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第17話 爆弾魔のゲーム

《登場人物》


 長宗我部 博貴 警部   (長さん)

 入船  宗次郎 警部補  (ボウラー)

 河瀬 憲仁   巡査部長 (和尚)

 古村 俊    巡査部長 (シルバーマン)

 夏目 真彦   巡査長  (先生)

 田中 悠    巡査長  (アンジェリーナ)

 佐藤 蒼太   巡査長  (ブラッド)


    ペイン  爆弾犯


 ― 同日 大街道 午後4時 ―



 先生は悩んでいた。テレビドラマではよくある展開が訪れたからである。

 彼の目に写るのは、白い線と黒い線が並んでいる。結局、この2つのうち1つを切断すれば、爆弾が止まるというもの。

 本当に嫌な展開。

 

 その間にもデジタルタイマーで表示されている時間は刻々と減り続けている。



《00:02:10》



《00:02:09》



 捜査員は戸惑っている先生に対して訊いた。

「おい、どうしたんだ?」

「2択です。やっぱりこうなるのか。白と黒。この線をどっちか切らないと爆弾は大きな炎を上げることになります」

 先生にそう言われた捜査員が見つめた先の爆弾には白い線と黒い線の2つだけ。

「これを切らないといけないのか……」

 先生は、爆弾を一緒に見つめていた捜査員達に告げる。

「ええ、一応、この線を切るには、危なすぎます。今からでも間に合います。急いで、客や一般の方々を避難させてください」

「ああ、分かった」

 先生に言われた通りに、捜査員達は、急いで一般の人間の避難行動を開始させていく。

 その間に長は、目の前の視線に写っている爆弾が詰まった箱の対処方法を考えようとしている。

 長が確認している配達車の職員は自分が陥っている状況とやらねばならない職務が滞っている事に、正直、困惑していた。

 長は、車の下から出て、立ち上がり、アスファルトにつけていた背中にくっついていた砂利を、両手で払う。

「あの。職務があるんで、もう移動しないといけないんですけど……」

「残念だが、上司さんに『警察の捜査協力で職務が果たせそうにない』と連絡してください。あ、あと、爆弾の事も連絡したほうがいいかもしれませんよ。他の配達車にも仕掛けられている可能性ありますからね」

