30.驚愕の事実
『は…?全員破滅、って……どういうことだ?』
『はい…?え、なに?二人とも何も知らずに行動してたの?』
いや、知ってるわけないだろう。そもそもこっちはゲームのプレイヤーですらないんだから、細かいところなんて全く知らないし。
しかもそれを言い出した本人は、なんだかんだとうだうだ言ってるから。
『もったいぶらずに話しておくべきじゃないか?』
『別にもったいぶってるわけじゃなくて、その……すごく意地悪な話だよ?』
今のお前よりもなのかよ。
けどそんなことよりも。
『こっちは国背負ってるんだよ。破滅なんて言葉聞いて、黙っていられるわけないだろ』
全員ってことは、登場人物は当然含まれているだろう。
けど、その他は?
それに王太子だけじゃなくこれからを支えていくはずの人物たちまでいなくなったら、この国はどうなる?
『いや、うん、まぁ……そう、だよねぇ……。何せこの国、滅ぶ可能性あったわけだし、ねぇ…?』
『え……』
『はああぁ!?』
驚いたように小さく隣で呟いたローズの言葉を、ついかき消してしまうけど。
正直本当に、それどころではなくて。
『ってゆーか、さっき自分でも言ってたじゃん。ところどころ納得いかない、あまりにもご都合主義が過ぎるって』
『言った、けど……』
『まさにその通りなんだよ。本来あり得ちゃいけないことがあり得る事が、おかしいってこと』
いや、意味わかんねぇよ。
『まぁぶっちゃけると、この世界のゲームの世界観自体が乙女ゲームに対するアンチテーゼなわけですよ』
『アンチテーゼ……』
『本当の悪役は、プレイヤーキャラクターのヒロイン。便宜上とはいえ悪役令嬢と呼ばれていたローズ・ラヴィソンは、実はこの国の聖女様でした、ってね』
『ヒロインが悪役で……』
『悪役令嬢が聖女……。……聖女!?』
ローズは驚いてるけど、確かにさっきの光といい魔物が消えたことといい、ローズが聖女なのは確実だろう。
ヒロインがそれを肯定したことで、ゲーム的にも間違いがないのは分かっている。
だから、そこには驚かなかったけど。
『ちなみに私は、かの有名なサキュバスの娘ですぅ~。だから私が悪役ってわけ☆』
『…………』
『…………』
ヒロインのいきなりのカミングアウトには、ローズと二人言葉もなく呆然としてしまって。
というか、サキュバスってなんだよ。なんで簡単にそんなもんが国の中に入り込んでんだよ。
っつーか、なんでそんなヤツがヒロインになってるんだよ、あのゲーム。
『……とりあえず、色々とツッコミどころが多すぎて追い付かないんだが…?』
驚愕の事実に一周まわって、もはやため息しか出てこないっていうのに。
『いやいや、ツッコミどころじゃないって。結構意地悪な制作陣だと思うよー?なんたってゲームの達成感を得た人を、どん底に叩き落す設定だからねぇ』
『そこじゃない』
『え?重要じゃない?だってほら、名ばかりヒロインの悪女に騙されて、聖女様を殺しちゃうわけだから。魔物同士手を組んだわけじゃないけど、利害が一致しちゃったんだろうね。怖いねぇ』
『しみじみ言うな。そんな恐ろしい事』
いやほんと、マジで恐ろしすぎるわ。
むしろあのゲームって、そういう結末だったってことか?国を守るべき人物たちが、本当に国を守ってくれる聖女を手にかけてしまうっていう。
なんだそれ。最悪じゃないか。
『まぁ正直、私が何もしなければいいだけの話だし?このままでいっかーとか思ってたんだけどね?』
『楽観的過ぎるだろ』
『ちなみに続編もあって、そっちではフィオーレ王国は滅亡したことになってます☆』
『だから!!楽観的過ぎるんだよ!!』
滅亡ってなんだよ!滅亡って!!
そりゃ国の要人がサキュバスの娘の虜になって、唯一の救いである聖女を排除して、好き勝手してればそうなるわな!!
くっそぉ……乙女ゲーム甘く見てた。怖すぎだろ、ホント。
『でもほら、私はそれを回避したかったし?結局は全員同じ方向に持っていこうとしていたし?これでめでたしめでたしじゃない?』
『めでたいわけあるか、このアホピンク髪』
あぁ、戻ったのか、と。疲れた頭を持ち上げて、向けた視線の先で。
『お前が魔物の血を引いてて、更に学園に普通に通ってて、しかも学園内に魔物が侵入した。これだけあって、無実を証明できるのかよ』
険しい顔をして立っていたゼラは、今まで以上にヒロインを警戒していた。
個人的には何が驚愕かって、プロローグも入れるとこれが100話目だという事です。
そんなに書いたんだなぁ、というのと同時に。そんなに続いてるんだなぁ、と。
区切って続編にしたりしていない分、長くなるのは当然ですが…。流石に同じタイトルで100話到達した掲載作品は、今回が初めてです。
そして同時に、こんなにも長い間お付き合いくださっている方がいらっしゃるのだなぁと。
感慨深いと同時に、とてもありがたく思いました。
本当にいつもありがとうございますm(_ _)m深々。。。




