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第16話 2つの爆弾

《登場人物》


 長宗我部 博貴 警部   (長さん)

 入船  宗次郎 警部補  (ボウラー)

 河瀬 憲仁   巡査部長 (和尚)

 古村 俊    巡査部長 (シルバーマン)

 夏目 真彦   巡査長  (先生)

 田中 悠    巡査長  (アンジェリーナ)

 佐藤 蒼太   巡査長  (ブラッド)


    ペイン  爆弾犯

 


 ― 同日午後4時 大街道  ―



 未だ一向にもう一つの爆弾は見つかっていない。長宗我部、その他、捜査員達が爆弾を捜索している。

 その間にも先生が解除している爆弾も峠を迎えていた。アンジェリーナとの会話からそう時間が経っていない時にまた、長のスマートフォンから振動を感じる。

ポケットからそれを取り出し、キーロックを解除。左人差し指で液晶画面を触り、表示されている映像を確認した。

 通話の画面に表示されている名前は《ブラッド》。

 警部はなにかいい知らせであってほしいと淡い期待を願いながら通話ボタンをおして、自分の左耳に密着する様に近づけた。

『僕さ。ブラッドだ。聞いてくれ! 1件目の爆破と県警で起きたパトカーの爆破の仕組みがわかったよ』

 今、現在、警部が喜べる話題となりそうな事を告げるブラッド。

 長は確かに驚いている。

「本当か!? でも、それは、和尚達が言っていた、電磁ロックによる同時起動の爆弾じゃないのか?」

 長の言葉をブラッドが聞くと、すぐに返答が帰ってきた。

『電磁ロックによる爆破だと、2件目の辻褄が合わなくなるんだ』

「どうして?」

 ブラッドは相変わらずな警部のアナログ人間ぶりを思い出して、ある程度の知識を含めながら返していく。

『どうしてって、電磁ロックはクラウドという車種だけについて特別製だよ。普通の公用車や一般車両には付いていない機能だ』

 ハッカーが告げる信頼性高い発言に、長も納得している。

「ああ、あの電磁ロックは最近できた車技術の物だしな」

『発想は、一般の電磁ロックを流用したものだけど、それでもクラウド特有の物だったんだ』

「そうか。でもこの2つの爆破に特徴づけるものは何だ?」

『簡単さ。GPSによる爆破方法だよ』



  GPSグローバル・ポジショニング・システム


 

 もう何年も以上も前に日本に導入された衛星による位置測定システムである。

「GPS……まさか……」

 ブラッドはガムを噛みながら告げた。

『ああ、特定車両には特殊型GPSが備わっていたんだ。しかもクラウドと同じコードが使われている』

 彼の言葉を聞いて、それに続けた確認の言葉を警部に発する。

「ペインはそれを知ってた」

『ああ、そうなるね。ともかく爆弾については特殊車両に仕掛けてある可能性が……』

「ちょっと待ってくれ。時間をくれ」

 彼による電話越しの言葉に長はこれまでのペインの爆破について考え直す。

 これまでの爆破には車とペインの拠点となるが、ペインの拠点はブービートラップによる物で、車とは違った爆破方法だった。

 爆破された車は、クラウドとパトカーの2台。

 とはいえパトカーについてはここ最近、県警の予算から見て、新車ではない数年前の物である事がわかる。もし仮に、いま解除作業している爆弾が偽物だとすれば、本物は一体?

「赤い箱と奴は言っていたな……」

『ああ』

 長は電話を持ちながら、商店街を歩いていき、その間にある交差点の車両用の交通路を見ながら考えている。

 そこには丁度、ポストの前に郵便集配車が停まっていた。

「赤い箱……赤い箱……赤い箱か」

『どうしたんだよ長さん? さっきから赤い箱って……』

 ずっと長の視線は郵便集配車に向けている。

「赤い箱の本当の意味が分かった気がする。すまん! 1回、切るぞ」

『えっ!? おい。長さん!』

 ブラッドの制止を振り切って、警部はスマートフォンの通話ボタンを押して終了する。

 長は軽く走って郵便車両に近づき、周りを確認する。異常は見られなかった。

 しゃがんで下のエンジンの部分に目を向けようとするが、車体とアスファルトの差のせいで車体のエンジン部分に目を当てれる事ができなかった。

「おい。ちょっと、あんた! 何やってるんだ!?」

 怒声が長の両耳に響く。

 声のする方へ顔を向けると、そこには、男が立っている。職員用の服装で、名札には会社名と名前が記載されていた。



《JP株式会社》



 いわゆる郵便職員だ。

 周りで緊迫している状況が良く分かる。この空気から脱却する為に、刑事のよくある行動を郵便職員に向けて行った。

 それは手帳を見せる事。

 警察手帳を見せた後で、戸惑っている郵便職員に対して長は、落ち着いた口調で状況の説明をしていく。

「失礼。ちょっと捜査の協力をお願いします」

 大抵、こういう特殊な手帳を見せる時、相手は不安と焦燥の2つが脳を揺らす。

 焦りながらも、郵便職員は協力する。

「え、えっ、ええ。分かりました」

 長は完全に焦っている郵便職員に対して、落ち着きを持った口調で、訊いた。

「この車のエンジン部分が見たいんだが、ジャッキあります?」

「ああ、ちょっと待ってください。確か修理用品であったはず」

 郵便職員は急いで集配車のトランクからジャッキを取り出して、急いで車体をあげる準備をする。

 ジャッキによる車体を上げる音が聞こえた。

「これで大丈夫なはずですが……」

「どうも」

 長は車体の上がった部分から体を入れてエンジンが見えるよ様に車体の下へ入る。

 アスファルトに落ちている細やかな砂利と小石が長の背中をつつくのが分かった。長は車体のエンジン部分に視点をゆっくりと当てる。

 暗い空間の中で、不審物がないか慎重に鋭い刑事の視線を当てて捜索した。

 不審物というのは意外と見やすい所にあるようで、長の目は車体に仕掛けられた分かりやすい不審物を見つける。

「ご対面だな」

不審物はティッシュ箱2つ分の大きさ。綺麗にしっかりと固定されており、外す事ができない。

「見つけた」

 幸いタイマーはまだ起動していない事が確認できた。長の腕時計が指している時間は4時07分。

 その間にも先生が爆弾解除にあたっている爆弾は依然として時間が減り続けている先生も解除する為に奮闘している。しかし、爆弾解除の展開と爆弾の構造というのはとても奇妙なものであり、テンプレートなもので。

「最悪だ……」

 先生に突きつけられたのは、特殊なゴムの革で守られた白と黒の導線だった。





 

  タイムリミット19:00まで ―2:53―


第16話 今回はだいぶ進んだ様な気がしますね。次回はどのようになっていくのでしょう?


話は続きます。


いつも読んでいただきありがとうございます。

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