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第28話 爆弾解除!!

《登場人物》


 長宗我部 博貴 警部   (長さん)

 入船  宗次郎 警部補  (ボウラー)

 河瀬 憲仁   巡査部長 (和尚)

 古村 俊    巡査部長 (シルバーマン)

 夏目 真彦   巡査長  (先生)

 田中 悠    巡査長  (アンジェリーナ)

 佐藤 蒼太   巡査長  (ブラッド)


    ペイン  爆弾犯

 先生は悩んでいた。2つの爆弾の構造が、複雑になっている事に。

 片方は、小さな鉄球が起爆のスイッチとなるタイプの物で、商店街で彼が解体した爆弾と同じ構造。もう1つが彼にとって初めて挑む暗号式の爆弾だった。

 暗号式の爆弾は、表示されている暗号を正しい答えを入力していき解除するという物。

 状況から考えて、まずは解体がしやすい鉄球が入った爆弾の解除からスタートさせていく。

「まずはお前からだよ」

 先生は、ドライバーを持ち、角の留め具を外し、なるだけ振動でボールを動かさない様に、カバーを外した。

 その間に、ペインと長による張り詰めた空気の中で、シルバーマンは彼らの様子を伺った。彼らは一向に動く事なく、立ち往生のまま時間だけが過ぎようとしている。

 現在の時間は6時35分。タイムリミットは刻々と過ぎようとしている。依然、長はペインに対して、交渉をしているのが、シルバーマンの目に写った。

 柱に隠れながら小声で、ブラッドに連絡をする。

「ブラッド。頼みがある」

『ああ、さっき無線の内容を聞いてたから分かるよ。施設の照明を消せばいいんだろう?』

「準備をしといてくれないか?」

『分かった。相棒と一緒に準備しておくよ。出来たら返事する』

「了解。警部補、準備しましょう」

「おい! 長の奴、何かしようとしている」

 シルバーマンは、長の方に目をやると、彼は両手を上げてお手上げの状態でペインに姿を示していた。

「何をやっているんだ。長警部は!?」

 ペインは、両手を挙げている長にほくそ笑み、相手の様子を伺った。

「何の真似だ。長さん?」

 長はため息を着き、呆れた様に、グロッグの銃口を長に向けている爆弾ベストを着た男に告げた。

「やめだ! やめ! お前の茶番に付き合うのも飽きたんだよ」

「何?」

 長は笑いながら、ペインに言い放つ。

「言っただろう? 飽きたんだよ。これまでもつまらない事ばかりで呼び出されたが、お前のやっている事は本当につまらないし、もう既に他の奴とかが、似たような事件を起こしているから退屈で退屈で……」

 長の挑発じみた様な態度を上から見ていたボウラーは、頭を抱えながら小声で呟いた。

「馬鹿っ!」

 シルバーマンは異常な状況に入った長の姿を見て、焦った。

「何やってるんだ。長警部! やめてください!」

 案の定、長が行う挑発に、軽くほくそ笑みながら、反応する。

「言ってくれるじゃん。長さん」

 しかし、長は十数分前の態度と違う反応を示した。

「長さんでも、なんでもいい! 飽きたんだよ。お前の茶番に付き合ってられっか。俺は帰る。勝手にしてろよ。じゃあな」

 そんなやりとりをしている間に、アンジェリーナは長達がいる施設の掌握を、その隣でブラッドは施設の照明管理システムの掌握を完了させ、告げた。

『掌握完了! 準備はいつでもいいですよ』

『だとよ。聞いているかい? 皆の衆! こっちはもう完了したよ。あとは合図だけ』

 シルバーマンはブラッドに告げる。

「充分だ。流石! 不死身のコンビっ!」

『へへっだろっ?』

 その間にも、長とペインの間で危険な状態が続いている。ボウラーは彼らの様子を伺いながら照明が落ちる準備をする為に、レジにお金を置き、BB弾のライフルと一緒に暗視用のゴーグルを持って、装着、装填して、特攻に備えた。

