第24話 居場所特定
《登場人物》
長宗我部 博貴 警部 (長さん)
入船 宗次郎 警部補 (ボウラー)
河瀬 憲仁 巡査部長 (和尚)
古村 俊 巡査部長 (シルバーマン)
夏目 真彦 巡査長 (先生)
田中 悠 巡査長 (アンジェリーナ)
佐藤 蒼太 巡査長 (ブラッド)
ペイン 爆弾魔
― クイーンアイランド 午後5時50分 ―
ペインは和尚から奪ったグロッグ、爆弾、特殊なPC道具が入ったカバンを背負って立ち入り禁止エリアから出ていく。別の立ち入り禁止エリアの入口で自分を追っている数名の捜査員達が走って入っていく姿を確認して、少し安堵しながら次のステップへ上がる為に、動き始める。
まずは、ショッピングエリアの閉鎖だ。クイーンアイランドのショッピングエリアの案内図表の所まで早歩きで向かい、見つめる。
彼はPCがある場所を探していた。
「えっと、ネットカフェ、ネットカフェ。おお、あるじゃん」
ショッピングエリアの2階にある事を見つけ、すぐさま2階へと向かう。
エスカレーターに乗ってゆっくりと捜査員達の動向を確認していくが、今のところ目だった動きは、立ち入り禁止エリアの所ぐらい。
このショッピングモールの警備員も自分の事について全く知らされていないらしく、随分と動きやすく感じていた。
ペインはエスカレーターを降り、早足でネットカフェに向かう。
ネットカフェのカウンターの店員に声をかけた。
「すいません。PCを使いたいんだけど」
「あ、はい。では、ご利用時間をお願いします」
ペインは表を見て、即決する。
「じゃあ、Aコースで」
店員はペインに、サイン記入用紙を出し、ボールペンを手渡した。
「かしこまりました。そちらにお名前を記入ください」
ペインは渡されたボールペンで綺麗に名前を記す。
「これで」
店員は紙を受け取り、引き出しで管理している部屋の鍵を手渡した。
「では、左奥の部屋になります」
彼は軽い笑顔で店員に返す。
「どうも」
鍵を受け取り、ペインは鍵に彫られてある番号の部屋へ向かう。
部屋に入り、ステップに向けての作業を行い始める。
PCを起動し、自分が使い慣れたワイヤレスシリコンキーボードを出し、USBをPCに接続する。
早速、ネットの中には入り、クイーンアイランドの管理システムに侵入する。
キーボードのタイピングがどんどん早まっていく。
「脆弱な壁だね」
ペインは鼻で笑い、そのまま自分のあらゆる能力を駆使して管理システムの壁を破壊していく。
― クイーンアイランド 駐車場 午後6時 ―
長と先生の乗った車両がクイーンアイランドに到着し、駐車場に車を停めた。
助手席のドアを開けて、長は自分が怪我をしている膝に包帯を縛り、止血をしっかりと施した後、インカムを左耳につける。
ホルスターにしまっていたグロッグのマガジンを確認し、留め具をしっかりと締めた。
「先生、先に行ってくれ。奴はもしかしたらPCのある場所にいる可能性がある」
「了解です」
ブラッドからの通信がいきなり長に入った。
『長さん! 大変だ。シルバーマンから連絡があって、和尚がペインにやられた。重傷らしい』
「なんだと!? 和尚は!?」
ブラッドはパソコンのタイピングと共に、伝える。
『分からないんだ。シルバーマンがそばについているらしい。そのうえ、最悪な事に、奴、和尚が携行していたグロッグを奪ったんだ』
「くそっ!」
長は滲み出る悔しさを押し殺すしかなかったが、すぐさま行動を始める。
助手席を降りて、ゆっくりと歩き始める。
「ブラッド! アンジェリーナ! 奴の居場所特定を出来るか?」
『そら来たっ! 任せろ! 和尚の仇をとってやる!』
アンジェリーナも同じ思いだった。
『長警部。絶対に、奴の首を取りましょう! ペインの思いのままにさせない!』
長は、クイーンアイランドのショッピングエリアへと歩いていく。彼には1つ思い当たる考えがあった。
「ブラッド」
『何だい? 長さん』
「クイーンアイランドの管理システムに入り込むことは可能か?」
『えっ?』
「奴は、おそらくここの管理システムを掌握しようとしているはずだ。自分の爆破を円滑にする為に、おそらくもうやっている可能性がある」
タイピングの早さがより早まっていく。
『任せてよ。お安い御用さ。警部』
「ああ、頼む」
交信を終えて、長は、急いで向かう微弱な膝の痛みを押さえながら軽く走ってショッピングフロアの入り口まで向かった。
アンジェリーナとブラッドは長との交信を終えた後で、爆弾魔の居場所を特定する為に作業に入る。
まずは奴に対する居場所の特定を行う。インターネットという特殊な世界でペインの足跡を追いかけていく。電子痕は、必ず残るのでそれを頼りに、相手の場所を探る。
『今回の場所から考えて、奴がクイーンアイランド内にいる事は間違いないから、そこからアクセスされるネット回線の方向を調べていけば、クイーンアイランドでネットを利用している人間が何をやっているかは簡単だ』
ブラッドの隣にいる彼女は、パソコンに表示される情報をうまく扱っていく。
『もうすぐで分かりますよ』
アンジェリーナは、もう一回、インカムへの交信を行い、長に報告する。
『見つけましたよ。ショッピングフロアのネットカフェに奴がいます』
長は反応した。
「何、分かった! すぐ向かう」
長は痛みを押さえながら、走り出し、ショッピングフロアの中に入り、2階へと上がるエスカレーターを使う。
その間に、ブラッドはペインが何をしているかを追跡し、把握した。
「奴め! あそこの管理システムを掌握しようとしているな。こうなったら、前の敗北を返してやらないと!」
ブラッドは掌握しようとしている奴のコンピュータに攻撃をかける。
簡単な事。
パソコンの番号を調べ上げ、そこへのメール爆弾攻撃を行う。
「広告でもいかが? 最近、本でも読んでないんじゃないか?」
しかし、相手の反応はない。
ブラッドは、反応を返してこないペインにやけに不安を感じた。
「おかしいな。やつの反応がない」
アンジェリーナはその隣で、ペインの反応を見ながら掌握を阻止する。
「やった! やりましたよ! 掌握を阻止しました!」
「やったな!」
2人のハッカーはハイタッチして喜んでいるが、ブラッドはあまり相手側の動きについて感覚を感じなかった。
第24話です。 話は続きます!!