 『爆弾』といういきなりの言葉に驚きを示しながらも、状況がとんでもない方向に来ている事を理解し、警部の言葉を聞いて急いで上司に電話をし始め、その場から少し離れた。

 長は、スマートフォンを取り出して、爆弾処理班に電話をかけようとするが、その行動ができない。

 その理由は簡単な事で、逆に着信が来ているからである。

 相手は、今、長のストレスの根源であり、人生で初めて、本当に殺してやりたいくらい奴で、この爆弾達を仕掛けてくれた張本人である。

 長は、通話ボタンを押して、耳を傾け、最初の一言を相手にぶつけた。

「お前ってかなりのおしゃべりなんだな……ペイン」

 相手は軽い笑い声を発しながら喋る。

『寂しかった長さん? でも今回は見事だったね。よく見つけたよ2つの爆弾の場所』

 いきなり褒められた事に対して、長の心は、苛立ちと怒りの両挟みとなり、強く締め付けられた。

 色々悟られない様に、なるだけ平静を保った口調で長はペインに返す。

「ああ、そりゃ、どうも。だが、別の奴は時間がない。爆弾を止めてくれないか?」

『ん~~』

 電話越しにいる彼が悩んでいる事は、スピーカー越しから聞こえる声で理解できた。

 しかし、相手は3つも爆破を起こしている人間としてはどうかしている状態。ペインに対してその要求をするのは、とても危険だった。

 しかし、彼の反応は意外。

『いいよ。止めてあげるよ』

「えっ? 冗談はよせよ」

『止めてあげるって。誰だっけ? 今、奮闘している長さんの部下が解除しようとしてる爆弾を、まぁ見ててよ。反応するからさ』

 長とペイン2人の間に沈黙の風が流れる。数秒間2人は、黙ったまま。静かな風が吹く。

 すると、先生の目の前で作動し、刻々とタイマーが作動している爆弾のタイマー表示が停止した。



《00:01:34》




《00:01:33》




《00:01:33》




「あれ!? タイマーが止まった」

 先生はいきなりの展開に少々焦っている。とりあえず彼は持っていたトランシーバーで長にコールをかけた。

「警部! 警部!」

 長はトランシーバーの反応を受けて、急いでトランシーバーを持って、少し顔に近づける。

「おい、爆弾は!?」

 トランシーバーから聞こえる問いかけに先生は、急いで答える

『タイマーが停止しました! 急いで爆弾を解除します』

 長が持っているスマートフォンのスピーカーからは、ペインの声が聞こえた。

『長さ・ん。言ったろ? 俺は約束を守るって。』

 長にとって、ペインが行った一連の行為については、不可解である状態。

 その間にもペインは話を続けようとする。

『さてと、長さんトランシーバーを切ってくれるかい? 1対1で話したいんでね。できない場合は分かっているだろう? そこの郵便職員と共に配達車を吹き飛ばすことだって容易なんだからね……』

 ペインの脅しに、長は辺りを見渡した。車のある交差点の近くには監視カメラがなく、商店街のカメラも丁度、配達車のある位置には死角になっていて見えないはずだった。

 しかし、奴は既に3つの爆破を行なっている為、ヘタをすれば容易に爆破だって考えられる。

 ここは素直に言う事を聞く事にした。

「すまないが、切るぞ」

『あっ! 警……』

 先生の会話を途中で切り、トランシーバーを下のズボンのポケットに戻す。

 ポケットに戻す間、長は、自分の視線であらゆる場所を見て、怪しい姿がないかを確認していく。

『それでいい。さてと、此処でクイズと行こうか』

 ペインの言葉の内容に今の状況から考えて、とんでもない発言、自身が事件を起こしているのに、いつもの様に楽しそうに発言した様子には、長も呆れを通り越していた。

「お前ふざけてるのか?」

『うん。もちろん。でも、考えてよ。これはゲームだ。長さん。君の目の前には、爆弾が備わった車があるんだよ。もしここで、爆破したら君の命や他の市民の命はどうだ? でもそこにいるのが分かるっていう事は、やはり警察官の鏡だね。市民を守る為にか……』

 電話越しにいる爆弾魔の口を縛ってやりたい思い。だが、それを押し殺し、言う事を聞くが、長はそんな男ではない。

 今いる位置が、カメラの若干死角になっている事から、見えない様に、トランシーバーを落とし、先生に向けてコールする。

「分かった」

 おとしたトランシーバーは、起動し、先生の声がする。

「警部、大丈夫ですか!?」

 ペインによるゲームの説明。それと同時の地面に落ちているトランシーバーからは、先生が長に連絡中。

『それでいい。クイズは全部で5問。それを10秒以内に出す。もし、全部答えることができなかった場合は、残念だけどゲームはおしまい。車を爆破だ。どうだ? スリルがあるだろう?』

 朝は軽い愛想笑いをしながら、ペインに返す。

「面白いゲームだな? でもお前はここにいないのが残念だよ?」

『さぁ、どうかな。もしかしたら近くにいるかもよ?』

 長は周りを確認していくが、携帯を使っている一般市民が周りには一杯いる。そこから特定するには難しい。

 奥では、捜査員が静かに一般人に避難を呼びかけている様だ。まだ、ペインは知らないらしい。電話の話している内容からして理解できる。

 先生は遠目に聞こえる長宗我部の声に、よく耳を研ぎ澄ませて聞く。

「もしかして、ペインの奴と交信中か! 警部は」

 長は、なるだけ、爆弾魔との通話を先生に聞こえる様に、トランシーバーに体と電話を近づけて話す。

「はじめようや。下のあれが俺にはおっかねぇからな」

『そうだね。じゃあ、始めようか』

 長は覚悟していた。自分の死は奴が握っており、爆弾を解除する為にも、一般市民を守る為にも、ペインのクイズに挑むしかなかった。



 タイムリミット19:00まで  ―2:51―


第17話です。前回よりだいぶ遅れましたすいません。


今回は、長とペインの話でしたね。次回はどうなっていくのか!?


話は続きます。

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