 シルバーマンもタイミングを伺うが、人質の子供をどうするかを考えており、迂闊に合図も出せない。

「警部。やめてください! お願いだ! やめてくれ!」

 無線がONになっているせいか、先生の耳にも、シルバーマンの声やブラッド達の会話が聞こえているが、どうやらあまり良い方向に進んでいないと感じた。

 そんな中で爆弾のタイマーは、順調に進み、先生はそれに動ずることなく爆弾を慎重に、解体していく。

「よし、第1段階は解体できたな。これからが大変になってくるはず……」

 第2段階は信管の構造確認をしてからの解体になった。その間もずっと爆弾は止まることなく制限時間のカウントダウンを続けている。無情なデジタルの数字版が宣告していく。

 施設内での長達に、多少、心配を先生はしているが、自分も後にそんな事が考えられなくなっていくのが理解できた。

 金属のボールが動かない様に、慎重にタイマーと信管がつながるコードを切断していく。

 先生の額からは夜でも暑く感じるせいか汗が、左の方から滴り落ちようとしている。

 捜査員達は外にいる一般客を入れない様に、呼びかけや、避難誘導などをしながら心中で先生の爆弾解体を祈っていた。

「慎重に、慎重に……」

 ボールが穴に入らないようにゆっくりと接続のコードを切断し、パーツを取り外していく事で、爆弾の中心、信管とタイマーの部分が見えた。

だが、また以前と同じ展開になる。

信管とタイマーをつなぐ白いコードと黒いコードが並列で並べられているのが分かり、先生はため息をつく。

「2分の1か。ふざけやがって」

 彼は、思い切って、行動に移した、いつまでも切らずじまいではいけないし、切るまでに時間をかける場合ではない。

 爆弾はもう1個あるのだから。

 彼は決断して、ナイフをポケットから取り出して、黒のコードに手をかけた。

 止めれる根拠はない。もちろん保証もない。一発勝負。

「頼む!! 止まってくれ!」

 銀色に光っている刃が黒いゴムカバーで覆われているコードを切り裂いた。

 先生はすぐさまタイマーに目をやると時間は停止し、すぐに表示が消えていく。

「よし! 1つ消えた!」

 先生は手応えを感じ、解体を終わらせて、もう1つの爆弾解除を始めている。今度は、コードを切る事が不可能になっており、現状、暗号を入力して解除しないといけないタイプ。

 爆弾のタイマーが刻々と時間が近づいてくる中で、暗号は非常に厄介だった。

 


《ぬぬふあえゆぬあふぬ》



 表示されている文字に対して先生は、手を止めて、考え始める。周りにいた捜査員も暗号に頭を悩ませた。

「何なんだ。この暗号は!?」

「うーん。どうするべきか……」

 先生は、電子警察手帳のカメラを用いて、暗号を記録し、ブラッド達の元へ送信した。

『うおっ! 先生! この平仮名なんだっ!?』

 パソコンの画面越しに表示されている暗号を見て、ブラッドは、眉間にしわを寄せて、怪訝そうにしている。

 アンジェリーナも隣の席から顔を出してブラッドのパソコンに表示されている平仮名を見つめた。

『暗号……?』

「爆弾解体でこの暗号を解かないと解除できない。協力してくれ。その平仮名を数字に変換しなくてはならない。正しい数字が入力されなかったら、爆弾がロックされ解除ができなくなる」

『てことは、一回でも失敗すれば、アウトってわけですね? これをどう数字に変換しないといけないか……。難しいですね』

 爆弾のタイマーは、1秒ずつ制限時間を告げていく。



《00:25:35》


《00:25:34》


《00:25:33》



 先生の手は完全に止まり、暗号の解読に取り掛かる。手帳を取り出し、平仮名を記す。

「わからない……」

 先生が持つスマートフォンの映像通話経由でパソコンの画面に映し出されている暗号を見つめ、アンジェリーナは、キーボードをタイピングしていく。

『わかりませんねぇ……いや、待って!!』

「ん?」

 イヤホンから聞こえるアンジェリーナの反応に先生は戸惑いを隠せない。

「な、何? どうした?」

 彼女が操作する画面には、先ほどの平仮名の暗号がズラズラと埋め尽くす様に並べられている。

『先生。数字を送りますんで、その数字を今から入力してください!』

「分かったのか!?」

 アンジェリーナは、勝気な表情を画面に向けながら、先生に告げた。

『ええ、おそらくですけど、多分この数列であっているはずです。今、送りましたよ』

 先生はスマートフォンから表示される数列を目に記録させていく。

「この数列か……よし!」

 先生は恐る恐る、右人差し指で、数字を入力していく。

 最初は、「1」。次も「1」。連続する数字というものは不安をいつもよぎらせる。

 数字を打つたびに、先生の身体は震えとおぞましい寒気を感じながら、入力した。

「頼む……あってくれよ」

 そう言い聞かせながら次の数字となる「2」、「3」を細い人差し指が触れる。

 今のところ異常は見当たらない。

 先生の指は、進んで数字の入力を続けていく。

「5」、「8」、「1」、「3」、「2」……最後の1つの数字で、彼の指が止まった。

「ふぅー」

 ため息を付き、爆弾のタイマーを見つめる。



《00:19:45》



《00:19:44》



「これで最後だ!」

 先生の人差し指に数字のキーが押された。


「1」


 先生は目をつぶった。

 数秒間、沈黙が発生したが、それをタイマーの機械音が打ち破る。

「どうだ?」


《00:19:43》



《00:19:42》



《――:――:――》



「止まった?」

 積もり積もった安堵と心労が勢い良く先生の身体に向けて、なだれ込んできた。

 ハッカー組が見ている遠隔カメラ画面で映し出される爆弾のタイマー表示が止まっていることを確認した。

『やった! やりましたね!』

『おっしゃ!! ナイス! アンジェリーナ!!』

『そっちこそっ! 流石です。ブラッド』

 先生の耳には、ハッカーの2人が喜んでいる声が響いている。

「ああ、やった。私はやったぞ! 連絡しなければ!」

 件の爆弾を解除できた事に、先生自身も目で確認し、すぐさま他の部下にも周知させたあとで、スマートフォンで長に連絡する。

「出てくれ! 出てくれ!」

 だが、彼からの反応はない。

「どうしたんだ? まさか警部!?」

 先生の脳裏には不安と嫌な予感しかなかった。


第28話です。 話は続きます!!

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