プロローグ
『悪役令嬢、ローズ・ラヴィソン』
そう言われていた彼女は、果たして本当に悪役だったのか。ネット上でも議論が分かれていたけれど。
少なくとも私は、彼女を悪役だとは思えなかった。
友達から無理やり渡されて、全キャラ攻略までさせられた乙女ゲームに出てきたローズというキャラクターは、簡単に言えば最難関の王太子の婚約者候補だった。
そう、候補。決して彼女は、正式な婚約者ではなかった。
だけど、まぁ……友達の解説によれば、テンプレ通りに小さい頃王妃候補を探すお茶会に出た際に、これまたテンプレ通りに王子様に恋に落ちた少女で。けれど周りを蹴落とすわけでもなく、ただ一途に健気に、王太子に相応しい人間になろうと努力をしてきたらしい。
いやもう、この時点でどこが悪役だよとツッコんだけど。
そこはまぁゲームを進めてみれば分かると言われたので、納得できないながらも渋々進めた先で。
彼女は、魔物になった。
いや、ちょっと端折りすぎか。
正確に言えば、努力を王太子から直接無駄だったと突きつけられ、さらにポッと出のヒロインに好きな人を取られて、今までの人生や生きる意味を失った彼女の心の隙間に魔物が入り込んで、人が変わったように我が儘で傲慢になってしまった。
ちなみにこれすら友達に言わせればテンプレらしいけど……。
いやちょっと待ってくれと。これは流石に納得できないでしょうと言っている間に。
完全に魔物化してしまったローズは、最後には王太子とヒロインに倒されてしまった。
「いやいやいやいや!!これなに!?なにこれこの展開!?後味悪すぎでしょう!?」
「でもほら、こーゆーのがテンプレだしさー」
「なにそれ!?乙女ゲームのテンプレこわっ!!」
だいたい男爵家の、しかも平民として暮らしていた庶子が王妃とか…冗談だよね?
明らかにこの後この国傾くじゃん。何がハッピーエンドだよ。どこもハッピーじゃないよ。
っていうかそもそも、ローズは悪役令嬢じゃなくてただの被害者じゃん!!
そう思った私は、きっと間違っていなかったはずだ。
本日もう一本上げる予定です。
これだけだとプロローグで終わってしまうので、ちゃんとした1話目を後ほどアップします。




