も「ご機嫌麗しゅう」なんて、止めてくれと直接告げられて。

 だから尚更、距離感が縮まっているように周りには見られているらしい。


 噂がね…!!瞬く間に広がっているんですよ…!!

 王太子殿下はラヴィソン公爵家のご令嬢と特別仲がいいなんていう、不名誉な噂が…!!


 でもそれって明らかにおかしい事で。

 本来なら、見知らぬ男爵令嬢と仲がいい、っていう噂になるはずのところなのに。


 むしろそれが、一切ない。


 ねぇ、なんで…?なんでヒロインの影、一切見えてこないの…?



 まさか……。


 まさかとは、思うけど……。


 もしかして、この青王太子……ヒロインと出会って、ない……?



 そうだとしたら……。


 その予想が、正しかったとすれば……。


 ゲーム、は…?ゲームは、どうなるの…?



 まさか、このまま……。



「ゲームが始まらない、だと…!?」



 呟いた声は、誰にも聞かれることはない。

 だってここは、私の自室の寝室だから。


「いやいやいや…!!だめでしょうそれ!!始まらないとかダメでしょう!!」


 今日一日、周りを。特に青王太子を観察していて、分かったこと。


 あの人、一切、自分から動かない。


 当たり前なんだけどね!?そういう人だからね!!何もしなくても周りに人が寄ってくる人だからね!!

 でもそうじゃなくて…!!


 本来なら、校内をヒロインに案内したりさ。一緒に昼食を食べたりさ。放課後貴族社会について教えてあげたりさ。

 そういう、ね?イベント的なことを、少しずつ重ねていくはずなんだけどね?

 そのための期間のはずなんだけど、ね?


 明らかに、そんなことしてない。


 これマズくない!?どう考えてもマズくない!?

 ゲーム始まってなくない!?ってか、始まってないよね!?始まってる要素が一切ないよね!?


「うそでしょ……。どうして…?」


 だってヒロインは、ちゃんと学園に入学してきた。名前があったんだから、間違いない。


「なのにどうして……ゲームが始まってないの……?どういうことなの……?」


 のぞき見していないはずの私が、どうしてこんなに確信を持ってゲームが開始していないと言い切れるのかと言えば。

 単純明快。

 ゲーム開始すぐに、悪役令嬢(ローズ・ラヴィソン)との対立シーンがあるからだ。


 そこで二人の間に割って入るのが、あのフレゥ殿下で。

 婚約者候補たちが、候補に名前すら上がらなかった令嬢の面倒をわざわざ王太子殿下が見ているからと、文句を言いに来るというイベント。

 これは誰のルートでも、何ならルートに入らなくても、必ず起きる。なぜならライバルや悪役令嬢の顔見せも兼ねているから。

 メタい言い方だけど、本当なんだから仕方がない。


 でも問題は、そこじゃなくて。


 実はその騒動、王太子殿下の行動を目撃していたたくさんの女生徒たちからもたらされた事による、上位貴族としての注意だった。

 そう、その程度の始まりだったんだ。

 だからこれ、ゲームが始まっているのなら必ず起きなきゃいけない。貴族としてどうあるべきかを、下位とはいえ貴族なら守りなさいと、そう諭すためのものだから。


 なのに。


「一切……誰からもそういう目撃情報、聞いてないんだけど…?」


 貴族社会のルールと、上位貴族としての威厳。

 それを守るために必要な事だから、流石に私もそれだけはちゃんと公爵令嬢としてやっておかないとな、と。

 そう、思っていたのに。


「どうしよう……」


 待てど暮らせど、一向に入ってこないヒロインの情報。


 日に日に焦りが出始めていた私だけど、だからってこんなにすぐに動くわけにもいかなくて。



 ここ数日は一人で寝る前に頭を悩ませるという、睡眠にもお肌にも悪い生活を余儀なくされていたのだった。



 ゲームが始まらないからイベントも発生しない=フレゥがローズの前からいなくならない。


 さて、ヒロインはどこにいるのでしょうか?



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― 新着の感想 ―
自分に言いよるハイスペックイケメンを袖にする快感をかきたいのでしょうか 割と好きな作者さんだったんですが、ちょっとよく分からなくなってきたのでこの辺でやめておこうと思います すみません…
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